進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第十二話

 

前回は倒れた直後のヒカルをあかりが発見し、救急車騒ぎとなった佐為との遭遇。だが今回はあかりも倒れた上に逆行しているため、そういった事態にはならなかった。

倒れてから五分。

二人はほぼ同時に呻き声をあげながら、重たくなった頭を上げる。

 

 

「ってぇ。……大丈夫か、あかり」

「うぅ。……大丈夫、だと思う」

(ーーすみません。あなた方二人の意識の中に入らせていただきました)

 

 

突如として頭の中に直接話しかけてくる佐為の声に、慣れないあかりは体をビクッとさせる。前世で経験済みのヒカルは、痛みに頭を押さえながらも佐為に問いかけた。

 

 

「佐為……だよな?」

(ーー! 確かに私は藤原佐為ですが。……あなたはなぜ、私の名を知っているのですか?)

 

 

ヒカルの言葉に、警戒心を顕にする佐為。

そんな佐為の様子に、ヒカルはほんの少しだけ落胆した。淡い期待ではあったのだが、もしかしたら佐為も自分達と同様に過去に戻ってきたのではないかと考えていたのだ。そうしたら、いろいろ尋ねることも、謝ることもできたのに、と。

 

 

(でも、そんなこと言ってちゃバチが当たるな)

 

 

再び佐為と会えただけでも奇跡なのだ。これ以上望むのは贅沢である。

 

 

「なんでオレが佐為の名前を知っているのか、だよな?」

(ーーはい)

「それはな。……オレと佐為は、すでに過去に出会っているからなんだぜ!」

(ーーはい?)

 

 

ニカリと笑うヒカルに、きょとんとした顔の佐為。そんな佐為に、ヒカルは今日までのことを簡単に話した。

ヒカルとあかりが過去の世界に逆行してきたこと。もとの世界では三十歳を過ぎており、その世界で佐為と出会っていたこと。そのときも佐為が自分の意識の中に入り、囲碁を教えてもらったこと、など。所々あかりもフォローを入れて、説明する。

 

 

(ーーそうですか)

「……。信じられないかもしれないけどな」

 

 

ヒカルの言葉を否定するように、佐為は首を横に振った。

 

 

(ーーいえ、信じますよ。嘘を言うような方達には見えませんからね)

「佐為……」

(ーーそれに。千年も前の者が碁盤に取り憑き、現代に蘇るのです。過去に戻るなんてことも、ありえなくないでしょう?)

 

 

そう言って、佐為はお茶目に笑った。

その懐かしい笑みに、もう何度目かわからない涙がヒカルの目から溢れる。

 

 

(ーーえぇ!? ど、どうしたのですか、ヒカル? ヒカル!?)

(……。あぁ、いつもこんな感じだったなぁ……)

 

 

自分の名前を呼ぶ彼の声に懐かしさを感じ、涙が止まらない。拭っても拭っても、どんどん溢れてくる。

 

 

(ーーあかり? あかり!? ヒカルはどうしてしまったのですか!? どこか体調が悪いのでは!?)

「ふふっ。大丈夫だよ、佐為さん。……良かったね、ヒカル」

 

 

あたふたとする佐為に、あかりは優しく微笑みかけた。そして誰に聞こえないような小さな声で、そう呟く。

端から見たら、泣いている少年とそれを見て微笑んでいる少女という、不思議というよりは不可解な光景。

だが……。

だが当人達にとっては間違いなく、それはとても幸せな光景であった。

 

 

 

 

 

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