PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White   作:鈴夢

5 / 62
臆病な強面

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

4年前、突然店に現れたガラの悪い男たち。

 

奴らは、何も注文せず

ただただ店内を荒らしていった。

そしてこう言ったんだ。

"この店に美しい黒髪の女と、その娘が出入りしている"

 

知らないか?店主 と、

まだ線の細かった俺は逆らうことも戦うことも出来ず、

2階で生活していた妻のアジャティ、娘のアイをいとも簡単に引きずり下ろし誘拐して行った。

 

追いかけようとしたが、俺の仲間たちに止められた。

"お前が追いかければ、俺たちの家族も危険だ

……我慢だ、諦めろ、運が悪かった"と。

 

今でも、あの時の妻と娘の叫び声が頭から離れない。

夢にも現れる、

あの時何も出来なかった俺を呪うように

毎日のように現れるんだ。

 

 

 

 

 

ここら一帯、ウイグル地区は昔から

少数民族を捕らえるために、複数の収容所が建てられていた。

 

勿論、全て稼働はしておらず、

時代の流れと共に殆どが廃棄されるか、老朽化で自然に壊れていくか、

大体がそのどちらかだった。

 

 

しかし、1番大きい収容所と言われていた場所では

まだその名残があった。

 

そこに女や子供、老人、男

老若男女関係なく無差別に連れていけば何をされているか分からない。

ただ、そこから生きて帰ってきたものは稀、

脱走してきたであろう人間も、見たことはあるがとてもじゃないが悲惨な姿だった。

 

片目はくり抜かれ、男か女なのか分からないほど体はボロボロ。

生殖器さえ残っていない、それでも命からがら、あの場所から逃げたい一心で、数百kmも離れたこの地域まで体を張って逃げてきたその人間は

誰にも助けられないまま、鴉のエサになり、

数日も経てば腐り、蛆虫が分解し、自然へと還っていった。

 

しかし、しっかりと目に焼き付いていたのはあの刻印。

腐敗する前に、その人間の首元に焼印があるのをしっかり見ていた。

 

 

攒の文字に巻き付く鎖を

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

「奴らの組織の名前は攒(サン)

ありったけ人間を集めて、何やら怪しい商売をしてるとか

…もしくはただの頭のネジが外れた異常者、変態の集まり

奇妙な刻印を打ち付けて、たとえ逃げられたとしても

一生その刻印に縛られる

…………それが、舞白が持ってた写真の刻印

運良くその友達は逃げられたんだな」

 

1階のバーカウンターで2人は肩を並べていた。

舞白は悲惨な話しを耳に入れると眉を顰める。

 

 

「……あの写真は奥さんと娘さん……」

 

「そうだ、俺は別人のようだろう?

…もう意味は無いのにひたすら体を鍛え続けた

だからこんな見た目だけど本当は臆病で

お前みたいに屈強な相手に立ち向かう根性さえ持ち合わせてないさ」

 

ガクガクと震えるテソンの手。

 

 

「未だに……アイツらを見ると体が震える

こんなに体を鍛えても、妻と娘を助けたいと思うだけで

体は動かない

…この見た目のおかげでアイツらに連れ去られるようなことはないが

それに安心してる俺が居ることが本当に腹立たしい……」

 

連れ去られたら二度と出られない、

そして奴隷のようにあの焼印を押され

酷い目に遭う、想像するだけで恐ろしかった

 

 

「…その収容所、ここからどれくらいかかる?」

 

「本当に行く気なのか?1人で?」

 

「私はその為にここまで来たの

それにそんなにヤワじゃないし、

…私はその子の妹と母親を探さないといけないの」

 

傍らのリュックから地図とペンを取り出し、

テソンにも見えるようにカウンターに広げる。

 

「……ここから北西方向に約120km

整備された道は少ないし、近づくにつれて奴らの監視も増える」

 

「歩いて行くか、もしくはバイクか何か、

でもこの雪の中、バイクはリスクが高いし……

最悪小回りがきけば逃げられるし、車と違って足も付きにくい

……歩いていけばこの距離なら2日くらいかな……」

 

 

傍から見れば普通の少女。

スラスラと慣れたような発言を耳にするテソンは、

舞白に恐怖すら覚えた。

 

その表情を読み取れば

舞白はトントンと背中を叩く。

 

「大丈夫だって、そんなに心配しなくても

なんとかその組織の中枢を壊して、その収容所自体をぶっ壊せば

捕まってた人たちも解放できる

…絶対、アジャティさんもアイさんも、ここに戻ってくる

信じて、テソン」

 

「マシロ…」

 

「私の国には一宿一飯の恩義って言葉があるの

…しっかりお礼させてね」

 

強面の瞳から涙が伝う。

テソンは次々と涙を流せば舞白へと抱きつき、

ひたすらに泣きじゃくる。

何年も誰にも言えない苦しみを、

やっと解放できた彼の涙は簡単に止まることはなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。