デジモンアドベンチャー エクストリーム~6色の新たなる選ばれし者達の冒険~ 作:瑞田高光
「…………う、ううん……ここ、は…………?」
少年は目を覚ますと、そこは何処かの小さな町の交差点の様な場所だった。彼は体を起こすと、自身に起こった出来事を思い返していた。
「確か……山崎山で…………手紙が風に飛ばされて、それでぬかるみに足を取られて……池に落ちた…………のかな?」
彼……酒匂錦は少しずつ思い返していたが、最後の思い当たる場面に疑問を抱いた。そして、一度自身の体を見渡したり自身の髪に触ってみたりした。
「濡れてないし……池には落ちてない…………のかな」
錦は立ち上がると、ふと、ある1軒の家が目に止まった。
「扉が……開いてる?」
1軒だけ不自然に扉の開いている家を見付けた錦はその家に近付いた。
その家はその大部分が木で出来ており、屋根は藁などで出来ており、見た様子ではかなり昔の家の造りの様だった。
「お、お邪魔しまーす……」
錦は少し控え目に扉の中を確認すると、家の中は平屋建てで部屋は特に部屋区切りがされている訳ではない。家の中にはキッチンのような場所やテーブル等が真っ先に目についた。そして家の奥の辺りには藁の様なもので出来ているベッドと思える物が見えた。
「……誰かの、家?」
「おいっ! そこで何をしているんだよっ!!」
「っ?!」
錦が中の様子を伺っていると突然、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。錦が思わず体を竦めて振り返ると、そこには赤い羽毛に黄緑と黄色の嘴を持ったペンギンの様なデジモン……ムーチョモンが紙袋を両手で抱き抱えた状態で怒りの形相で立っていた。
「おい、俺の家ん中覗いてどうするつもり?」
「……別に、1軒だけ扉が開いてたら気になると思うけれど…………」
「…………は?」
高圧的だったムーチョモンの表情が怒りから驚きに変わった。
「……あ~、すまんな。突然怒っちまって。まぁ、立ち話もアレだし……入れよ」
「…………それじゃ」
ムーチョモンが苦笑いして家の中に入ると、錦を招き入れた。
「いやぁ、最近ここら辺のデジモン達は泥棒に入られるからつって別んとこ引っ越しちまってよ……ちょっとカリカリしてたんだ」
ムーチョモンは荷物を置くと、それを色々なところに置きながら話していた。
「あぁ、そうだ。俺はムーチョモンってんだ。お前さんは?」
「……酒匂錦」
ムーチョモンが自己紹介をすると、錦も少し間を開けて答えた。すると、ムーチョモンは少し驚いた様子で訊ねた
「へぇ、人間か。この辺りじゃ見掛けないが……どういった経緯でここに来たんだ?」
「……分からない」
「…………あ~、成る程ね。所謂“選ばれし子ども”って奴か。お伽噺だと思ってたが……まさか、本当に居るとはな」
「……? それってどういう…………」
錦の答えにムーチョモンは納得し、話し続ける。錦は『お伽噺』という単語を聞いて疑問に思ったのかその事を訊ねようとしたとき、ドアがノックされた。
「ホイホイ……どなたかな?」
ムーチョモンがドアを開けようと、ドアへと向かう。錦もそれを目で追い掛けていて、ドアが開いたときに驚きを隠せなかった。
「あの、ここってどういった街なんで…………あら?」
「空! もしかして……」
「多分ね…………あの、あの子は……」
「あぁ、アイツかい? 多分だが、“選ばれし子ども”だと思うね」
そう。やって来たのは空だった。隣には、ピヨモンも居た。空は錦に気付くと、ムーチョモンに訊ねた。ムーチョモンは錦を簡単に紹介した。
「……どうも。酒匂錦です……」
「初めまして、武之内空です。こっちはパートナーのピヨモンよ」
そして、互いに挨拶を交わした。
これが、酒匂錦と武之内空の出会いだった。