進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第十話

 

そして日曜日。

ヒカルとあかりの姿が、ヒカルの祖父である進藤平八の家の前にあった。ヒカルは一つ深呼吸をして、あかりの手を引き敷地内に入っていく。

 

 

「来たぜ、じいちゃん」

「お邪魔します」

 

 

縁側で碁盤の前に座り、詰碁を解いている平八の姿を見つけた二人は声をかけた。平八はその声を聞くと目線を碁盤の上から二人に向け、そしてにっこりと笑う。

 

 

「よく来たな、ヒカル。それにあかりちゃんも。久しぶりだね」

「お久しぶりです」

「じいちゃん。電話で母さんから聞いてはいると思うんだけどーー」

「わかっておる。蔵の中に入りたいんだろ?」

 

 

平八の言葉に、ヒカルは大きくうなずいた。

そんなヒカルに、平八は不思議そうな顔をする。

 

 

「別に構わんが、おもしろいものも高価なものも特にないぞ?」

「うん、わかってる」

「わかってる、って。じゃあ何のために入りたいんだ?」

「……」

「まぁ、いいがな。蔵の中は暗いし、高くはないが皿などの割れ物も多い。気をつけるんだぞ?」

「うん、ありがとう」

 

 

ヒカルがお礼を告げると、平八は腰をあげた。

そんな平八に、ヒカルはもう一つのお願いをする。

 

 

「それとじいちゃん。もう一つお願いがあって……」

「何だ? 小遣いならやれんぞ?」

「ちげーよ。この前の社会の小テストだって良かったし、小遣い増えたぐらいなんだぜ。いや、そうじゃなくて……。実はオレとあかり、囲碁を始めたんだ」

 

 

平八が目を見開く。あかりはともかく、ヒカルは勉強や頭を使うことなどが嫌いなはずだ。そんなヒカルが囲碁など、信じられなかった。

 

 

「ホントか、ヒカル? 正夫はやらなかったからな、もしそうならとても嬉しいが……」

「ホントだよホント。じいちゃんが解いていた詰碁なら、たぶん二人とも解けるぜ」

「……。バカを言うな、ヒカル。これが五分で解けたら、アマ三段の棋力はある。始めたばかりの二人に解けるわけがーー」

「ねぇ、ヒカル? これの答えって、ここで合ってる?」

 

 

そのとき、平八の耳にあかりの声が届いた。

そちらを見ると、あかりが碁盤の上の一ヶ所を指で指している。そしてあかりの指している場所を見て、平八は再び目を見開いた。

 

 

(バ、バカな。ワシがさっきまでずっと考えていて、ようやく導き出した答えと一緒だと? ……偶然か? だが、あかりちゃんはかなり確信を持ってヒカルに聞いたような……)

 

 

平八が呆然としている間に、ヒカルも碁盤の前へと動く。そして盤面をチラッと見てーー

 

 

「あぁ、そこで良いと思うぜ」

「!?」

「ホント? 良かったー」

「まぁ、一応並べるか」

 

 

驚く平八を余所に、ヒカルはあかりに一つ一つ尋ねていく。

 

 

「ここでこっちからアテたらどうする?」

「こう、かな?」

「うん。んじゃ、こっちにノビたら?」

「こう、だよね」

「合ってる合ってる。じゃあーー」

(これは、夢か……?)

 

 

目の前の光景に平八は衝撃を受け、感動を覚えた。

平八は近所では有名な囲碁好きで、町内大会では敵なしのかなり強い碁打ちである。それこそ周囲には『クツワ町の井上さんに勝てたのはワシだけ』と言って、自慢したものだ。

だが囲碁を始めたばかりだというこの二人は、そんな自分と同じーーいや、あかりに教えてるヒカルに関しては確実に自分よりも上の実力を持っている。この事実に、平八が興奮しないわけがなかった。

 

 

「……ヒカル。もう一つの願いってのは何だ? 囲碁関係の何かなんだろう?」

 

 

先の問題についての解説が終わったところて、平八はヒカルにそう確認した。ヒカルはうなずきーー

 

 

「オレとあかり、二人で相談したんだけどさ。オレ達院生になって、囲碁のプロになりたいんだ」

「!」

「もちろん、大変な道ってのはわかってる。それに囲碁を知らない父さんと母さんは反対すると思う。でも、二人で目指したいんだ」

「……」

「だからじいちゃんに、オレとあかりがプロを目指すだけの力があるってことがわかるじいちゃんに。一緒に説得して欲しいんだ。……お願いします」

 

 

ヒカルが頭を下げるのと同時に、あかりも頭を下げた。

それを見て、平八はやれやれと首を振った。その口元に、笑みを浮かべながら。

 

 

(この子達には才能がある。とんでもない囲碁の才能が。……これを摘んでしまうのは、あまりに惜しい。本来なら孫とその幼馴染の将来、あまり口出しなんていけないんだろうがーー)

「まぁ、そのときは口添えくらいしてやるさ。二人の夢、ワシは応援するよ」

 

 

自分の言葉に喜ぶ二人を見つめながら、平八は思う。きっとこの二人はプロになってくれるだろう、と。

それが今から楽しみで、しょうがなかった。

 

 

 

 

 




おかしい。
ヒカルのじいちゃんが出てきて終わってしまった。
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