デジモンアドベンチャー エクストリーム~6色の新たなる選ばれし者達の冒険~ 作:瑞田高光
「う、うん……ここは…………?」
龍星がゆっくり目を開くと、そこには真っ青な快晴の空が見えた。そして、体に当たっているのが丈の非常に短い草地……芝生の様な物だと理解した。
「っ?!(俺、さっきまで自分の部屋に居たのに!?)」
状況を把握した龍星はスグに飛び起きた。そして、辺りを見渡して自分のいる場所が何処かを把握した。
「……(どうやら、小高い丘っぽい所にいるみたい…………)ん?」
龍星が耳を澄ませるとどこからか【何か】が近付いてくる音が聞こえてきた。龍星は近くに隠れれる草むらを見つけてそこに身を隠した。
「(な、何なんだ…………?!)」
龍星が警戒していると、コチラへと向かってくる【何か】の姿が見えた。
「(アレは…………ゴブリモン……? それにしては色々な風貌の奴らが多いな……)」
龍星が息を潜めて様子を見ていると……ゴブリモン達の声が聴こえてきた。
「この辺りか……」
「おい、シャーマモン! 本当にこの辺りに選ばれし子どもが来るんだろうな!」
「当然だ、ヒョーガモン。私に舞い降りた御告げが外れた事があるか?」
「別にテメーを疑ってる訳じゃねーけどよっ!」
「良いじゃねぇか。そいつを俺達の奴隷にしてしまえば問題ねぇんだからよぉ!」
「それもそうだな、フーガモン! 良し、ここら辺一帯をシラミ潰しに探せ!!」
ゴブリモン達は棍棒を持ち上げて散開して捜索を始めた。そして、龍星のいる草むらにヒョーガモンと呼ばれたデジモンが近付いてきた。
「!!(選ばれし子どもを探してるの?! って事は……俺が狙われている…………?)に、逃げないと…………」
龍星は自分の身に危険が及んでると察すると静かに立ち去ろうとした…………が、自分の後ろに小枝が落ちている事に気付かなかったため……
パキッ
「!!(し、しまっ……)」
「誰だ……! 選ばれし子どもかっ!!」
小枝を踏んでしまい、ヒョーガモンに見付かってしまった……!
「ひっ……う、うわあああああっ!!」
「見付けたぞ! 追えぇぇ!!」
龍星は慌てて体の向きを変えて森の中へと逃走を試みた。後ろからヒョーガモンらの声が聴こえてくるため、振り返らない方が良いと思い、一心不乱に走って逃げた…………が、逃げてる最中に龍星はふとこんなことを考えていた
「(あれ……こんなに俺って足遅かったっけ…………それにさっき声が普段より高かったような……って、まさか……?!)」
龍星は、自分でも運動……特に走ることに関しては苦手意識があることを自覚している。だが、「平均より若干遅い程度だから気にしないでも良いか」と言えるほどだったのだが、今の速さはそれよりも圧倒的に遅かった……全速力にも関わらず…………だ。その上、龍星は知り合いの同じ年代の知り合いと比べるとかなり低めの低音ボイスが特徴だった……のだが、先程発した声は自身の現在の音域では出ることのない高めの声…………否、声変わりしていない時の声に似ていた。そう考えて辺りを見れば、龍星の目線からは確かに周りの木々は凄く大きく見えた。
「(これが……いわゆる若返りトリップって奴?! 俺、今何歳位なんだろ)…………って、うわっ……!」
考え事をしながら走っていれば、当然走っている方向への注意が疎かになる……龍星は足元の樹の根っこに足を取られてしまい、転けてしまった。
「い、いっててて…………転んじゃった……!!」
龍星が急いで立ち上がろうとすると、背後の気配に気づいて慌てて振り返る……と、そこにはゴブリモン、ヒョーガモン、フーガモン、シャーマモンといったゴブリモン系列のデジモンが龍星を見下ろしていた……
「よぉやく追い付いたぜぇ……? さぁ、覚悟しなぁ……俺達がたんと可愛がってやるからよぉ…………!」
「あ、あわわ……こ、コッチにくんな…………!!(い、いきなりの大ピンチィィィ……でも、泣きたくない…………泣いたら負けな気がする……!)」
龍星は泣きたい心を押し留め、へたりこみながらも後退り距離を一定に保とうとしていた……が、ゴブリモン達の歩幅の方が大きく捕まるのも時間の問題だった…………その時
「伏せててっ! ツララララ~!!」
「ふえっ?!(この声……友樹!?)」
突然、何処からか聞き覚えのある声が聴こえてきて、慌てて龍星がそれに従って頭を抱えてその場にうずくまると……自分の頭上を何かが通った気配がし、更に冷気の様なものを感じとった。
恐る恐る前を向くと、小柄なシロクマの様なデジモンが自分を背にして立っており、ゴブリモン達は自分の前にいるデジモンと距離を置いていた…………
「もう大丈夫だからね、安心して!」
目の前のデジモンはクルリと振り返ると、ニコッと龍星に笑いかけた。その時、龍星の脳裏にある少年の笑顔が浮かび上がった。
「……ユウ、キ…………?」
龍星は無意識に幼き頃に失った、かけがえのない親友の名を呟いていた……そして、龍星の頬を涙が伝った。その涙は、彼が昔……友を失った時と同じだったかは本人しか分かり得ない事ではあったが…………
side友樹
「……ここかぁ」
僕はトレイルモンの車両の中で揺られながら窓の外を見ていた。
そこには新緑の森が一面に広がっていて、僕はふと森のターミナルを思い出していた。
「また、皆に会いたいなぁ……」
「おお~ぅい、着いたよぉ~」
「あ、うんっ! ありがとう!!」
ポツリと呟いていると、トレイルモンが到着を知らせてくれた。僕はお礼を言ってトレイルモンから降りると、トレイルモンはそのまま扉を閉めて帰っていった。
「辿り着いたは良いけど……これからどうすれば良いんだろう…………」
前の冒険では、拓也お兄ちゃん達が一緒に居てくれてたから付いていけば良かったけど、この世界では僕一人だけで考えないといけない。ふとそう考えると不安を感じてしまう…………
「えぇい! 不安は禁物っ、いくぞおっ!!」
僕は一先ず歩いていく事にした。そうすれば、自然といくべき場所が分かるような気がしたから……
「それにしても、このデジタルワールドはどんな世界なんだろう…………っ!」
僕は慎重に歩きつつ辺りを見渡していた。すると、突然僕のズボンのポケットに入れていた携帯が震えだした。
そして、携帯を取り出すと携帯が光輝いていき……デジヴァイスになっていった。そして、デジヴァイスの画面には氷みたいなマーク…………チャックモンも、この世界に来ているみたいだった。
「チャックモン、これからも宜しくね!」
僕は自然とデジヴァイスに話し掛けていた。この声がチャックモンに届いているかは分からなかったけど。すると、デジヴァイスの画面が切り替わって、薄い緑色の点と紫色みたいな色をした点滅している点が表示された。このまま真っ直ぐ行けば合流出来そうだった。
「もしかしたら、誰か居るのかも!!」
僕はそう思うと嬉しくなって思わず駆け出して行った。
「そろそろだよね…………あっ!!」
足を止めた僕が見たのは…………僕と同じくらいの子どもがデジモンに襲われそうになっているところだった!
「あ、危ないっ!!」
僕は気が付くと走り出していた。
あの子を助けたい!
その一心で走りながら、左手にデジコードの輪が出ているのを確認した。
「チャックモン……また、僕と一緒に戦おう!
スピリット・エボリューション!!
チャックモン!」
そして僕は走ってる勢いそのままに地面を蹴った。そして、襲われそうになってる子に向かって叫んだ。
「伏せててっ! ツララララ~!!」
「ふえっ?!」
襲われそうになってた子が頭を抱えて小さくうずくまったのを確認するとほぼ同時に僕は体を氷柱の様にして敵陣めがけて突っ込んだ。けど、相手も相手で戦闘慣れはしていたようでバックステップを踏んで回避していた。
僕は地面に落ちるとそのまま体を元に戻し、自分の後ろの子の様子を確認しようと振り返った。
「もう大丈夫だからね、安心して!」
振り返ると、コチラを見ていた様で教われていた少年は栗色の短い髪で驚きと恐怖が入り混じった様な表情をしていた。すると少年は僕の方を見て……
「……ユウ、キ…………?」
「え…………?」
ポツリと誰かの名前だと思う言葉を呟いて、涙をポロポロ流し始めたんだ…………一体、誰の事なんだろ……
これが、僕……氷見友樹と、この男の子の出会いだった。この時は、まさかこんな事に巻き込まれてるとは思いもよらなかったんだ…………