進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第九話

 

お互いに少し落ち着いたところで、二人は今後どのようにするかを相談し始めた。

ちなみに二人は隣同士で座っており、あかりはヒカルの肩に首を預けている。もちろん手はつないでおり、完全にバカップルの光景であった。

 

 

「それでヒカル? やっぱりヒカルはこの世界でも囲碁のプロになるの?」

「まぁ、なりたいはなりたいかな」

 

 

あかりはヒカルの呼び方を昔に戻した。流石に小六であなた呼びはなしということで。

ヒカルはあかりの問いにそう答える。だが、一つ気になることがあった。それは一人で家にいたときも考えていたこと。

 

 

「なぁ、あかり? やっぱり前と同じように生きていかないとマズいかな?」

「うーん……」

 

 

ヒカルの言葉に、あかりは悩ましげに声を出した。

正直に言えば、すべて同じように生きるのは無理だろう。いつ何をしたなんて、一日一日覚えているわけもない。しかも見た目は小学生でも、二人とも精神年齢は二回りも上の大人だ。厳しいものがある。

 

 

(それにーー)

 

 

前と同じように生きた場合、ヒカルは中一で院生になり、その後プロの道を歩くことになる。つまり中学生になってからはヒカルと離ればなれになってしまうのだ。それがあかりにとって、一番嫌なことだった。

あかりはヒカルの肩から頭を上げると、ヒカルの方を真剣な目で見つめる。ヒカルもまたあかりを見つめ、その答えを待った。

 

 

(すごいワガママだけど、私はヒカルのそばにいたい。だからーー)

「たぶんだけど……。前と同じようにした方が、いいとは思う」

「あぁ」

「でも私、ヒカルといたい」

「!」

 

 

あかりは想いを込めて、言葉を続ける。

 

 

「ヒカルが院生になるなら、私も院生になりたい。プロになるなら、私も同じ世界に行きたい」

「……」

 

 

前の世界では考えることもなかった選択肢。

でも今なら。長い間ヒカルと打ってきた今のあかりなら、それだけの実力があった。

 

 

「重い女って思うかもしれないけどーー」

 

 

ヒカルの側にいさせてください。

そう言ったあかりを、再びヒカルは抱きしめた。

 

 

「良いに決まってるだろ? あかりがオレと一緒に院生になってプロを目指してくれるなんて、すげー嬉しい」

「ヒカル……」

「前と違う流れでもいいじゃん。オレは、あかりと一緒に過ごせる時間の方が大事だよ」

「……」

 

 

ヒカルの言葉に頬を赤く染めるあかり。何度も言うが、バカップルである。

その後二人は、これからどう過ごしていくかを大まかに決めた。前の世界との変更点は『あかりも院生になること』と『小六の1月に二人とも院生試験を受けること』の二つ。ヒカルとあかり二人が一緒にいたいという願望と、ヒカルが塔矢アキラと同期のプロになりたいという願望から生まれたものである。

 

 

「やりたいことも、やらなくちゃいけないこともどっちも多いんだよな」

「そうだね。それに、会っておきたい人もいっぱいいるんだよね」

「……あぁ、そうだな」

 

 

指を折りながら名前を挙げていくあかりを横目に、ヒカルは目を閉じた。

 

 

(塔矢、筒井さん、三谷、和谷、伊角さん……。会いたい人はたくさんいる。でもオレが、今一番会いたいのはーー)

「……あかり。次の日曜日、時間ある?」

 

 

ヒカルの言葉にあかりは動きを止め、ヒカルの方を向いた。

そしてすぐに理解し、ヒカルを安心させるように微笑む。

 

 

「大丈夫だと思うよ。一緒に行こうね?」

「うん、頼む。……まぁ、いるか、わかんないけどな」

 

 

そう言って、ヒカルは寂しそうに笑みを浮かべた。

言葉にしてはいないが、日曜日に二人で行く場所。そこはもちろん、ヒカルの祖父の家にある蔵。

 

ヒカルが藤原佐為と初めて出会った場所である。

 

 

 

 

 

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