PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White   作:鈴夢

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8章
秘められた愉悦


 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

2118年 3月初旬 東京

 

凍てつく寒さも落ち着き、柔らかな春が訪れようとしていたその時

日本国内では衝撃的な事件が騒がれていた

 

連日報道されているニュース番組

休憩中の霜月は好物のタピオカマンゴージュースを片手に公安局食堂にて傍観していた

 

 

『大手製薬会社のトランスペアレント社を業務停止命令…』

 

『… 有栖川 吉富東京都知事を重要参考人として…』

 

『密入国者…』

 

 

若干の報道規制があったものの何とか黒幕だった人物達を逮捕することに成功

同時に開国に躍進的だった肯定党は再び低迷することに

そして日本国民も徐々に開国について否定的な考えを持つ人達が増えていた

 

テレビ画面にボーッとした目線を向けていると、それを遮るように目の前に、ある人物が現れ向かい合わせに座る

 

 

「なんて顔してるんだ、霜月」

 

コーヒーを片手に現れたのは宜野座だった

連日激務だった一係にもやっと安息が訪れ、久しぶりにゆっくり休憩を取れる状況にもなっていた

 

霜月はタピオカをひと口すすると

はぁー…と深いため息をこぼす

 

「やーっと…一段落…

正直、この前まで死にかけていたのがウソみたいで…」

 

「確かに、あんなに忙しかったのがウソみたいだな」

 

お互い、つい先日前死にかけていた身

他国で凄惨なことがあった事は日本では報道規制が敷かれており、ますますあの時の記憶が薄れていくような感覚に気味悪さを憶えていた

 

「そういえば一宮の息子の一宮健太郎について…

隔離施設への移送が決まったそうだ」

 

あの地下施設で父親の手によって隠されていた子供

矯正施設にてセラピーやカウンセリングが施されたが好転する可能性は極めて低いと判断され、隔離施設へと移送されることに

 

「地下施設に何年も隠されていた潜在犯認定されていた子供、でしたよね?」

 

「あぁそうだ

父親は息子を守りたいが為に何年も地下に隠し続けた

…早くに矯正施設でそれなりの処置をしていればサイコパスが好転する可能性があったかもしれないのに、その可能性をその父親自体が奪ってしまっていた…」

 

「バカね、理解できないわ」

 

一喝する霜月に微かに口角を緩めるも

宜野座はなんとなくその気持ちがわかる気がした

 

「まぁ、確かに哀れだとは思うが

気持ちが分からんでもないさ

…先が見えないまま離れ離れになるくらいならいっその事、傍に隠しておく、その気持ちがな」

 

「………そんな事に共感なんてできるから執行官なんですよ」

 

腕を組み気味悪げなことを言う宜野座に眉を顰ませる霜月

親の歪んだ考えなのか、本当の愛情なのか、それは勿論本人にしか分からない

だが結局、彼らは自分たち自身で首を絞める事を行っていたのだった

 

「それで?どうにか潜在犯認定された人間でもサイコパスが好転するような、色相がクリアに永遠に保てるような薬を開発するために、一宮祥太郎は会社の実権を握り、密かに人体を使って薬を開発してた…」

 

「あの赤い薬は直接脳神経を破壊する恐れがあった強力な薬だ

…実際、あれを飲まされたヤツらは全員廃人化し、まともに精神も保てなくなる」

 

だから、廃棄区画で見つかった密入国者たちは悲惨な運命を辿ることになってしまった

ひとりの人間の歪んだ考え、歪んだ愛情により起こされた事件

そしてそれに利用された外国人達

全てが血に濡れた錆びた鎖で繋がれていたのだった

 

 

「新疆ウイグル自治区については刑事課の人間以外には箝口令が敷かれてる、それ程この国は国外情勢を晒したくないんだろう」

 

「…あんな悲惨な国の事なんて報道したらエリアストレス上昇しまくって矯正施設は即パンクでしょうね?

私達もまた眠れない日々が続く…

もうそんなの御免よ、私は」

 

ふと、外の景色に目を移す霜月

あの国と想像がつかないくらい平和な景色

危険な地帯に、自分と同じ歳の舞白が居たなんて考えると改めて自分の置かれている状況が幸せな事なんだと実感していた

 

 

「宜野座さん」

 

「なんだ?」

 

外の景色から再び宜野座へと視線を向ける

何かうずうずと言いたげな霜月を不思議そうに見つめていた

 

「…実は私、見てたんです

舞白と宜野座さんがあの車両で話しているところ」

 

刹那、勢いよくコーヒーを飲みながら咳き込む宜野座

予想外すぎる発言に動揺している様子だった

その姿に霜月は盛大なため息を吐く

 

 

「な…、霜月……」

 

「別に!盗み聞きしようとした訳じゃないです!

ちょっと用事があって、入ろうと思ったら扉が開いてて…」

 

「…………」

 

宜野座は頭を抱えるように手で顔を隠す

 

執行官としていつも冷静沈着な、キリッとしているような様子からは想像がつかない程、舞白に対して温良だった姿を目にしていた霜月

そして同時に2人は想い合っていた事実に、正直安堵しているのは事実だった

 

 

「舞白と宜野座さんについて話した時

宜野座さんと舞白について話した時

…2人とも同じような表情でしたから

最初から2人はそういう関係だったんだなって分かってましたよ」

 

決していつもの様に罵る様な発言ではなく、穏やかな口調で声色で話す霜月にゆっくりと視線を戻す

霜月は呆れたような、困ったような、喜んでいるような…様々な気持ちが入り組んだような表情を浮かべていた

 

 

「…霜月…」

 

宜野座がその様子をじっと見ると

ハッと我に返ったような表情を浮かべた霜月は勢いよく指を指す

 

 

「と…とにかく!

うつつを抜かさず、成すべきことを成してくださいね!」

 

「当たり前だ…

…何故、霜月がそんなに恥ずかしそうな顔をしているのかがよく分からないが…」

 

2人のあの光景が脳裏から離れず、寧ろ再び鮮明に頭に浮かぶと照れ隠しするように声を上げる

 

 

「宜野座さんもあんな顔するんですね〜?それにギザな事も口にして…」

 

「おい!それは言うな!絶対!」

 

「あの口煩い宜野座さんが…」

 

やけに席が騒がしいと周りの人の視線が一気に2人に注がれると同じく休憩で訪れた人物にその様子を止められる

 

 

 

「ちょっと!2人とも、何騒いでるんですか!?」

 

 

「「常守!」」

「「先輩!」」

 

 

常守に一喝されるも

仲良さげな2人の雰囲気を微かに喜んでいる常守だった

 

 

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