「月末に組み合わせ表やお知らせをお送りします」
「はぁ」
「わかりました」
合格を告げられたヒカルとあかりは、喫茶店にいる母親二人を呼びに行った。その二人は現在、篠田から説明を受けている。
「ちょっと研修部屋を覗かれますか? もうだいぶ、対局も終わったんじゃないかな」
そして最後に、四人を大部屋へと案内する。
そこには、碁を勉強するたくさんの少年少女達の姿が。
(ヒカルより小さい子もいるじゃない)
(これならあかりも合格するわね)
同じ年齢の子ども達がいることにホッとする二人。
そして目をキラキラ輝かせる霊が一人。
(ーーヒカル、あかり! あそこ! あそこを覗いてみましょう!)
(はいはい)
(佐為さん、ずっと我慢してたもんね)
二人は苦笑すると篠田と母親二人から離れ、感想戦らしきものを行っている少年達のもとへ向かった。
(どれどれ……って和谷と伊角さんじゃん!)
(わぁ、二人とも若い!)
(ーーお二人の知り合いですか?)
(前の世界で世話になった二人だよ。二人ともプロになるんだぜ!)
あまりの懐かしさに、ついまじまじと見てしまうヒカルとあかり。流石に感想戦途中の二人も視線に気づいたようで、顔を上げた。
「えっと。……誰だ?」
「……もしかしてさっき試験受けてたのって、キミ達?」
「え? うん、そうだよ」
「へぇ。二人一緒なんて珍しいよな。二人とも受かった?」
「うん。二人とも合格って言われた」
「おっ、勘が当たったな!」
「じゃあ、来月からはここで碁を打つんだ。よろしく」
和谷と伊角の質問にヒカルが答えていると、周りに人が集まってきた。終局している者が多いこともあるが、皆来月から増えるライバルに興味津々なのである。
「二人とも歳はいくつなの?」
「両方とも小六で12歳だよ」
「……もしかして、二人って知り合いだったりする?」
「えっと。私達、実は幼馴染でーー」
「「「幼馴染だと!?」」」
「ひぅっ!?」
二人の関係を聞いて、周囲から驚きの声が上がる。そのボリュームにあかりが変な声を出すが、周囲の少年達はそれどころではなかった。
(碁を打てる、しかも女子の幼馴染だと!? そんなものがこの世に存在するのか!?)
(オレの周りには碁を打てるのじいちゃんくらいしかいなかったのに!)
(こんなに可愛い幼馴染がいるとか、コイツ恵まれ過ぎだろ!)
嫉妬の感情が少年達に宿る。
だが少女達は興味の方が勝ったようで、あかりに質問を続けていた。それに一つずつ、あかりは律儀に返していく。
曰く、基本的に毎日二人だけで碁を打っている。
曰く、場所はヒカルの部屋で行っている。
曰く、今は彼氏彼女の関係ではなく、まだ幼馴染である。(大嘘)
(……忘れてた。あかりって、少し天然だったわ)
キャイキャイ騒ぐ少女達を見て、遠い目をするヒカル。
そう、あかりは真面目に考えて答えているのである。自分の答えがいかに恋バナ好きの少女達を喜ばせ、いかに碁だけに時間を費やしてきた少年達のボルテージを上げているのかに気づいていないのだ。
少女達の会話は、ヒカルとあかりの母親が二人を迎えに来るまで続いた。
「あかり、ヒカルくん。帰るわよ?」
その声を聞き、あかりは少女達に手を振りながら母のもとへ。ヒカルも背中に視線を感じながら、無言でそちらに向かった。
そして最後に美津子が一言。
「来月からこの子達来ますから、皆さんよろしくね」
「「「えぇ、よろしくお願いします」」」
(((ボコボコにしてやる!)))
なぜか、少年達の声だけが重なって聞こえた。
ついでに心の中の声まで、重なって聞こえるようだった。
その夜、ある一室での会話。
「ーー以上が今回の試験結果で、二人を合格としました」
「ふむ。……しかしこの少年、本当に入れて大丈夫ですかね?」
「何かあったら私が責任を持ちますよ」
「……。まぁ、先生がそこまで仰るなら」
「それにですね」
「?」
「合格を伝えるときは葛藤があったんですが、今考えるとあまり心配しなくても大丈夫ではないかと思ってます」
「ほぉ、それはまたどうして?」
「……。私は数十手しか彼と打っていませんし、棋譜も三枚しか見ていません。でも、そこから伝わってくるものもあります」
「?」
「彼の碁はとても真摯で、そして丁寧なんです。強大な力を感じて、気づくのが遅くなってしまいましたが」
「……」
「だから、大丈夫です。彼と、彼と闘うことになる彼らを信じましょう」
嫉妬してない人達
伊角さん……困ったように笑うだけ。大人。
和谷くん……しげ子ちゃんがいる。勝ち組。
フクくん……嫉妬感情がない。お子ちゃま。
奈瀬さん……あかりに質問攻め。かわいい。
越智くん……まだ院生になっていない模様。出番ある?