進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第七話

 

あかりから部屋に入る許可をもらったヒカルは扉を開け、あかりの姿を探す。そこで、ベッドの上で布団からちょこんと顔を出しているあかりを見つけた。

 

 

(か、可愛ぇぇっ!)

 

 

一瞬で、ヒカルのテンションが振り切れる。

前の世界の自分が小学生の頃は、もちろん精神も小学生なのでそこまで明確に意識していなかった。しかし精神年齢35歳の今のヒカルにとって、まっすぐにこちらを見てくるあかりはーー

 

 

(えっ、もしかしてあかりって天使なんじゃ……)

 

 

まるで親バカである。直前まで考えてたこと、悩んでいたことなど吹き飛び、ヒカルはまじまじとあかりを見つめる。

対してあかりはというとーー

 

 

(ヒカルちっちゃい! 可愛い!)

 

 

ヒカルと同じようなことを考えていた。似た者夫婦、ここにあり。落ち込んでいたことなど忘れたかのように、ヒカルを見つめる。

 

 

(そういえば小学生のときは私の方が身長高かったんだよね)

 

 

中学生のときの下校中に、自分の身長が縮んだと言われたのは良い思い出である。

その後しばらくお互いを見つめ合っていた二人だが、やがて図ったかのように同じタイミングでハッとし、お互い恥ずかしげに目線を逸らした。部屋に甘酸っぱい雰囲気が流れる。

 

 

「あー、えっと、座っていい?」

「う、うん。どうぞ」

 

 

近くのクッションに座るヒカル。

お互いにチラチラと見て、会話のタイミングを掴もうとする。

 

 

(落ち着け、オレ。もしかしたらあかりもオレと同じ状況かもしれないけど、あくまで可能性であって確証はない。焦らずに、本題に行こう)

(そういえば……。ヒカルってば今日学校はどうしたんだろう? 来てくれたのが嬉しくて考えてなかったけど)

 

 

ヒカルは美津子を通してあかりの様子を聞き、もしやの可能性を考えていた。あかりの方はもちろんそんな考えになるわけもなく、純粋にヒカルがここにいる理由を考える。

内容の話しやすさもあり、先に口を開いたのはあかりだった。

 

 

「えっと……。ヒカル、今日学校は?」

「あー。学校は、その……休んだ。あかりが体調崩したって聞いて、心配になって」

「えっ……」

「そんで居ても立ってもいられなくなってさ、来ちった」

「っ!」

 

 

ヒカルの言葉を聞き、あかりは慌てて口元まで布団を覆った。布団で隠したが、心配してくれたことへの嬉しさで自分の口がにんまりとするのを抑えられない。

ちなみに、ヒカルは学校を休んでからあかりの体調のことを知ったので、順番は逆である。だが心配であかりの家まで来たのは事実なので、その部分に関しては言わぬが華だろう。

 

 

「そ、そうなんだ。ありがとね、ヒカル」

「おぅ。それで、あかり。体調は大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫。ヒカルの顔見たからかな。元気になった、かも」

(うっ……)

 

 

あかりの真っ直ぐな言葉とベッドの上からの上目遣いに、今度はヒカルが赤面した。またしても、思わず目を逸らす。

 

 

(何照れてんだよ、オレっ! いや、めちゃくちゃあかりが可愛いんだけどさ! それは置いといて、今はちゃんと話をしないとだろ!)

 

 

コホン、と一つ咳払いをして、ヒカルは再びあかりの方へ視線を向けた。あかりはきょとんとした顔でヒカルを見つめる。

 

 

(単刀直入に、あかりも過去に来た? なんて聞けない。違ったら頭おかしいやつ認定されちまうし、即座に否定されたらめっちゃ凹むだろうし、オレ。だからーー)

「なぁ、あかり?」

 

 

ヒカルはまるで世間話をするかのように。

 

 

「あかりってさ。囲碁って、知ってる?」

 

 

そう、話を切り出した。

 

 

 

 

 

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