デジモンアドベンチャー エクストリーム~6色の新たなる選ばれし者達の冒険~ 作:瑞田高光
「うわぁ……辺り真っ暗ぁ…………」
香流はトレイルモンの座席に座って、窓の外を見ていると、トンネルを抜けたかと思うと辺りはあっという間に漆黒の闇となっていた…………すると
「うひゃっ!?」
突如として香流の体が浮いたかと思うと、車両の後ろにゴロゴロと転げ落ちてしまった。
「いたたたぁ……すっかり忘れてたぁ…………けど、コレがあるって事はやっぱりデジタルワールドなんだぁ!」
少し涙目気味になりながら打ち付けた腰を擦っていたが、次第に笑みを浮かべた。
「到着!」
その後、何事も無くトレイルモンは到着し、ドアが開くと、香流はターミナルへと降り立った。すると、扉がしまり、トレイルモンは何処かへと消えてしまった。
「それにしても……ホント、真っ暗…………」
香流が改めて辺りを見渡すと、辺りには光源と思われるものが殆ど見当たらず、遠くでボンヤリと一つだけ見えるだけだ。
「これじゃ、足元が心許ないなぁ…………何かライトとか無いかなぁ…………?!」
香流が辺りを見渡していると、後ろから灯りがこちらに照らされているのが分かり振り返ると、何やら明かりのような物が1つだけ少し遠い場所に点き、動いているのが見えた。それに香流は思わずビクッとしてしまった。
「誰か……いるの…………?」
香流は相手の顔が見えないために少しビクビクしながらも声を掛けた……すると…………
「あれ……僕以外に来ている子ども…………なのかな?」
「!!??」
香流はその声を聞いて驚き、思わず声をあげそうになった。それが、悪いデジモン等では無かった上に、その声の主が…………
「(この声……輝一君だあっ!)」
香流自身が最も愛してやまない木村輝一だったからだ……!
(今から数分前)
「ここが……僕が助けるべきデジタルワールド…………?」
香流が到着する数分ほど前……輝一はこのターミナルに一足先にやって来ていた。
「……かなり外が真っ暗だな…………トレイルモン、懐中電灯とかは無いか?」
『それなら座席の下に備えてあるよ~』
「そうか、ありがとう」
トレイルモンから出る前に輝一はトレイルモンに懐中電灯の場所を訊ね、トレイルモンに言われた通りの場所にあった懐中電灯を手に取りトレイルモンの車両から外に出た。トレイルモンは輝一が出たのを確認すると、扉を閉め、その場を去った。
「それにしても、本当に真っ暗だなぁ……」
輝一が、懐中電灯を点けて辺りを照らしながら辺りを見渡していると、後ろでトレイルモンが発車する音が聞こえた。
「…………うん?」
その音が聞こえた輝一は振り返って何があったのか色々照らしながら探していると、反対のプラットフォームに誰かが居ることに気付いた。その後ろ姿から女の子であるということ位しか想像つかないが、この世界の“選ばれし子ども達”の1人ではないかと輝一は考えた。すると、少女は自分が照らしている事に気付いた様で、振り返った。
「誰か……いるの…………?」
その声はとても細々としており、怯えている様子だと見てとれた。輝一はその緊張を解してあげようと、ゆっくり近付きながら呟いた。それがどんな効果を発揮するかは分からなかったが、やってみる価値はあると考えた。
「あれ……俺以外に来ている子ども…………なのかな?」
「!!??」
輝一は更に近付いて少女の様子を確認した。黒のレギンスにこげ茶のホットパンツ……を履いており、明るい茶色の動きやすそうなジャケットを着ていた。そして、首もとには不思議な縹色をした痣のようなものが見えた。そして、とても整った顔立ちではあったが、何かに驚いている表情をしていた。
「あの、大丈夫?」
「え、あ……は、はいっ! 大丈夫れすっ!! …………」
輝一が恐る恐る声をかけると、少女は慌てて答えるが、思わず言葉を噛んでしまい、顔を真っ赤にしてうつ向いてしまっていた。輝一はその光景を見て首をかしげていた……
これが、少女……小野香流と、木村輝一の出会いだった…………