ゾイド Wild flowers~風と雲と冒険と~第二期   作:尾久出麒次郎

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第一三話、その2

 フジワラに連れられて繁華街にある酒場で彼は黒ビール、カミルとヘルガは野菜ジュースを注文するとフジワラは単刀直入に訊いた。

「お二人さん、旅の者だよな? ゾイドは何に乗ってる?」

「……僕はライガーゼロでヘルガはケーニッヒウルフに乗ってます」

 カミルは躊躇う口調で言うと、フジワラは驚いた表情を見せる。

「嘘を言ってる様子はないな、どこか目指してるのか?」

「はい、アーカディア王国を目指して旅をしています」

 カミルは慎重に言葉を選んで頷くとフジワラは話しを持ちかける。

「そうかカミル、ヘルガ、旅には路銀――つまり金がいるよな? ゾイドの燃料に各種装備の弾薬、整備費用に旅に必要な食料に護身用の武器や弾薬、日用品もな」

「はい私も訪れた国や町で単発や短期で仕事を見つけながら旅をしています。それこそ農園の収穫手伝いから野良ゾイドの駆除まで色々やってきました」

 ヘルガは頷いて言う。カミルも野良ゾイドの駆除――実はスリーパーだったが、仕事したことはある。だがヘルガの場合は三人の従者――三獣士と一緒だったが今は違う、三獣士とはぐれてしまった以上危険は可能な限り回避させたい。

 フジワラは微笑み、仕事に誘ってくる。

「ほう、それなら話しは早いな。明日の午後この町で運送会社をしてる『タルタル運送』が東の隣国バンゴラ国境の難民キャンプに水、食料、医療物資等の支援物資を運ぶんだ、道中にはそれを狙う盗賊やゲリラが潜む地域を通る……詳しくは明日説明するが、一機でも多くの護衛してくれるゾイドが必要だ、やってくれるか?」

「……はい、やります」

 カミルは頷くとフジワラは「決まりだな」と言って席を立った。

「明日の朝八時、迎えに来るから泊まってるモーテルを教えてくれ」

 カミルはヘルガと泊まってるモーテルを教え、Ziフォンで地図のデータを送ると今日のところは解散してモーテルに戻った。

 

 モーテルに戻ると交代でシャワーを浴びて明日に備えて寝る準備する、あまり眠れないかもしれないが眠らないとゾイドの操縦に支障をきたす、カミルは布団に入って隣にヘルガが横になったことを確認すると部屋の電気を消す。

「おやすみヘルガ」

「おやすみなさい」

 ヘルガと一緒にベッドで横になるがやはり眠れない、眠ってるかもしれないヘルガを起こさないようできるだけ体を動かさないようにしてると時間の流れが遅く感じる。

 どれくらい時間が経ったのかわからない、まだ眠れる様子もないなと思わず静かに溜め息吐くとヘルガは静かな声で囁いてきた。

「カミル君、まだ起きてる?」

「ヘルガも眠れないの?」

「うん、眠れない……ハロルドたち大丈夫かな?」

「きっと大丈夫だよ、必ず追い付くって約束してくれたから、僕たちもアーカディアに辿り着かなきゃ……ヘルガ、この前君のお祖父さんが亡くなったんだよね? お葬式とか参列しなくてよかったの?」

「本当は参列したかったけど……やらなきゃいけないことがあったから」

「……ヘルガのお祖父さんって、どんな人だったの」

「優しい人だったわ。私が父の愛人の子でも分け隔てなく接してくれたし、よく庇ってくれた……私よりも幼い頃にアーカディアを救うために冒険したこともよく聞かされたわ」

 それならカミルも本で読んだことがある、アトレー前国王がまだ一二歳のお気楽王子と呼ばれていた頃、ファントム騎士団と名乗る武装勢力がクーデターを起こしてアーカディア城とアーカナを占拠したという。

 首謀者は当時の国王の双子の弟だったという。

 それを元にしてアーカディアに眠る古代の遺産――時空転送装置、つまりタイムマシンを使って時空を超えて様々な時代の英雄(バン・フライハイトもその中の一人だ)とその仲間たちと冒険した「レジェンド・オブ・アーカディア」という小説だ。

「それなら僕も本で読んだことがあるよ……大分どころか、かなりフィクションだったけど凄く面白かったのを覚えてるよ」

「ふふふっ……知ってる、私も読んだわ。でもお祖父様は一度亡くなる直前のバン・フライハイトと会ったこともないはずなのにウィンドコロニーを訪問したら、初対面なのにまるで再会したかのように抱き合ったって」

「そうか、会ってみたかったな……お祖父さんの話し、もっと聞かせてくれる?」

「うん、お祖父様はね――」

 カミルはヘルガの話しに耳を傾けてる、そうしてる間に目蓋が重くなりやがて夢の中に入って眠ってしまった。

 

 翌朝、カミルは覚悟を決めた表情で一人、モーテルを出ると正面玄関前でフジワラが腕を組んで待っていた。

「おはようカミル……連れの王女様はどうした? 生理か?」

「いいえ、危険が大きいので一人で留守番してるように言いました」

 カミルは首を横に振ると、フジワラは怪訝な目で見つめたが詮索することはなかった。

「留守番ね……まぁ仕方ない、これから会社に案内するよ」

「はい」

 カミルは頷いてフジワラの後についていく。

 

 一五分前、モーテルの部屋でカミルはヘルガに部屋で待ってるように言った。

「どういうことなのカミル君!? 一人で留守番しろなんて!」

 ヘルガは当然納得するわけがない、それはわかってる。

「ヘルガ、今は君を守ってくれる三獣士がいない、僕一人で君を守り切れるかどうかもわからないんだ」

「自分の身くらい自分で守るわ! ハロルドやヨハンから銃の扱い方も教わってるから!」

 ヘルガの言う通りだ、カンカー遺跡でアサルトライフルのフルオート射撃もこなしていたから問題ない、だけど……彼女は王女だ。その綺麗な手を真っ赤な血で汚すわけにはいかない。

「……そのハロルドさんやヨハンさん、イヴァーナさんもいない、それに約束したんだ、必ず生きてアーカディア王国に連れて行くって、だから君を危険に晒すことなんてできない」

「カミル君……わかったわ――」

 ヘルガは何か言いたいという表情で見つめたが、断腸の思いで頷いた表情だった。

「――オメガの傍を離れないわ」

「ありがとう、必ず帰ってくるから……オメガ、ヘルガのことお願いね」

 カミルは安堵してオメガにも言うとオメガはキュウと鳴いて頷いた。

 

 フジワラに連れられてきた場所は近郊のゾイド駐機場と隣接してるタルタル運送株式会社で、敷地に入ると荷物の積み降ろし作業中の輸送ゾイドに混じって様々な戦闘ゾイドが待機していて、特に目を引いたのはガイロス帝国製のチーター型高速機動ゾイド――ライトニングサイクスだ。

 ライガーゼロのシルヴィアやハロルドのシールドライガーより一回り小さく、コマンドウルフよりは大きい機体で黒くスマートなボディに、背中のスタビライザー付きの大型砲塔とブースターが一体化したユニットを装備していた。

 カミルは初めて見るゾイドを思わず見上げるとフジワラは自慢げに微笑む。

「ライトニングサイクスを見るのは初めてか?」

「実際に見るのは」

「クリスって名前だ、スリムでいい女だろう?」

 フジワラは親指で指して自分の女を自慢するような口調だった。

 左目下の部分に「CHRIS」と小さくペイントされていて泣きぼくろみたいだった。

 敷地面積の割りには小さな事務所に入ると応接室に案内され、フジワラと二人で待ってると褐色の肌に四〇代半ばくらいの恰幅のいい女性が入ってきた。

「お待たせフジワラ、そして初めましての子もいるね」

「カミル・トレンメルです、アーカディア王国を目指して旅をしてます」

「あたしはマティルデ・マルティネス、この会社の社長夫人兼グスタフ乗りよ」

 お互いに自己紹介するとフジワラは先を促す。

「早速だが(あね)さん、説明してくれ」

「OK、説明するからそこに座って」

 マルティネス夫人に促されてカミルはソファーに座ると、彼女はZiフォンを取り出すと3D投影プロジェクターアプリを起動させ、テーブル上に立体映像を表示する。

 

 仕事はここから東に六〇キロのバンゴラ国境の難民キャンプに水・食料・医療物資、そして難民キャンプを守るガーディアン・フォースやPMCの軍需物資の輸送だけど、道中には盗賊がいて小型ゾイドや荷台に重機関銃や無反動砲を装備した即席武装車両(テクニカル)が大群で襲ってくるわ。

 

 立体映像にはルクスから難民キャンプまでの道のりが表示され、マルティネス夫人はZiフォンを操作して拡大し、山間部の道のりを表示する。

 

 しかも奴らはこの山間部の道路にIEDや地雷をたんまり仕掛けてあるわ。

 それこそ対人地雷に毛が生えた程度の物から大型ゾイドの足を吹っ飛ばすレベルの大型地雷が仕掛けられてる、踏んだらアウトじゃすまないわ。NGOやPMCが撤去しようとしても盗賊連中が目を光らせてるから進んでないのが現状よ。

 だからゾイドコンボイに地雷探知機を装備した機体を用意してデータリンクで共有させるけど、中には探知機には反応しないIEDもあるから絶対に油断しないでね。

 奴らは難民の、特に飢えや病気に苦しむ小さな子供たちを救うための物資を奪い、テロリストやバンゴラの反政府軍、犯罪組織に横流して私腹を肥やし、自分たちの装備に加えたりしてるわ……だから、彼らの手に缶詰一つも渡してはいけないわ。

 

 マルティネス夫人の最後の一言に重みと怒りを秘めた眼差しを感じた。

「説明は以上よ。出発は一三時三〇分だから一三時までに準備をしてゾイドに乗って会社の駐機場に集合ね」

「という訳だ。それまで腹拵えと準備だ、ここにお前のゾイドも連れてこないとな」

 フジワラはソファーから立ち上がって背伸びすると、一緒に立ち上がったカミルの背中を軽くポンポンと叩いた。

 

 フジワラと一緒に会社の事務所を出てしばらく歩き、遊歩道の丁字路に差し掛かると彼は唐突に訊いてきた。

「なぁ……あのお姫様は一人にして大丈夫なのか?」

「はい、護衛がいますので心配いりません」

「そうか、少なくとも連れてこなくて正解だったかもな」

「えっ!?」

 カミルはフジワラの方に目を向けると、彼の眼差しは殺気に満ちていてカミルは思わずショルダーホルスターのGF45Lに手を伸ばした。その瞬間、周囲から一〇人近くのガタイが良くて柄の悪い奴らが二人を囲むように現れた。

 そしてその中のリーダー格らしき金髪角刈りの男が忌々しげにフジワラを睨む。

「よぉフジワラ、昨日はよくもやってくれたな」

「何のことだ?」

 フジワラは全員拳銃やソードオフ(※銃身とストックを切り落として全長を短くする違法改造)ショットガン、ナイフやラチェットを装備している奴らを前にしても怯むようすもなく、とぼけた言動を見せると、金髪角刈り男は怒りを露にする。

「とぼけんじゃねぇ!! お前が警察にチクったせいで俺の仲間の大半がしょっぴかれたんだぞ!! どう落とし前つける気だ!!」

「お前らが筋の通らねぇことをするからだろ。酒や博打、女と遊ぶ金に困ってるからと言って、お前らが嫌う金持ち連中やそのガキどもに、麻薬やらコカインやらヘロインやらを蔓延させるなんて、人間のすることじゃねぇからな」

 フジワラは平然とした態度で言い放つと、金髪角刈り男は図星で言い返せないのか「ぐぬぬ」とした表情になったかと思った瞬間、返事の変わりに手下たちに叫ぶ。

「う、うるせぇ! テメェらやっち――」

 金髪角刈り男が合図しようとした瞬間、重い銃声が響いて彼は心臓を撃ち抜かれて即死、フジワラが懐からGM44を取り出して正確に金髪角刈り男を撃ち抜いたのだ。

「カミル、容赦するな! ()るぞ!」

「はい!」

 カミルはチンピラたちが怯んだ隙にGF45Lを取り出すとチンピラたちが怒号を上げて襲いかかる。カミルは向かってくる奴に手近な奴に狙いを定める、こっちは拳銃を持ってるのにも関わらずラチェットを振り上げて襲いかかってくる。

「頭かち割ってやらぁああああっ!!」

 目の焦点が合ってないチンピラに向けてカミルは正確にGF45Lの引き金を引いてダブルタップを決める。胴体に二発撃ち込むと苦悶の声を上げて勢いのまま向かってくるので横に跳んでに転がりながら回避。

 レンガで積み上げられたプランターの陰に隠れると、その先にチンピラが至近距離でオープンボルト式のマシンピストルを二挺構えていた。

(はらわた)をミンチにしてぶちまけろやぁっ!!」

 叫ぶ瞬間がそのまま隙になった、カミルはその刹那に照準を合わせて顔面に二発撃ち込んで頭蓋骨を粉砕。後ろに倒れながら中身をぶちまけた。

 カミルは素早くプランターの陰に寄りかかり、周囲を見回すフジワラは走りながら素早くカミルが射殺したチンピラのマシンピストル二挺を拾って両腕を広げ、横に向ける。

 まさか!? カミルは思わず身構えた。

「死にたくなければ頭低くしとけ!!」

 フジワラの言う通りマシンピストルをフルオート掃射! 両手のマシンピストルの反動によるマズルジャンプを利用して次々とチンピラを撃ち抜き、両腕をクロスさせた瞬間に撃ち切るとその場でマシンピストルを捨ててマグナム拳銃に持ち換える。

 カミルはその間に立ち上がり、被弾を免れたチンピラを一人銃撃すると背後にいる敵はフジワラが撃つ抜く。

「二人とも地獄へ道連れだぁぁぁぁぁっ!!」

「!?」

 カミルは虫の息のチンピラが道連れにしようとソードオフショットガンを構えて気付くのが遅れた。

 やられるかぁっ! GF45Lを向けて引き金を引こうとした瞬間、チンピラの脇腹が銃弾に貫かれて即死するとカミルは思わずその方向に目をやり、思わず目を見開いたその名を叫んだ。

「ヘルガ!」

「カミル君、大丈夫!?」

 ヘルガは昨日露店で売っていたマウゼルMP96にホルスターストックを装着して構えていた。買ったのか? カミルは思わず呆気に取られてると、ヘルガは「伏せて!」と叫んでカミルは伏せるとヘルガはMP96をフルオート掃射。

 後ろで拳銃を持っていたチンピラを蜂の巣にして射殺すると、カミルは困惑しながら歩み寄る。

「ヘルガ……どうして」

「……オメガ!」

 返事の代わりにヘルガはオメガを呼ぶと、上空から羽ばたかせながら降りてきてキュウと鳴いた。

「オメガはちゃんと傍にいてくれたわ」

「でもヘルガ、君は――」

「わかってるわ、でも今の私はアーカディアの王女。国を救うのに綺麗事や正論なんか通らないって覚悟してるわ、カミル君だってわかってるはずよ!」

 ヘルガの悲壮な覚悟を秘めた言葉にカミルは祖父の最期の言葉を思い出す。

 そうだよね、僕だってそうだ。祖父を殺した強盗やウルスラを拐った盗賊を銃や刃物で殺し、母子を見殺しにしたことだってある、ヘルガも旅をしていてそうだったのかもしれない。

 カミルは両手を握り締め、重く頷いた。

「うん、わかったよヘルガ……必ず君を、その覚悟から解放してみせるから」

「ありがとうカミル君」

 ヘルガは微笑んで頷くと初めて見るオーガノイドに呆気に取られてるフジワラの所に歩み寄って強く言い放つ。

「フジワラさん、私も行きます!」

「お、おうわかった――」

 フジワラは頷いてオメガを一瞥すると微笑み、周囲を警戒しながらZiフォンを取り出して電話をかけた。

「――(あね)さん俺だ。護衛をもう一人雇えるか?」

 

 解説

 

 マティルデ・マルティネス(45)

 恰幅のいい褐色の女性で五人の子供を育てながらルクスの運送会社「タルタル運送」のグスタフ操縦士兼社長夫人。豪快かつ肝の据わった女性で多少のIEDや盗賊の襲撃にも動じない、かつての時代に伝わる「運び屋の歌」をよく口ずさんでいて社員からは(あね)さんと呼ばれてる。

 搭乗機:グスタフ(タルタル)

 一人称:私 イメージCV:渡辺久美子

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