PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
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テソンから過去の話を聞いたその日の夜、
舞白の姿は、営業中の酒場のカウンターにあった。
いつもの様に客で溢れる酒場。
テソンもいつも通り、客たちに料理や酒を作り
変わらない日常を送っていた。
舞白は馬乳酒を片手に、今後の経路を固めるために
地図に印を付けていく。
「出発は明け方…、運良く吹雪いてもないし
順調に行けば3日でたどり着くハズ…」
ブツブツと独り言を漏らしていると、
酔っ払ったひとりの男が舞白の隣に酒を持って現れる。
歳は30代後半程だろうか?
周りと比べやけに若く見える男だった。
「昨晩のあの殴る蹴る…圧巻だったぜお嬢さん?
俺の名前はタッカ、一杯奢らせてくれよ」
「そんなそんな…あのままだと私が殺されそうだったので
…いいんですか?じゃあ頂きます!」
ノリの良い舞白に笑みを零すタッカ。
男はカウンターに広げられている地図に目を移し、
行き先があの危険な場所だと分かると舞白へと目線を移す。
「もしかして、お嬢さん
攒の拠点に行くつもりかい」
赤いペンでグルグルと囲まれた場所。
そこは攒が支配している地域でもあり、巨大収容所がある場所だった。
「はい、そうですよ?」
「やめとけやめとけ…さすがに強いお嬢さん1人でも
あそこに入ったら最後、二度と出てこれねぇぞ?」
「大丈夫です、入ったら今度は中からこじ開ける予定ですから
…それに、行かないといけない理由もあるので」
にこやかに微笑む舞白に、どこか心奪われそうになり
目線を外しグラスの酒を飲み干すタッカ。
昨晩は混乱もあったため、なかなか容姿を見ていなかったが
改めて女性だと分かると何故か恥ずかしくなる。
「…お嬢さん、日本人…だよな?
流暢にこの国の言葉を話すもんだから…
それにその白い風貌、珍しい」
「日本人です、
元々は黒髪だったんですけど
急に髪の毛が真っ白になっちゃって
多分どこかしら患ってるからだと思うんですけどね?」
「気をつけろよー、奴らはあんたみたいな女は大好物だ
目立つし、中は汚ねぇからやたら白さが映える…」
「……やけに詳しいんですね、タッカさん」
急に冷めたような声質になる舞白に
ビクッと肩を震わせる男
「わざわざ近づいてくるなんて、
もしかして組織のお仲間さんだったり?」
「ちっ…違う違う!
………昔…ちょっとだけ…関わったことがあっただけだ…
もしお嬢さんの力になれたら、なんて…」
酔っ払いすぎていたのか、何なのかは不明だが
攒の事をよく知っていたその男に様々な情報を流させた
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5年ほど前、
タッカは金欲しさに攒の傭兵として拠点に身を置いていた。
劣悪な環境、非人道的な組織の活動に
次第に後ろめたさを感じ、最終的になんとか脱走したという。
しかし、その時
気になることがあった。
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「アイツら、変な薬を配ってた
飲んだら楽になるとか、…それが気味が悪いほど真っ赤な薬で」
カウンターに両肘を付き手に顎を載せる。
必死に思い出すように、ギュッと瞼を閉じる。
「…俺も金と一緒にその薬を貰ってたんだが
気味が悪くてよ、飲まずに廃棄を繰り返した
……俺の仕事は牢に入れられてる女、子供の監視
そいつらには栄養剤だと言って飲ませてた」
「………それで?」
「数日経つと様子がおかしくなる
饒舌だった女が2日3日で人が変わったように静かになったり、
急に暴れ出したり…」
「そういった薬を作れる環境がよくあるわね
劣悪、な環境なんでしょう?
建物も古くなってるって聞いてるし…」
タッカはギュッと手に力を入れ
横の舞白を見据える。
「俺は日本語は分からない
…でも、その薬を一度だけ補給しに行ったことがあるんだ
……俺の記憶が間違っていなければ
その薬が大量に入っていた箱に日本語が書かれていたんだ」
「日本製の薬って事…?
でも日本はどこの国とも外交を閉ざしていたはず
最近は緩和されてるみたいだけど…5年前って…」
訳の分からない内容の話しに舞白はタッカに対し疑いもした。
しかし、彼の様子を見る限り嘘をついているとは思えなかった。
そしてこの情報を何故自分に教えたのか、不思議でたまらなかった、
「…タッカさん、あなたももしかして
あの中に家族が…?」
「……あぁ
…しかも、俺が金だけのために傭兵としてあの中で働き始めた時
生き別れた妹が居ると知ったんだ
名前はダリナザ、俺より7つ下だ」
過去の紛争で生き別れた妹
彼が牢の監視をしている時に
やけに自分を見てくる少女がいた
当時、まだ20歳だったらしい
「驚いたさ、すっかり美しい"女性"になってた
……でも、俺は助けることもできないまま
妹は姿を消した、跡形もなく
死体もどこからも見つからず
生きているのか死んでいるのかも分からない
……そんな状況なのに、俺は逃げ出してきた最低な兄貴だ」
グビっと酒を飲み干せば
酒瓶もグラスも空に
「気をつけろ、お嬢さん
…あの場所に足を踏み入れれば地獄しか無い」
「もちろん承知の上
苦しんでる人が沢山いるのに、放っておけるわけが無い」
同じく舞白も馬乳酒を飲み干せば
カウンターの地図に目を移す
「情報をありがとう、タッカさん」
攒により人生を狂わされた人間たちは
思いのほか多すぎる。
一体どのような組織で何が目的なのか、
ハッキリとはまだ不明。
そして、日本から薬品が流れているかもしれない、という話しに
余計に放り出せるような話ではなくなってきていた。
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