鬼と呼ばれましたが冒険者になれば英雄になれますか?   作:もぐらたたきアルファ

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第三階層・暗黒荒野(2)

 

 

「成果」

 

 機械の様な短く抑揚の無い言葉とともに魔石とカードを持ってきたのは先程苦戦した謎のアサシン改めローパーである。

 

 このローパーは凄まじく有能だった。モンスターの気配を先に察知して気づかれることなく瞬殺という武蔵がやられた必勝パターンをひたすら繰り返すことで、このフィールドでの戦闘を1体で請け負っている。

 この暗黒フィールドがエンカウント率が低く、全て単独だったからではあるが十分すぎる戦力だった。

 

 何より確実に索敵してくれることが、未だ暗闇の中の攻略では凄まじい安心感を与えてくれた。もう2度と手放せない気がする。

 いまいちピンとこなかったモスキートと違って自分との相性も良い気もする。

 

「朱乃。そろそろ階段でそうか?」

 

「今までの階層と同じだとありそうだけど。まだまだ、地図が完成していないから分からないわ。」

 

 あの戦いというよりこれまでの探索により、朱乃は新たなスキルを習得していた。その名は「マッピング」である。意識すると頭の中にこれまで探索した地図が浮かび上がるという便利な能力である。作られた地図を加工したり、印をつけることも出来るという。

 そもそも朱乃の優秀な頭脳でこれまでの道は全て覚えていたのだが、この暗闇で迷う訳にいかない。とより徹底していたらスキルに昇華したらしい。

 このスキルもまた先が見えなかった攻略の負担をかなり軽くしてくれた。地図が完成してくればあとどれだけかかるか予想出来るからだ。

 

 

「敵多数、明かりに集まる」

 

「何?どのへんだ。」

 

 その後しばらくした時、先行偵察していたアサシンがよく分からない知らせを運んできた。こいつは知能はそこそこありそうなんだが短縮し過ぎて言っていることがよく分からない時がある。

 

「避けましょう。旦那さま」

 

「明かりっていうのが気になる。一度見てみよう」

 

 

 それはこの階層では初めての丘を転ばないように慎重に超えた先にあった。

 淡くではあるがこの暗闇の中では非常に目立つ光る果物がなる木が丘の上からはっきり見えたのだ。

 だが、その幻想的な光景に魅入られている暇はなかった。木の周りを十数体のモンスターが囲っているのが光のおかげで見えた。

 

「あの果物欲しいけどあの数は無理だな」

 

「戦わないなら一つ手はあるわ。それに……木の向こうに階段があるわ」

 

 気づかれない様に小声で言って引き返そうとした時に朱乃にそう言われて大吾も気づく。不思議な木のさらに先にこの階層の階段が確かにある。

 

 

「じゃあ、急いで収穫して逃げ込むか」

 

 

 

 

「馬鹿野郎ーーー!!!」

 

 丘の上から思いっきり大声を出す!その途端木の周りをうろついていたモンスターが一斉にこちらを見て駆け出してくる。そのモスキート以上の数に怯みそうになるのを抑えて全員が丘を登り出すのを待つ。

 

(まだ。まだ。ここだっ!!)

 

 大吾と朱乃はこれまでの探索で集めた魔石を全てばら撒く。高所からなので坂道全体に上手いこと散らすことが出来た。

 その途端勢いよく駆け寄ってきたモンスター達は、目前の大吾たちを無視してばら撒かれた魔石に食らいつきだす。坂道でそんなことをするので何体か転げ落ちる者もいる。作戦が想像通りうまくいき大吾は緊張で止めていた息を吐き出す。上手くいかなければひたすらモンスターを叩き落とすしかなく。まず死んでいただろう。

 

 これはモンスター達(朱乃達などのカードを含めて)にとって、魔石は食べることで戦闘力を引き上げたり、スキルの使用時間を伸ばすなど効果がある万能アイテムであり、とても美味しいご馳走様でもあるので目の前にあれば必ず食いついてしまう(朱乃談)という特性を利用した作戦である。

 その成果を活かす為、魔石に夢中なモンスターの群れのど真ん中を全速力で駆け降り、謎の木に近づいていく。

 

「任務完了」

 

 そこには事前にモンスターに気づかれるギリギリ近くまで潜んでいたローパーが謎の果物を5.6個触手で絡めて持っていた。モンスター走り出して大吾達がやってくるまでのわずかな間に木登りと採取を終わらせていたのである。恐ろしい手際である。

 

「これは……桃?いや!後だっ!」

 

 いつ魔石から大吾達にヘイトが戻りかねないモンスター達がまだ後ろにいる為。採取したせいか光らなくなった桃?をリュックに放り込み階段に向けて走り出した。

 

 

 

「今度は冬か。本当になんでもありだな」

 

 第四階層は雪がちらほら降る冬世界だった。雪化粧をした森林が朝日を浴びてキラキラと輝いている。

 

 大吾は過酷な暗黒荒野を超えた先にあった絶景に達成感を感じて……いる暇がなかった。

 あまりの寒さにぶるぶる震えていたからだ。今までの探索でかいた汗が余計に熱を奪っていく。だが、寒さ対策をする前にやることがある。

 

「ローパーいったんカードに戻れ」

 

「御意」

 

 暗黒荒野のMVPであるローパーを戻した大吾は、灰色になった武蔵のカードを取り出して他のゴブリンのカードを重ねる。階層を超えてから復活しようと思っていたのだ。

 

「オヤカタ、スマナイ」

 

「旦那様に感謝なさい。武蔵」

 

 無事復活してほっとする。甦ると聞いてはいたがやはり不安だったのだ。武蔵には少々厳しい朱乃も口調の割に笑っている。

 

「死んだことは気にするな。あれはローパーが凄すぎた。」

 

「ツギハカツ!モットツヨクナル!」

 

【種族】ゴブリン【名前】武蔵

 

【戦闘力】30

【先天技能】

・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正

 

【後天技能】

・突撃:助走つけて行う攻撃の際戦闘力を引き上げる。ただし、一度でも止まったり曲がると効果を失う。効果が切れて10秒間のリキャストタイムが発生する

・従順:マスターの命令に基本的に逆らわない。命令された行動に対する弱いプラス補正

・(new)死なば諸共

 

「物騒なスキルだな。相打ち系?」

 

「ワカラナイ」

 

「まあ!元気出せよ。ほら!さっきの階層で手に入れたやつ食え。復活祝いだ!」

 

 しょんぼりした武蔵にあわてて先程手に入れた桃を渡す。大吾が今まで見たどんな桃より大きくて美味そうな桃である。落ち込んでいた武蔵も大喜びで受け取り皮ごとかぶりつく。

 

「ウマッ!アマイッ!!」

 

 目をかっぴらいてがつがつ食う武蔵を見ると自分も食べたくなり、新たな桃を取り出してかぶりつく。とたんに果汁が溢れるほど口内に広がり、凄まじい甘味に頭がくらくらしてくる。さらに、体の疲労が抜けていくだけでなく身体の芯が熱くなり、寒さも感じなくなる。

 夢中になるのよく分かる代物だった。

 

「わ、私も欲しいわっ。」

 

 朱乃もあまりに美味そうに食べるのを見て欲しがりだす。もちろん、渡すつもりで取り出そうとした時だった。

 

「ヴッ!!」

 

 急に武蔵がうめき声をあげて胸を押さえて苦しみだす。何事か心配した時

 

ぶしゃっ

 

 武蔵が破裂した。間近で返り血を浴びた大吾と朱乃は

 

「はっ?!」

 

 困惑するしかなかった。




二次創作独自設定
・資源型ダンジョン
 ダンジョンの中には豊富な資源が採掘出来ることがあり、物によっては無限に採掘出来ることから持ち主に巨万の富を与える。ほとんどが国に管理されているがごく一部は民間に管理が委託されることもある。

・大神実(おおかむづみ)
 黄泉で醜くなった妻(イザナミ)から逃げ出した夫(イザナギ)は、妻からの追っ手である八雷神やヨモツシコメを桃を投げて追い払ったという逸話に登場する対魔の桃のこと。
 ちなみに、この功績により桃はイザナギから大神実尊(おおかむづみのみこと)の神名を与えられ神になっている。カードとしてはCランクカードで桃を投げて戦う桃という有用な面白モンスターである。
 対魔の効果は、
ダンジョンから宝箱などのドロップ>カードのスキルで出した桃>ダンジョンで生えている桃
という関係がある。
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