進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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小学生編最後の話です。(前編)


第二十七話

 

「ヒカルって……私服ダサいよね」

「うっ……」

 

 

小学校生活ももう少しで終わり。春休みを間近に控えた、3月のとある平日の昼休み。あかりのど直球な言葉に、ヒカルは顔をしかめた。

 

 

「仕方ねーだろ。オレの服は全部、母さんが買ってきてるんだから」

「……」

「いや、オレもセンスいいとは思ってないけどさ」

 

 

ヒカルは今日着てきた、数字の5が前面プリントされている黄色の服を見下ろしながらそう答える。実際、他にヒカルが持っている服も55の数字がプリントされているものだったり、デフォルメされた熊が描かれているものだったりとお世辞にもオシャレとは言えないものばかりであった。

そんなヒカルの言葉を聞いて、あかりは目を輝かせる。

 

 

「じゃあさ、今度の日曜日一緒に服を見に行かない?」

「あかりと?」

「うん!」

「……。つまりデート?」

「うん!!」

 

 

あかりの言葉に、教室にいた周囲の女子達がキャーと声をあげる。ヒカルはそれを聞きながらも、特に考えることなく返答した。

 

 

「もちろんいいぜ。10時にあかりの家に迎えに行けばいいか?」

「それで大丈夫だよ!」

「了解」

 

 

デートの約束を取り付けたあかりは、女子の集団の方へ戻っていく。あかりちゃん大胆、などの声も聞こえるが、前の世界を経験している二人からすれば特に照れるようなことでもない。

そんなことないよ、と答えてるあかりをヒカルが横目で見ていると、同じクラスの男子から声がかかった。

 

 

「進藤。オマエ、また女子と遊ぶのかよ」

「女子っつーか、あかりとだけどな」

「おんなじだろ。前は一緒にサッカーとかして遊んでたのに、最近は全然じゃん」

「まぁ、オレにもいろいろあるんだよ」

 

 

男子の言葉を軽く流す。

ちなみに、逆行した最初の頃は急に仲良くなったあかりとのことを男子共に囃し立てられたが、あまりにも堂々とした振る舞いに最近はそういうことがなくなった。代わりにバカップル呼ばわりをされているが。

 

 

「まぁ、いいけどさ。せめて卒業前に一回くらい、またサッカーしようぜ」

「あぁ」

 

 

男子の言葉に、ヒカルは一つうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてデート当日、藤崎家。

洗面所であかりの姉が歯を磨いていると、あかりが二階から降りてきた。その姿を見て、姉は一瞬目を見開く。

 

 

「おはよう、お姉ちゃん」

「……。おはよう、あかり。なんか、その……。随分気合い入ってるわね」

「そりゃあ、デートだからね」

 

 

ふふっと笑ってデートと言い切るあかりに、姉は妹に女を感じた。真っ白なワンピースは清楚な印象を醸し出し、それがあかりによく合っている。また、普段はしてない化粧を今日は薄く施していた。母にやってもらったのだろうか、自然な仕上がりになっている。

まだ小六ではあるが、女子である。デート相手によく見られたいというオーラをこれでもかと感じた。

 

 

「まぁ、楽しんできなさい」

「もちろん」

 

 

幸せそうに笑ったあかりはそう言うと、玄関へと向かった。ヒカルくんが迎えに来たらすぐに出られるようにそこで待つらしい。

健気だな、と思いながらリビングに入ると、そこには黒いオーラを纏った父の姿があった。

 

 

「なに? お父さん、どうかしたの?」

「あかりがデートに行くからいじけてるのよ」

 

 

姉の疑問に母が答える。

 

 

「ほら。あかりって今院生だから、毎週土曜日は一日中いないでしょ? 昨日もそうだったし。だからお父さん、今日はあかりと一緒に過ごそうと思ってたらしいの。でも……」

「ヒカルくんに取られちゃったと」

「あのガキが……。二日もあかりを一人占めしやがって……」

 

 

呪詛を吐くかのように呟く父。

そんな父を見て、母と姉ははやれやれと首を振った。

 

 

(ヒカルくんも大変だなぁ)

 

 

 

 

 

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