進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第六話

 

迎えた若獅子戦3日目。決勝戦。

例年の決勝はほとんどプロ同士の対決となるため、基本的に院生の応援はない。だが、今年は違う。ヒカルの大躍進により、例年以上の賑わいが会場にあった。

そんなたくさんの院生達に加えて、緒方や倉田といったプロ達に見守られる中、ヒカルと冴木は座って対峙していた。

対局開始前、冴木の方からヒカルに話を振る。

 

 

「……和谷から聞いているよ。院生では負け知らず……どころか指導碁を打ってるって」

「……」

「多くのプロを破って決勝まで来てるんだ、今さら実力を疑うこともない。今日はこちらが胸を借りる気持ちで打たせてもらうよ」

「……こちらこそ。よろしくお願いします」

 

 

プロ対院生なので、もちろん黒をヒカルが持つ。

多くの人達に注目され、闘いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これは大変なことになるかもしれない……!)

 

 

ヒカルと冴木の対局が始まり10分ちょっと。

白の形勢が徐々に悪くなるのを見て、天野は自分がいつになく興奮していることに気づいた。ペンを強く握りしめ、盤上を真剣に見つめる。

 

 

(過去の若獅子戦。院生が優勝することはおろか、決勝に来ることすらなかった。もし彼が優勝したら……歴史が変わるぞ!)

 

 

天野はヒカルと倉田の対局を見たその日の内に、進藤ヒカルについて調べてみた。普通であればどこかの子供大会で優勝しただとか、師匠が誰だとかわかるものである。だが、この少年からはそういった情報が一切出てこなかった。

また、天野は篠田にもそれとなくヒカルのことを聞いてみた。だが、返ってきた答えは曖昧なもの。とりあえず、碁を始めてまだ2年も経ってないと聞いたときは度肝を抜かれたが。

 

 

(若獅子戦で院生初の優勝。それが碁を始めてまだちょっとの天才少年。これは記事になる! ぜひインタビューしなくては!)

 

 

対局終了後のことを考え、張り切る天野。

また、そんな天野と同じように盤面を食い入るように見つめ、内心興奮を隠せていない人物がいた。緒方である。

 

 

(……本当に素晴らしい打ち回しだ。冴木くんも若手のプロの中では芦原と同様、少し抜けている。が、そんな彼がこうも手玉に取られるとはな)

 

 

不利を悟り、果敢に攻め込む白。黒はそれに付き合わず守ればいいだけなのに、さらに反撃して白地を減らしていく。反撃の手が、豪腕で捩じ伏せられていく。

 

 

(恐ろしいヤツだ。冴木くんが言ってた通り、まさに化物だな。……だが、同時に対局してみたくもある。コイツにオレの本気をぶつけてみたくもある)

 

 

緒方はニヤリと笑った。

決勝戦が終わったらコイツに声をかけよう。自宅で一局打たないか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

「おめでとう、ヒカル」

(ーーおめでとうございます、ヒカル!)

「サンキュー」

「でも良かったの? 緒方さんの誘い断って……」

「いや、断るだろ。いきなりオレの家に来いなんてさ。怖いわ」

「ふふっ。何か前もそんなこと話してたね」

「あの人見た目クールなのに、めっちゃしつこいんだよな。前の世界でも佐為のこと結構聞かれたし」

(ーーなんか、やだ)

「でも、それだけヒカルの碁が魅力的だったんじゃないの?」

「それでもいきなり家に来いはないだろ。天野さんなんて、目が点になってたぜ?」

「ヒカルにインタビューしようと思ったら、出鼻をくじかれちゃったんだろうね」

「芦原さんが止めてなかったら危なかったな」

「ふふっ!」

「……でも。これでようやく母さん達に話ができる」

「? 話って?」

「まぁ。話というよりは交渉、かな」

「交渉?」

「若獅子戦優勝したからさ、高いけど、あるものをねだろうと思って」

(ーー?)

 

 

ヒカルは佐為の方を向くと、一つウィンクをした。

 

 

 

 

 

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