進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第四話

 

午後に行われる若獅子戦第二戦。

ヒカルの正面に座るプロの村上は周りを囲むギャラリーの数に驚き、また、その面子に恐れ戦いていた。

 

 

(なんでこんなにギャラリーがいるんだ!? しかも緒方九段や倉田四段もいるし!?)

 

 

始まる前から嫌な汗をかき、着ていたスーツの上を机に置く村上。そして村上は、この雰囲気の中でも落ち着いて座っているヒカルを見た。

 

 

(一回戦は倉田四段と当たって勝ち上がってきた……。間違いなく俺より強い倉田四段を……)

 

 

村上は倉田に一回戦の内容を聞いてみたが、はぐらかされてしまっていた。ただ一言、やってみればわかると。

始まる前から緊張しているプロと悠然としている院生。端から見たら、逆だと思うことだろう。

 

 

「「よろしくお願いします」」

 

 

そしてヒカルが再び黒を持ち、対局が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもこの前の若獅子戦、今年はかなり大健闘だったよね!」

 

 

いつも通りの院生研修日。

某ファーストフード店にて院生仲間で昼飯を食べているとき、奈瀬がこの前を思い出すように話題に出す。

ちなみにメンバーはヒカルとあかり、奈瀬、伊角、和谷、本田、フク、そして1組16位にまで登り詰めた内田の8人である。かなりの大所帯であった。

ちなみに1組に上がってきた内田をやはり奈瀬が歓迎し、いつものメンバーに入ってきたという経緯がある。

 

 

「まぁ、一回戦は8人も勝ったしな」

「二回戦も勝って進んだのは伊角さんに本田さん、それに進藤の3人かぁ。……今年は院生側の逆襲もあるんじゃない?」

 

 

チラッとヒカルを見る奈瀬。

その視線に気づき、ハンバーガーを頬張っていたヒカルはにかっと笑った。

 

 

「おぅ。優勝は任せとけ」

「……倉田四段に中押し勝ちしたヤツが言うと、説得力が違うわ」

「ははは。まぁ、進藤だからな。……ただ、オレも本田も簡単に負けるつもりはないから、当たったときはよろしくな」

 

 

呆れたように奈瀬が声を出す。それを聞き、伊角と本田は苦笑しながらも、優勝宣言したヒカルに闘志を燃やした。

 

 

「でも私、この前の対局でかなり強くなった気がする……」

「私も。院生の皆との対局も勉強になるけど、プロとの対局はまた違うんだなって思った」

 

 

また、芦原と村上にそれぞれ負けたあかりと内田も、この前の対局を思い出してやる気を漲らせていた。だが、その一方で意気消沈している者もいる。和谷であった。

 

 

(結局オレは、去年まで院生だった中山さんに勝てなかった。手応えはあるにはあったけど……)

 

 

一緒に食事をしているメンバーを見る。

 

 

(一回戦負けのオレと比べて、伊角さんと本田さんは三回戦まで進んでいる。奈瀬も一回戦を突破しているし、藤崎は一回戦負けだが相手が悪かった。そして何よりもーー)

 

 

進藤ヒカル。

倉田四段と村上初段に、危なげなく中押し勝ち。間違いなく、今年プロになることが予想される少年。

 

 

(プロが……遠い……)

「和谷くん、大丈夫? 調子悪いの?」

「……。いや、何でもねぇ」

 

 

こちらの表情を心配そうに覗いてくるフクにそう答えると、和谷は食べかけのハンバーガーを齧った。

心にもやもやするものを、残しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塔矢家にて。

 

 

「どうだったかね、彼は?」

「……。いや、どうもこうも……」

「名人もお人が悪い。何者なんですか、彼は?」

「……。私もあまり詳しくは知らないが、アキラ相手に指導碁をしたと聞いている」

「えぇっ! アキラ相手にですか!?」

「それはまた……」

「それと私も彼と対局をしたのだが。まぁ、彼が私と渡り合える力を持っているのは確かだ」

「「!?」」

「芦原くんは次、彼と当たるらしいね。頑張りたまえ」

「くくっ。頑張れよ、芦原。また応援に行ってやる」

「……。いや、洒落にならないですよ、ホントに……」

 

 

 

 

 

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