鬼と呼ばれましたが冒険者になれば英雄になれますか? 作:もぐらたたきアルファ
「どうしたの!その怪我!」
ショートカットにした艶やかな髪だが、どこかどんよりしたオーラを出している美人が高い声で叫ぶ。大吾の母『鬼導院 静香』である。
仕事に行く前に午後4時頃の早めの夕食を食べている時に、愛する息子の怪我に気付いてしまったのである。出血は薬草の効果で収まっているがかさぶたになっているのでよく見れば分かるのだ。
「あー。自転車に乗っていたら転んだんだよ。」
そこで、用意しておいた嘘を母に伝えた。
そう。黒孔いや迷宮について伝えるのはやめたのだ。ただでさえ探索断念は苦渋の決断だったのに、朱乃の啖呵を聞いたらとても我慢は出来なかった。
「大丈夫なんでしょうね。まったく。気をつけなさいよ。」
しばらく傷の様子を見て問題無いと判断できたのか早めに追求が終わりホッとする。
母親はダンジョンについて当然知っているが、いきなり家に出現するなんて思わない。ましてや、息子がカード無しで突撃して怪我するなんて論外過ぎて考えもしないのだ。静香はダンジョンのことなど今の時代当たり前すぎて話などしなくても知っていると思いこんでいた。
「それとなんだけど、転んだ時に靴も破けたから新しいのを買いたいんだけど」
「仕方ないわね。傷が治ったらこれで買ってきなさい。」
迷宮攻略するために地味に、いや、むしろ必須な靴が手に入りそうで安心する。朱乃は木の皮でサンダルを作れる。と言っていたが、流石に勘弁して欲しかったのでありがたい。そう安心して机に置かれたお札を受け取ろうとした時、金額を見てぎょっとした!
「5万円!ちょっと多過ぎない?!」
「最近、何度も指名してくれる人。いや、し、仕事が上手くいっていて今ちょうど余裕があるのよ。大吾の事放ったらかしにしているの悪いと思っているけど、仕事はまだ変えられないから。そのお詫びにこのお金で好きな物を買ってきて良いから」
「ありがとう!母さん!大事に使うよ!」
探索の事を考えると必要な物はいくらあっても足りない状態なので、嬉しい誤算にテンションがあがる
「まあ、大吾ならおかしな事に使わないでしょ。旅行にでもいってきなさい」
大吾の笑顔がピシリと固まる。かなりおかしい事に使う自覚はあるのだ。信頼に胸が痛い。
「ははっ。当然だよ。」なんとか、そう言うしかなかった。
次の日、主人公の姿は近所にあるホームセンターにあった。アウトドアや園芸、スポーツ商品などが売ってある大きな店舗だ。
「で、デカイな」
金欠で買い物なんて、母の付き添い程度の経験しか無い主人公にとって、見上げるような高い入り口がある店舗に入り、大金(貧乏小学生にとっては)を使うというのはかなりドキドキするものだった。むしろ、迷宮の方が気軽だった。
だが、いつまでもびびってはいられない。意を決して突入していった。
「……靴がなんであんな高いんだ。」
スポーツ用品コーナーで登山靴の半額キャンペーンをやっているのを見て飛びついたのは良いが、半額になってなお8千円なのに仰天した。元の価格は1万6千円である。主人公の金銭感覚からすると信じられない金額である。よく見ればそれ以上の3万、4万の靴も並んでいる。
仕方が無いので顔を青染めながらキャンペーン品を、試し履きしてから買い物籠にいれた。ゴブリンよりも険しい戦いだった。
「ふぅー。あと朱乃に頼まれたのは薬草を加工するための鍋とすり潰す為の道具、そして薬をいれる入れ物。そして包丁と頑丈な紐、か。入れ物はペットボトルじゃあだめだろうか?」
もっと詳しく聞いておくべきだったと考えながら、それらがありそうなキャンプ売り場に着いた時、ある文言が目に入り動きが止まった。
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