PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
・・・・・・・・・
翌日 朝早くから分析室に姿を現したのは
常守朱。
ソファで仮眠をとる唐之杜に、
昨夜からぶっ通しで薬の成分を調査している雛河。
「雛河君、もしかしてずっと調べてたの?」
「お、おはようございます!……お姉ちゃん……」
雛河は疲れた様子は全く無く、寧ろ何かを見つけたのか
眼を炯々とさせていた。
「…大量の薬物、
全部調べて、ある接点を見つけた……」
目の前の画面に、薬の成分やら様々なデータが映し出される。
そしてその中に、常守も気になる単語を見つけた。
「トランスペアレント製薬会社…
もしかしてこの薬剤の大元が?」
「この赤い薬品だけは出元が不明だけど…
…他の薬品は全部……トランスペアレント製薬会社のもので間違いない」
トランスペアレント製薬会社
国内の約70%の薬品をこの会社が製薬。
風邪薬から、手術で使用する麻酔薬、メンタルケアのサプリメントをはじめ、ありとあらゆる薬品を日本国内に流通させ、誰しもが知っている大企業だった。
「同じ薬品はもちろん他の製薬会社も取り扱ってるけど
……細かく中身の成分、分量に型を見る限り
間違いないはず……」
「こんなにも大量の、しかもPTP包装もされず裸のまま…
明らかに工場からそのまま出されたような状態
…調べる価値ありそうね」
普通、薬品は錠剤であれば1つずつプラスチック包装をされているもの、しかし、見つけたものは全て裸の状態で袋に入れられていた。
明らかに不自然すぎる。
「雛河君ありがとう
これで一歩前に進めたわ」
「こ、これくらい……大したこと、ない…」
一晩で大量の薬物の分析、そして出元の会社まで調べあげた雛河
相変わらずの並外れた能力に頭が上がらない。
「この製薬会社に、捜査協力依頼をしないとね
…雛河君、もちろん着いてきてくれるわよね?」
「も、もちろん!」
「その為にも今から暫く仮眠をとって休んでおいて
その間に私もできることはするつもりよ」
「うん…仮眠…する…」
常守は雛河に笑いかけると分析室を後にする。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして先程のデータを改めて見漁り、
他にも怪しい点がないかチェックしていく。
((国内最大手の薬品会社が
あんなに大量の薬物を誰かに横流しするとは思えない
…リスクもあるし、そもそもそんな事をする必要はないはず))
執務室へ戻ると、自分のデスクへ座り
カタカタとキーボードを叩き、ありとあらゆる情報を確認していく。
今まで、様々な薬品を作り出し世に貢献してきた。
黒い情報は見当たらず、直感で常守は白だと考える。
じーっと、目の前の画面と睨めっこする常守を
部屋に入ってきた人物が遮断するように声をかける。
「早いな常守」
「うわっ、びっくりした…おはようございます、宜野座さん」
「なんだその反応は…俺は化物か?」
「すみません、ちょっと集中しすぎて…」
宜野座は常守から離れると、自分のデスクへと向かい、
昨日の関係資料を画面に映し出す。
「さっき、薬品データが雛河から送られてきた
まさかあの薬品全部がトランスペアレント製薬会社の物だとは…」
「…そうなんですけど、特に怪しそうな情報は特に無くて
むしろ、良すぎる情報ばかり」
「だからこそ、俺は怪しいと見るが…」
宜野座はとある人物のデータを常守に送信する。
常守はそのIDデータの経歴面に載っている社名に目を引かれると、知らなかった情報に驚きを隠せなかった。
「現東京都知事の有栖川 吉富(アリスガワ ヨシトミ)
肯定党を今のように大きく成長させたのもその男だ
…そして元トランスペアレント社の執行役員」
「有栖川都知事と言えば移民肯定派のリベラル…でしたよね
まさか、製薬会社役員だったなんて
私の勉強不足ですね」
演説でも堂々と発言をし、威厳のある風格に
支持率はかなり高い人物。
しかし、ここ最近は移民についての論争で賛否も多く
怪しい噂も絶えなかった。
「そういえば、思い出しました!
すごく前ですけど…
トランスペアレント社が有栖川に政治献金を流したとか…」
「逆に、有栖川がトランスペアレント社に金を渡した、
結局ただの噂でそこまで大事にはなっていなかったが
俺は何かあると考えてる」
移民、元役員、献金、
そして大量に見つかった薬物。
「もし今回の事件に関連がなかったとしても
なかなか調べる価値がありそうじゃないか?常守」
どこかワクワクとしている様子の宜野座に
常守は半分、呆れたように笑みを零す。
「刑事のカン、ですね
宜野座さん」
2人は目を合わせニッと笑うと
少しずつ前進していく様に胸を撫で下ろす。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・