進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第二十二話

 

1月最初の日曜日ーー

 

 

「んじゃ行くか」

「うん」

 

 

初手合いを迎えたヒカルとあかりの姿が、日本棋院にあった。

二人が六階で降りると、周囲からの視線に晒される。

 

 

(やっぱり二人一緒に来やがったぜ)

(本当に碁の勉強をする気があるのかよ)

(ここはデートスポットじゃねぇぞ)

 

「……。何か、すごい見られてる気がする。やっぱり知らない子が来ると気になるのかな?」

(絶対そうじゃねぇけどな……)

「あっ!」

 

 

少しズレた考えをしていたあかりは、対局室の入り口近くに少女の姿を見つけて声をあげた。試験を受けに来たときに仲良くなった少女、奈瀬である。

あかりがそちらに向かうのに合わせて、ヒカルも奈瀬のもとへ。

 

 

「おはようございます、明日美さん!」

「おはよう、あかりちゃん。それと幼馴染くん。私は奈瀬明日美。よろしくね」

「おはよう。オレは進藤ヒカル。えっと、奈瀬って呼んでいい?」

「いいよ。私も進藤って呼ぶね」

 

 

明日美はニコッと笑った。

一緒に対局室へと入っていく。

 

「あかりちゃん、進藤。大丈夫? 緊張してない?」

「……実はちょっと緊張してて」

「まぁ、それなりかな」

「初めてだとそうだよね! 大丈夫だよ、段々と慣れてくるからね」

「はい! ありがとうございます」

「おぅ、サンキュー」

「2組はこっちだよ。私は向こうだから、また後でね」

 

 

明日美はそう言うと、自分の場所へと向かっていく。

それを見送り、ヒカルとあかりも自分の対戦相手を探し始めた。

 

 

「えっと、内田って……」

「あっ、私」

「あの、今西くん? 今西さんは……」

「今西はオレだよ」

 

 

ポニーテールの少女と眼鏡をかけた少年が声を上げる。二人に誘導されるようにそれぞれの碁盤の場所まで移動し、ヒカルとあかりは座布団の上に腰を下ろした。

やがて全員が指定された場所に座り、部屋に入ってきた篠田が挨拶をする。

 

 

「おはようございます。今日から皆の仲間が増えました。進藤ヒカルくんと藤崎あかりさんです。よろしくお願いします。……では始めてください」

「「「よろしくお願いします」」」

 

 

至るところで挨拶の声がかかり、二人のデビュー戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この子、すごく強い!)

 

 

ヒカルと打ち始めて数十手、内田は目の前の少年の強さに興奮していた。

 

 

(私の手に全く動じない。どころか厳しい手をこれでもかと返してくる。でも楽しい! そして、すごく勉強になる! ……指導碁だよね、これ?)

 

 

2組とはいえ、流石に気がついた。

彼の実力なら、もっと圧倒的に大差で自分に勝てたはずである。だが実際はそうなっておらず、逆に自分の実力をしっかり発揮できるように勝負は展開されている。

負けてはいるが、ここまで気持ちよく打てた碁は久しぶりと言っていいほどだ。

 

 

(彼と最初に打てたのはラッキーだったかも。彼はすぐに1組に上がっちゃうだろうから。でも、私だって上がりたい。だから今、この対局で学べることは学ばないと!)

 

 

内田はそう考え、目の前の対局により一層集中し始めた。

一方、今西。こちらは冷や汗を流していた。

 

 

(な、なんだこの強さは。オレじゃ歯がたたない)

 

 

あかりが打つ一手一手は厳しく、今西の地は減らされていく。

 

 

(ちょっと強いからって二人で何となく来たんじゃないのかよ!? 少し現実を見せてやろうと思ったのに、これじゃ……)

 

 

動揺したこともあったのだろう、そこで今西はポカをする。完全な見損じだ。

今のあかりがそれを見逃すはずもない。放たれた手に、今西は思考が真っ白になりーー

 

 

「……っ!」

 

 

今西は石をぐしゃぐしゃにして、驚くあかりを背に席を立つ。そして篠田の言葉にも止まらず、部屋から出ていってしまった。

 

こうしてあかりの方は少しハプニングもあったが、ヒカルとあかりは白星でデビュー戦を終える。そしてこの白星が途絶えることもなく、この先も続いていくと確信しているのは一部の人間だけであった。

 

 

 

 

 

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