進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第六話

 

あかりの母に家に通されたヒカルは、あかりの部屋の前で扉が開くのを待っていた。部屋の前まで来たときに、あかりからストップがかかったのだ。

 

 

『ちょ、ちょっと待ってて!』

 

 

聞こえてきたあかりの声に、ヒカルの動きが止まる。

昨日まで聞いていた前の世界のあかりよりも、若干高い声。だが、懐かしさを感じる声だった。

 

 

(この時代のあかりと向き合うって決めてきたけど、オレもやっぱりもう少し時間が欲しい。……ちょうどいいかもな)

 

 

わかった、とヒカルは呟き、心の準備を改めて始める。

一方、あかりはというとーー

 

 

(あわ、あわわっ。な、何でこの時代のヒカルが!? 何でここに!?)

 

 

とてもテンパっていた。

母からの言葉に変な声を出したあかりだったが、誰かが階段を上がってくる足音を聞いて急いでドアを閉めた。ついでに鍵を掛ける。

チラッと金髪が見えた気がする。だとしたら、その姿は十中八九ヒカルで間違いないだろう。

ちょっと待っててと外の人物に声をかけて、あかりは部屋を見渡した。

 

 

(部屋はきれいに片づいてる。偉いぞ、昨日の私!)

 

 

その次に今朝も使った手鏡を見て、自分の状態を確認する。髪がボサボサなのを見つけ、慌ててあかりは櫛を取り出した。

後は泣きすぎたせいで目が少し腫れていたが、こちらはどうしようもないので諦める。

 

 

(私が好きになったのは前の世界のヒカル……。だけど。でもきっと、昨日までこの世界にいた藤崎あかりも、この世界の進藤ヒカルが好きだったはず)

 

 

何となく、そんな気がしていた。

というよりも、過去の自分だったら間違いなくそうである。幼稚園からの初恋は、結婚して結ばれるまで続いたのだから。

 

 

「だったら、みっともない姿は見せられない。見せたくない、よね」

 

 

好きな人には絶対にーー。

髪を整え終えたあかりは、今度は自分の服を確認する。

 

 

(うっ。ピンクの花柄のパジャマ……。かわいいけど、精神年齢36歳の私にはキツい、かも)

 

 

だが着替えるわけにはいかない。

母には体調不良と伝えてあるのだ。……何となくそれは嘘とバレていそうではあるのだが、今さら自分から嘘でしたとアピールするわけにはいかない。

 

 

(これは布団で隠そう。ベッドから出なければ、バレないよね?)

 

 

結局、あかりは着ている服を見せない方向で動くことにした。

その後も準備を終えたあかりは、部屋の鍵をそっと開ける。そして急ぐようにベッドに入った。

布団で首もとまで隠したあかりは、一つ息を吐く。

 

 

(正直、ヒカルに会って何を話せばいいのかわからない。向き合うって決めたけど、どう動けばいいのかわからない。不安だらけ。でもーー)

「ヒカル? 入って大丈夫だよ?」

 

 

あかりの声が室内に響き、扉がガチャっと開かれる。

過去に戻った二人は、こうして邂逅することになった。

 

 

 

 

 




やっと二人が出会えました。
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