ゾイド Wild flowers~風と雲と冒険と~第二期   作:尾久出麒次郎

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プロローグ

 プロローグ

 

 ガリン共和国を脱出し、ムダルラ共和国の都市ルクスに到着して数時間。

 ヘルガは今、近郊のモーテルでカミルと一緒にセミダブルベッドの上で身を寄せ合って寝ていた。

 ヘルガは一眠りして目が覚めて頭が冴えてくると、徐々に自分が今とんでもない状況になってることを自覚して顔が赤くなり、頭から水蒸気が噴き出しそうだった。

 今はグリーンのネグリジェ姿でカミルと添い寝していたが、ソーア山の時は裸だったからどう考えても一線を越えてもおかしくなかった。

 やだぁ……こんなの絶対イヴァーナに見せられない……ああでも、この時がずっと続いて欲しい。

 今自分はイケないことをしてるという背徳感を感じながらも、ありのままの自分に恋心を寄せ、そばにいると約束してくれたカミルがいるという幸せを噛み締めながら冷静に振り返る。

 

 ルクスに到着したのは朝九時を回った時間帯でヘルガとカミルも昨日から寝ておらず近郊の駐機場でリリアから降りると、疲労困憊だった。

 昨日はガリン共和国の遺跡調査中にテラガイストに襲撃されたうえに首都でクーデターが勃発、脱出には成功したがヘルガを守る三獣士と離れ離れになってしまったのだ。

 カミルと約束を交わしてアーカディア王国を目指す旅が始まり、ルクスに到着すると近くのメルヴィルコーヒーで朝食を買い、モーテルにチェックインしたのはよかったがセミダブルとはいえベッドが一つしかなかった。

 その時は一時的に眠気が覚めて、気まずい空気が流れてカミルは頬を赤らめていた。

「お金も十分とは言えないし、寧ろ二人でこの出費なら安いと思う……食べたら交代でシャワー浴びて一眠りしようヘルガ」

「う、うん……そうだよね、食べてシャワー浴びて寝て……起きたら洗濯もしなきゃね」

 ヘルガも頬を赤らめて思わずソーア山の時を思い出しながら、メルヴィルコーヒーで買ったサンドイッチを食べてホットコーヒーを飲んで交代でシャワーを浴びると、ヘルガはまるで濡れ場に入るみたいとドキドキしながら布団を捲る。

「カ……カミル君、隣……入るね」

「う、うん……一眠りしたら町で何か食べよう」

 そして一緒のベッドに入るとお互いの温もりと安心感からあっという間に寝てしまったのだ。

 

 そして目が覚めて今に至る。カミル君って本当に春のお日様みたい温かいな、一緒に寝るのってこんなに安心するんだと温もりに身を委ねようとするとカミルは起きていた。

「ヘルガ……もしかして起きてる?」

「うん……起こしちゃった?」

「ううん、今起きたところ」

 カミルは背中を向けたまま首を横に振ると、沈黙した時間が流れる。

 ヘルガは一緒に過ごしたソーア山の夜を思い出す。

「……なんか、思い出すよね……一緒に星空を見上げて、一緒の寝袋(シュラフ)に入って……あの時は一線を越えちゃうかなぁ……なんてね!」

 ヘルガは思わず悪戯っぽく微笑みながらなってカミル背を向けると、カミルの声が急に艶っぽくなる。

「ヘルガ、僕たちはもう越えてちゃってるよ」

「えっ? ひゃっ! ……カ、カミル君?」

 カミルに抱きつかれて思わず黄色い声を上げて困惑すると、耳元で甘く囁いた。

「辺境の国に住む僕と、異国のお姫様の君がこうして一緒にベッドにいる時点でね」

「カ、カミル君?」

 ヘルガ抱きつかれたまま振り向くと、ワイルドで艶やかな表情と眼差しは美少年から男の顔に変わろうとしてる。ヘルガも頬を赤くしながら心臓の鼓動が徐々に速くなるが、不思議と心地好くてカミル君とならどこまでも行っていいと確信した。

「カミル君、また……二人だけの秘密……作っちゃう?」

「うん、これからも……二人だけの秘密を沢山作ろう」

「そうね……それが私たちの、宝物になるわね」

 ヘルガは心臓で加熱された血液が全身に循環して熱くなり、お互いの吐息が重なってやがて唇を重ねる瞬間に目が覚めた。

 

「……夢?」

 目が覚めると見えるのはモーテルの天井。ヘルガは上体を起こして今の夢を鮮明に思い出すと、次の瞬間には恥ずかしくて顔が真っ赤になって水蒸気が噴き出しそうになる。

 やだぁぁぁぁぁっ!! 私ったらなんてやらしいこと考えてるのよ! 普通の女の子ってこんなこと考えちゃうのかな? 変かな? 私変かな? ああでもカミル君ならいいかも?

「んんん……ヘルガ……」

 カミルの微かな寝言にヘルガは我に返ってハッとした。

「星が……綺麗……」

 すぐ傍で眠るカミルに目をやると恥ずかしがってるのが馬鹿らしく感じ、やめて左手で頬杖ついて顔を近づけて微笑む。

「ふふふふ……可愛い寝顔、どんな夢見てるのかな?」

 ヘルガ右人差し指の先でそっと眠ってるカミルの頬をちょんちゃんと触れる。

 悪戯心をくすぐる無防備な寝顔がとても愛らしい。

 ライガーゼロに乗って猟銃でカモを獲り、怖いゴジュラスと対峙しても引かず、必ず会いに行くと約束して本当に会いに来てくれたカミル君。自然とヘルガの視線が、カミルの唇に目が行くと(よこしま)な出来心が芽生える。

「カミル君、そんな可愛い寝顔で眠ってると……君の唇、盗んじゃうよ」

 ヘルガはドキドキさせながら柔らかい唇をそっと近づける、近づけば近づくほど心臓の鼓動が速まって行く。

 そしてそっと唇を盗もうとした瞬間、オメガがキュウと鳴いた。

 ヘルガは心臓が飛び出しそうな程、ドキッとさせて振り向くとオメガがジッと見つめながら心配した様子で近づいてくる。

「オメガ……もしかして起きてた?」

 オメガはキュウキュウと鳴きながら首を縦に振る、悪気はなさそうだ。

 ヘルガは白くて細い人差し指を唇に当てて悪戯っぽくウィンクする。

「ごめんねオメガ……カミル君には黙っててね」

 オメガは首を傾げると、カミルが起きてきた。

「う……う~ん……おはようヘルガ」

「おはようカミル君、今何時かな……」

 部屋の壁に掛けられてる時計を見ると、午後八時だった。

 時間がわかった瞬間、急速に空腹感が襲ってきて二人同時に腹の虫が鳴った。

 一瞬だけ、気まずい空気が流れるとカミルは微笑む。

「……着替えて何か食べようか」 

「うん、お昼の分も食べよう!」

 ヘルガはベッドから足を下ろすと、立ち上がって着替えを取った。

 

 解説

 

 ムダルラ共和国

 北エウロペ南部のテルダロス海に面した国、北にガリン共和国、東にバンゴラ共和国と面している人口は約二〇〇〇万人。地球移民のヒスパニック系の子孫が多く住むため公用語はヒスパニック語(地球のスペイン語)だが共通言語(Zinglish)も通じる、東の国境はバンゴラから逃れてきた人で溢れており、難民キャンプからテロリストや犯罪者が流れてきており、そこから各地の麻薬汚染や治安悪化が問題となっている。

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