ゾイド Wild flowers~風と雲と冒険と~第二期   作:尾久出麒次郎

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第一四話、その1

 第一四話、過去との決着

 

 ルクスを出た翌日、山道を進んで日付が変わる前に林の中でテントを設置して寝袋(シュラフ)の中で眠って朝になると、カミルは目を覚ましてZiフォンを見る。

 時間は午前七時過ぎで、欠伸しながら寝袋から出ると隣でヘルガはぐっすり寝てる。

 カミルはヘルガをうっかり起こさないようにブーツを履いてテントから出ると、シルヴィアの背中で寝ていたオメガが降りてきて、甘えるように鳴くとカミルは優しく頭を撫でる。

「おはようオメガ、ヘルガがまだ寝てるから起こさないようにね」

 カミルはそう言って焚き火を起こすと、ルクスで買っておいた数種類の缶詰をホットサンドの具にしてお湯を沸かし、ヘルガが目を覚まして出てくる頃には朝食のホットサンドと紅茶を淹れていた。

「おはよ~カミル君」

「おはようヘルガ、丁度朝御飯できたよ」

「わぁ美味しそう! いただきます!」

 二切れのホットサンドをプレートに載せて渡すと、ヘルガは熱々のホットサンドかぶり付いた。

「んん~美味しい!」

「有り合わせで作った奴だけどね」

 一緒に他愛ないお喋りしながら朝食を食べ終えると、この先四〇キロ西北西にある小さな町――ラマタウンに向かうことにする。

 

 Ziフォンをコックピットに接続してMFDに表示させ、地図アプリのゴーグルマップを起動して目的地をラマタウンに設定する。

 ケーニッヒウルフのリリアとデータリンクで共有してるから、今頃ヘルガの目にも届いてるはずだ。ナビゲーションシステムに伝わってルートを決定し、カミルは自動操縦に切り替える。

 谷底を縫うような街道を控えめの速度で走るからラマタウンまでは約二時間だが、街道を逸れ、山を二つ越えて通れば近道になりそうな所があってヘルガに提案する。

「ヘルガ、近道になりそうなルートがあるけど通ってみる?」

『ああ、このルートね。通ってみようか、通れなかったら戻ればいいし見たところ地雷注意の看板もないわ。SNSでもルクス~ラマタウン間の街道の外れに地雷が埋まってる情報はないわ』

「それじゃあ決まりだね」

 カミルは操縦桿を握って少し動かすと自動操縦が解除され、近道に入る。全く整備されてない手付かずの道だが、シルヴィアは慣れっこらしく苦もなく歩いてカミルは後部カメラで確認すると、リリアもちゃんとついてきてるようだ。

「ヘルガ、そっちは大丈夫?」

『うん、これくらいの道慣れてるから』

 モニター通信越しに頷く。それなら大丈夫そうだと思いながら山を越えて斜面を降り、ゴーグルマップに載ってない山間部の消滅集落跡を通過する。

 シルヴィアが何かを察したのか警戒してるかのように唸る。

「どうしたのシルヴィア、何かいる?」

 カミルは神経を研ぎ澄まして火器の安全装置(マスターアームスイッチ)をSAFEからARMの位置にして解除する。MFDのレーダー画面には表示されていないが、ゾイドは生き物だ。

 レーダーに映らない敵だって簡単に見つけることも珍しくない。良く見ると最近できたような複数の大型トレーラーのタイヤ痕やゾイドの足跡がある、どこかにゾイドが複数隠れてる! そう確信した瞬間、コックピット内に警報が鳴り響く。

 ロックオン警報!? カミルは全身の肌が粟立つの感じた瞬間、シルヴィアが反応して左に跳ぶとカミルは凄まじい左からのGに晒される。今いた空間にビーム砲弾が貫き、後一瞬遅かったら当たっていた。

「前から!?」

 前を見るとヘルディガンナーにステルスバイパー、ソルダットアントと妙に全高を抑えたゾイドがいる。どこからだ!? そう思ってると山の斜面にある出入口から複数のゾイドが出てくる。

「こいつら盗賊か!?」

『カミル君! 後ろからも!』

 ヘルガの言う通りMFDのレーダーを見ると後ろにも数機! 以前見たガリンのカンカー遺跡のように山を堀抜いて作った遺跡を利用してるのだろう。すると一斉に火器を向けて外部スピーカーで呼び掛けてきた。

『ライガーとウルフのパイロットに告ぐ、命が惜しかったら降りて投降しろ!』

 ゾイドを奪うのが目的か? 判断はヘルガが速かった。

『カミル君、全速離脱! デコイを撒いて逃げるわよ!』

「わかった! 走れシルヴィア! 全速離脱だ!」

 カミルは全速力で加速させながらフレアをばら撒く、赤外線ロックオンを避けるためにイオンターボブースターを点火せず逃げる。

 後ろのリリアもマルチディスチャージャーを噴射して包囲網を突破して砲弾やビーム、ロケット弾をかわしながら険しい斜面を駆け上がり、カミルは叫ぶ。

「走れシルヴィア! オメガはシルヴィアの背中に隠れろ!」

 後部カメラのモニターを見るとさすがヘルガとリリアだ、苦もなく斜面を登っている。山を越えるとあとは一気に駆け降りるだけだ! だが後部警戒レーダーに一機、高速で追跡してくる機体があった。

「ヘルガ! 何かが来る!」

『こっちでも捕捉したわ! 速度は……時速三〇〇キロ以上!』

 ヘルガも捕捉したようだ。速い! 何かが追ってくる! カミルは後部カメラで確認するとシルエットが徐々にハッキリしてくると、ヘルガは苦い表情になる。

『ソルダットワスプよ、狙われたら逃げられないわ』

 北エウロペ連合が開発したスズメバチ型ゾイドだ! ソルダットアントの派生型でガイロスやゼネバスのサイカーチス、へリックのダブルソーダのようなゾイドで陸軍航空隊や海兵隊、一部の国の空軍で使用されてるゾイドだ。

 見たところミサイルやロケット弾を装備してる様子もないが、腹部には野良ゾイド捕獲用のポイズンニードルを装備してる。刺されたら一時的とはいえ動けなくなる! せめてフジワラのライトニングサイクスが装備していた頭部の機関砲があれば!

「ヘルガ、リリアのミサイルは?」

『ごめん! この前の戦闘でミサイル使い切っちゃった!』

 ヘルガはモニター越しに両手を合わせて謝る――合掌と呼ばれるものだが絶対絶命だぁぁぁぁぁっ!! 飛行ゾイドを落とすにはミサイルのような誘導兵器や機関砲のような連射の利く火器が必要だ。

『ミサイル一発一発って実は高いのよ!』

 ヘルガの言う通りミサイルの値段はピンからキリまであるが、安い旧式のミサイルでも高い車一台分、最新鋭の携行式ミサイルなら家が買える程で大型の長距離対艦ミサイルなら豪邸レベル、大陸間弾道ミサイルクラスなら大型ゾイド一機分だ!

「わかった、どうするか一緒に考えよう!」

 そう言っても考える時間が数秒しかない! すると前方に一機のトラ型ゾイドが待ち構えていた。ネオゼネバス製の超小型(SS)ゾイドのガンタイガーが砲撃体勢を取っていた。

『そこのライガーとウルフ! 邪魔だからどきなさい!』

 無線通信で呼び掛けてきたのはガンタイガーのパイロットだろう、妙に艶っぽい男の声だった。カミルはシルヴィアを左に回避させて射線から外れると、ガンタイガーはゴフォース社製一〇五ミリスタティックマグナムを発砲。

 砲弾がシルヴィアのすぐ傍を貫き、リリアの後ろに迫っていたソルダットワスプを撃ち抜いて撃墜した。

「凄い……何者だ?」

『さぁ! 逃げるからついてらっしゃい!』

 男はガンタイガーを反転させて走らせる、声は男で間違いないが妙に艶やかで女の喋り方をしていて、ヘルガはお礼を言う。

『あの危ないところありがとうございました』

『どういたしまして……と言いたいところだけどあなたたち……安易に近道しようなんてホンットに危ないことするわね! これからは近道だからと言って道を踏み外さないように! 人生と同じよ! 肝に命じておきなさい!』

「は……はい」

 カミルは頷き、そのままラマタウンに向かうことになった。

 

 解説

 

 ソルダットワスプ

 北エウロペ連合製のスズメバチ型中型汎用飛行ゾイド、主に攻撃・偵察用で兵員輸送コンテナを装着すれば歩兵一個分隊輸送可能で汎用性の高さと生産性や整備性も考慮された設計から「空飛ぶコマンドウルフ」と呼ばれるほど、共和国軍も採用を検討したが政治的な理由で見送られた経緯がある。

 北エウロペ連合諸国は勿論、発展途上国や民間用として非武装型も多く輸出されてライセンス・コピー生産されてベストセラーになったが近年民間型に武装が施されテロリストや盗賊に使用されるという問題も起きている。指揮官用の機体である女王蜂モデルカラリェーヴァや特殊部隊用のウビーイツァも存在する。

 全長10.6メートル 全高4.3メートル 重量30.7トン 最高速度時速405km/h

 武装

 キラーバイトファング

 ヴォルコフ設計局ポイズンニードル或いはスタリコフ設計局二連装ガスト式30mm機関砲(尾の先)

 背部四連装空対地ミサイル及び二連装パルスレーザーガン

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