デジモンアドベンチャー エクストリーム~6色の新たなる選ばれし者達の冒険~ 作:瑞田高光
「…………あれ?」
「ん……? どうしたんだ、ブイモン……」
オレとブイモン、そしてさっき出会った女の子……夕輝は夕輝のパートナーを探すためにこのデジタルワールドの森の中を歩いていた。すると、ブイモンが何かに気付いたかのように鼻をヒクヒクさせている。オレがブイモンにどうしたのか訊ねると、ブイモンは嬉しそうに答えた。
「この先にチビモン達のニオイを感じるぞ!!」
「「えっ!?」」
ブイモンの言葉にオレと夕輝は驚きを隠せなかった。そして、オレ達がブイモンに案内されてその方向へ向かうと……そこには何やら村のような集落みたいな場所が見えた。
「アレは……なんやろ…………村?」
「あそこに一杯チビモンのニオイがするよ! 早くいこうぜ!!」
「おい、ブイモン!! 待てって……!」
その光景に夕輝は呆気に取られていて、ブイモンは嬉しそうに駆けて行きやがった……オレと夕輝は慌ててブイモンの後を追い掛けた。
オレ達が村の入口に辿り着くと、そこにはたくさんのチビモン達がオレ達が来ることが分かっていたみたいに集まっていた。
『ようこそにんげんさんにブイモン! チビモンたちのむりゃ(村)でゆっくりしてってね!!』
「うわあ……凄い…………チビモンがいっぱいおる!」
「オレ達が来るの分かってたのか……?」
「だって、このむりゃでそだったブイモンはみんなまちにでちゃうからコッチにちかづいてくるブイモンはあまりいないもん!!」
夕輝は驚きの表情を浮かべながら呟いていたから、オレがチビモン達に問い掛けると、一匹のチビモンが答えてくれた。どうやら、里帰りみたいなのは無いらしく、自分達の村にブイモンがやって来るのが珍しかった様だった。
それで、当のブイモンはって言うと…………
「「「あしょんで~!」」」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ……大輔~、助けてくれぇ~!」
何匹かのチビモンに遊んでとせがまれている……だが、オレは助けない。だって面白そうだもん。チヤホヤされ慣れてないブイモンを見てオレは他のチビモンにも声を掛けた。
「ブイモンがお前らと遊んでくれるってよ!」
「大輔!?」
『やったぁ~!!』
「ちょ、大輔……後で覚えてろよ~!!」
……ヤバい、涙目になってた…………後で謝ろう。流石にやり過ぎた…………だけど、後悔はしていない。
…………でも、後で板チョコあげよう。
「ねぇねぇ!」
「うん……? どうしたんや?」
「アタシにいっぱい、にんげんさんたちのせかいのおはなしして!」
殆どのチビモン達がブイモンの方に駆け寄って行くのを見ていると、夕輝の方に一匹のチビモンがチョコチョコと駆け寄って行った。どうやら、夕輝と話がしたいらしい。
「えぇよっ! あたしは夕輝って言うんや。宜しくな!」
「俺は大輔だ! 宜しくな!」
「うん! ゆうき、だいしゅけ!」
折角だから、俺も夕輝の世界の話を聞きたいと思ってその場に残った。チビモン達の村に着く前に話をしてたら俺達の世界とは違う……いわゆる異世界から来たって言ってたし(その時にオレを知ってる理由も教えてもらった)…………ちょっと気になるだろ?
「…………って感じなん!」
「しゅごぉい! アタシもいつかいってみたい!」
「行けると良いな、チビモン」
「うん!」
夕輝の話してくれている内容とかを聞いてる限りでは、オレ達とは然程変わらないみたいだった。それで話を聞いていると、どうやらリアルワールドでの年齢と今の年齢が違っているらしい。今はオレと同じくらいみたいなんだけど……リアルワールドでは既に大人になっているらしい…………どうしてかは分からないみたいだけどな。(敬語とかをどうしようかと思ってたけど別に気にしないでと言われたからそのままタメで行くことに。)
そして、夕輝が憧れている人の事を話し始めた。その人はどんなに窮地に立たされても諦めない心を持ち、何事にもチャレンジする熱血漢で正義感の溢れる性格が良いらしい。
…………この時、オレは自分を褒められてると思ってしまって顔を赤くしていたのは内緒だ。別にその相手の名前までは言ってなかったけど……いや、言ってなかったからそう思ったんだろうな。うん……
それから数分後……はしゃぎすぎたのか、ブイモンは遊んでいたチビモン達とお昼寝をしてて、夕輝と一緒にいたチビモンも夕輝の服にしがみついた状態で眠っている。完全に夕輝になついている様子だった。
「それにしても、こりゃ完全になつかれたな……」
「せやなぁ。なんか、会ってから間もないのにから……別れるのが辛く感じるわ…………」
そう、オレ達はここで一晩を明かしたら村を出ようと考えていた。スグに出ないのはブイモンが疲れている様子だったのもあるけど、何より……今夕輝といるチビモンと少しでも長く一緒にいてあげたい。でも、オレ達は旅をしてこのデジタルワールドを救わなくちゃいけない。だから、一晩だけ村に居ることにした。
そして、翌日夕輝と大輔、ブイモンがチビモンの村を出る時……
「みんな、ありがとな! 楽しかったよ!」
「うん! 時間があれば、また来るで!」
「また一緒に遊ぼうぜ!」
『またね~!』
夕輝と大輔、ブイモンは手を振って再びこれといった宛のない旅へと戻ることになった。
「それにしても……これからどうするかな…………」
「せやなぁ……いくらこれといったデジタルワールドの被害を確認出来てへんし……暫くはノンビリとパートナー探しするしか無いんやないかな?」
「そうだよなぁ……」
「アタシ……たび、たのしみ!」
「「「…………え?」」」
2人と1匹がどうしようか迷っていた時、聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、夕輝の足元に……夕輝になついていたチビモンが居ることに気が付いた。
「チビモン!? お前……どうして!?」
「アタシ、ゆうきとたびにいきたいの!」
大輔が驚いて問い掛けると、チビモンはエッヘンと小さい体で胸を張って答えた。
「そ、そんなん急に言われたって……!」
「そうだっ! 早く村に帰りなよ!!」
夕輝が少し戸惑いを見せつつ話し掛けると、ブイモンもそれに同意して少し強気な口調で言い放つ。しかし、チビモンも負けじと言い返した。
「だって、ゆうきのパートナーなるんだもん! アタシ、きめたんだもん!!」
「「…………」」
その強気な口調に大輔とブイモンはただただ言葉を失った。そして、夕輝も「はぁ……」と溜め息を漏らすと…………
「しゃあない、一緒に行こか!」
「!! やったぁ! ゆうき、だいしゅき!!」
笑顔でしゃがんで両手を広げて見せた。チビモンは嬉しそうに夕輝の胸の中に飛び込んだ。夕輝は赤ちゃんを抱っこする様に優しく抱えあげた。
「良いのか……?」
そんな様子を見た大輔が少しながら不安そうに問い掛けた。すると、夕輝は頷いて答えた。
「うん! あたしは別に構わへんよ。それに大輔とおんなじデジモンパートナーに出来るんや! それほどまでに嬉しいことは無いで!」
「っ!!」
満面の笑みで微笑んで答える夕輝に大輔は思わず顔を紅く染めた。
「……? 大輔、顔が赤いぞ?」
「っ~~!! う、うるせぇ!」
「いってぇ~~!? ……俺、何か言ったっけ…………」
顔を紅く染めた大輔を見て首をかしげて問い掛けたブイモンに大輔は急に恥ずかしくなって照れ隠しにブイモンの頭に少し強めに握り拳を下ろした。頭に拳骨をくらったブイモンは少し目に涙を溜めてどうして殴られたのか分からないままブツブツと呟いていた。
夕輝は旅ができて嬉しそうに喜ぶチビモンを抱いたままその光景を見て笑い、こう呟いた。
「この旅が、こんな風に続いたままで終わればええなぁ…………」