進藤ヒカルと藤崎あかりの逆行物語   作:藤嶺芳樹

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第八話

 

ヒカルの質問に、あかりの瞳が揺れる。

もちろん知らないわけがない。あかりが愛した人の、かけがえのないものだ。自分自身も囲碁部に在籍していたし、ヒカルと打つことも多かったため腕前もそれなりに上がったと自負している。

 

 

(ヒカルが囲碁を始めたのは、ヒカルのおじいちゃんの蔵で佐為さんと会ってからだよね? 確か小六の12月。私も一緒に行ったから覚えてる。……もしかして、もうこの時代のヒカルは佐為さんと出会ってる、のかな?)

「……知ってるよ。陣地取りのゲームだよね?」

 

 

あかりの言葉に、ヒカルは一つうなずく。

 

 

「そう、それ。最近オレ、それにハマっててさ」

「そう、なんだ……」

「あぁ。めっちゃおもしろいんだぜ!」

「知ーー」

 

 

知ってるよ、と思わず口に出しそうになり、あかりは慌てて口を閉ざす。

少なくとも、小六のときの自分は囲碁をやっていなかった。話を合わせて過去の流れがおかしくなるのは避けたい、とあかりは考えたのだった。

 

 

「それでさ」

 

 

だがーー

 

 

「もしかしてあかりって……囲碁、打てたりしない?」

「えっーー」

 

 

ヒカルの言葉に、思わずあかりは言葉を詰まらせる。

ヒカルの方をまじまじと見つめ、そしてヒカルの瞳があまりに真剣味を帯びていることに気づいた。

 

 

「いや、違ったらあれなんだけど」

「……」

「何となくそんな気がしてさ。どう?」

「……」

 

 

ヒカルの問いに、あかりはすぐに答えることができない。

 

 

(打てる、って正直に答えていいのかな? それともやっぱり誤魔化して、前と同じようにした方がいいの?)

(……。当時小六のあかりは、石の逃げ方だって知らなかったはずだ。なのに打てないって即答できないなら……やっぱり、そっちの可能性が高いってことなのか? ……。ホントに? そんな奇跡みたいなことがあるのか?)

 

 

考え込むあかりに、ヒカルはじっと答えを待つ。ただ、ヒカルの内心は期待で溢れ、徐々に鼓動が速くなっていた。

そんなヒカルの様子に気づくこともなく、あかりはさらに思考を巡らせる。

 

 

(でも、ヒカルの聞き方。……まるで、私が囲碁を打てることを確信しているようだった。昨日までの私はもちろん打てないし、囲碁ができるイメージなんてないはずなのに。たまたま今日から、私の中身が替わったから打てるようになった、だけ、で……)

 

 

そこまで考えたとき、あかりにある一つの可能性が浮かんだ。それは、自分にとってあまりに都合の良い可能性。この世界に来てから初めて感じる、プラスの可能性。

そう考えると、ヒカルの向けてくる真剣な眼差しにもそういう意味があるのではないか。

 

 

(そ、そんなことってあるの? ……でも。でも、私が囲碁を打てることを知ってる人なんて、前の世界の人じゃなきゃわからないはず)

「ね、ねぇ、ヒカル?」

 

 

先ほどのヒカルの質問への返答など忘れて。

あかりはヒカルに震える声で尋ねた。

 

 

「ヒカルは、いつから、囲碁、やってるの?」

 

 

途切れ途切れの言葉。あかりはドキドキする胸を押さえ、答えを待つ。

それを聞いたヒカルは考えるような素振りをしーー

 

 

「千年」

 

 

右手でサムズアップをした。

 

 

「っ!?」

「嘘。23年くらーー」

「あなたっ!」

 

 

ベッドから抜け出し、あかりはヒカルへと飛び付くように抱きついた。座ったままで、なおかつ現状ヒカルの方が身長が低いが、そこは男を見せて飛び込んできたあかりを支える。

二度と会えないと思っていた人との再会。涙を流し、お互いに力強く抱きしめ合った。もう離さないぞ、とばかりに強く、強く。

しばらくその状態が続き、ヒカルはもう一度あかりに質問した。

 

 

「なぁ、あかり?」

「……何?」

「あかりって、囲碁打てる?」

「……打てるよ。だって、あなたが教えてくれたんじゃない」

 

 

あかりは涙を浮かべながら、ヒカルに笑ってそう答えた。

 

 

 

 

 




ようやくスタートラインまできました。
プロットもなして書き始めてるんでおかしなところがあるかもしれませんが、そのときはぜひ教えて下さい。
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