ゾイド Wild flowers~風と雲と冒険と~第二期   作:尾久出麒次郎

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第一四話、その3

 一時間後、隠し場所はラマタウン近郊にある廃工場の倉庫(多分無断使用)に来ると同時にやってきたゾイドに思わずカミルはヘルガと一緒に「おおっ……」と見上げた。

 頭部に「CHRIS」と小さくペイントされたライトニングサイクスがやってきてコックピットが開き、予感した通りハインツ・ルビン・フジワラが忌々しげな表情で降りてきた。

「まさか……こんな形でまたお前たちと会うとはなぁ……カミル、ヘルガ」

「あらあらお二人さんフジちゃんとお知り合いだったの?」

 ジャベリンは目を丸くしてカミルとヘルガに訊くと、フジワラは溜め息吐く。

「知り合ったのはついこの前だがな……それで? 復讐の準備はできたのか?」

 フジワラの眼差しが覚悟を問うように鋭くなると、ジャベリンも鋭い眼差しで頷く。

「勿論よ、今日のために色々準備したわ。あなたたちはあいつらにお尻フリフリして気を引いてくれるだけでいいの……作戦内容を話すからついてきてちょうだい」

 暗い廃工場の倉庫に入るとZiフォンの3D投影プロジェクターアプリを起動させ、地面に立体映像を表示してジャベリンは説明する。

 

 このラマタウンの東にある遺跡を改装した地下秘密工場には一個中隊規模のゾイドが配備されて回りを巡回してるわ。あなたたちは東の正門から攻撃を仕掛けて気を引いてちょうだい、その間にあたしが一番手薄な南側に時計回りで回り込むの。

 最短ルートは反時計回りだけど、平地で見張らしがいいから目立つわ。だから時計回りのルートは森林地帯は小柄なガンタイガーなら隠れて素早く移動できるのよ。

 南側に到着したらあたしはキャリーから降りて地下工場に単独潜入、一番奥にある部屋にある中央制御室に証拠隠滅のための自爆装置があるから、それを作動させて脱出。

 爆発させて埋めてしまえば作戦終了、触媒やら原液やら廃棄物に構成員もろとも生き埋めにしてやるのよ!

 

 単独潜入なんて大丈夫なのか? カミルは質問する。

「単独潜入って本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ、この日のために何度も潜入――下見して内部構造・人員配置・セキュリティシステムの情報は頭に入れたわ……このパワードスーツで潜入するから見つからない限り大丈夫よ」

 ジャベリンが大きなキャリーケースを開け、取り出して見せたのはブリタニア連邦のヘレフォード・エレクトロニクス社製のパワードスーツだった。

「このパワードスーツを着ていくわ、対NBC機能付きの統合型ヘルメットに光学迷彩付き、赤外線カメラでも使わない限り……見つからないわ」

 自信ありげなジャベリンだがフジワラは両腕を組んで溜め息吐く。

「赤外線カメラだけじゃないぞ、光学迷彩のバッテリーはどれくらい持つ? 銃声や足音、足跡に薬莢は? 姿を消すことはできても、銃やナイフまでは消せないし……万が一見つかったら袋叩きじゃすまない、そもそも今まで見つからなかったからって――」

「弱気なこと言うんじゃねぇぇぇぇっ!!」

 ジャベリンは低い声で怒鳴りながらフジワラに一瞬で踏み込んで股間を鷲掴み!

「ぐぅおぁっ!!」

 フジワラは堪らず苦悶の声を上げ、ジャベリンは握力を込めてギリギリと握り潰すような音がカミルの耳に生々しく響き、フジワラは強烈な苦痛に悶える。

「おおぉぉぉぉぉ……」

「あなた男でしょ? やる前にそんなこと言ってたら勝てる戦いも勝てないわよ!」

 ギリギリと締め上げるとフジワラは首を何度も縦に振る。

「わかったわかった!」

「あとそれと……あたしが死んだら借金チャラになるなんて……く・れ・ぐ・れも考えないことねぇぇぇっ!!」

「ちゃんと一二〇〇エウロペポンド返すからその手を離せ! 痛い痛い痛い!」

 フジワラは必死でジャベリンの手を引き離そうとする、カミルは股間に違和感を感じて寒気を感じながら両手で押さえる。もし自分がこんなことされたらと思うと、震えが止まらない。

 苦悶の表情を浮かべるカミルにヘルガは苦笑しながら気遣う。

「カミル君、大丈夫?」

「うん……あれ男にしかわからないから」

 カミルは表情を歪めたまま頷いた。

 

 ブリーフィングを終えて三〇分後、カミルはシルヴィアのコックピット内にいてモニター通信を繋いだままラマタウンを出て作戦開始ポイントに来るまでの間、緊張感のせいか終始無言でジャベリンと別行動に入るポイントに到着する。

『それじゃあブリーフィング通りここからあたしは別行動に入るわ……あなたたち、くれぐれも無茶をしないようにね! またあとでね~!』

 無線を封止するとジャベリンのキャリーは北北東の方へと走り去っていき、モニター通信で繋いでるヘルガとフジワラの三人だけになると、ハインツはヘルガに訊く。

『ヘルガ、お前ミサイルポッドの中身は残ってるか?』

『いいえ、この前の戦闘で使いきってしまいました』

『そうか、お前は見晴らしの良い場所から狙撃して支援だ。俺が指示した奴を撃て、そして撃ったらすぐに移動してポイントを変えろ。これが終わったらミサイルポッドは売り払ってその金で機関砲かロケットランチャーに買い換えた方がいい』

『はい、わかりました』

 ヘルガは頷く。フジワラの言う通りミサイルは高度な電子機器のおかげで高価になりがちだ、カミルもシルヴィアのショックカノンの弾も残り少ない。小型ゾイドはともかく武装車両相手では威力が過剰だ、カミルは試しに訊いてみる。

「フジワラさん、使うのが一番多い射撃兵装ってどれです?」

『頭部の機関砲だな。もしライガーゼロに付けるなら最低でも一二・七ミリ重機関銃や威力を求めるなら二〇ミリから三〇ミリのリヴォルバーカノンという選択もある、だがその分重量が増えるし性能への影響が大きくなって装弾数も少なくなるしコストも上がる。ライガーゼロにはショックカノンもあるから、俺としては一二・七ミリがおすすめだな……安くて質のいい奴が市場にも多く出回ってる』

 なるほど一二・七ミリか、検討してみようと思った瞬間にMFDのレーダー画面に反応が出てカミルは二人に伝える。

「レーダーコンタクト! 四機!」

『よし行くぞ! カミルは俺について来い!』

 フジワラのクリスが跳び出すとカミルも後に付いていき、シルヴィアを走らせながら叫んだ。

「オメガァァァァッ!!」

 シルヴィアの背中にいたオメガは翼を雄叫びを上げて広げ、青白い光に包まれながら一度上空に上がってシルヴィアと合体し、駆動音が甲高いものになる。

 敵ゾイドはレッドホーン一機にブラックライモス三機で真東から来たから、向こうもこちらの動きを察知したたのだろう。

『ヘルガ! レッドホーンだ! 狙え(Aim)!……撃て(Fire)!』

 フジワラの攻撃の指示と合図をすると同時にレッドホーンは撃ち抜かれて大爆発! 混乱した一瞬で攻撃に出る、クリスの背中のパルスレーザーライフルが火を噴いて先頭のブラックライモスを仕留める。

『カミル! 右の奴を殺れ!』

「はい!」

 カミルは右のブラックライモスに狙いを定めると、混乱してるのか立て直して身構えてるのかわからない! どっちだ!? カミルは残弾が少ないショックカノンの引き金を引く。

 装甲の分厚いブラックライモスを怯ませたが、それで十分だった。

「そこだ!」

 カミルはシルヴィアは跳びかからせて前足で押さえ込み、深々と引き裂いて仕留める。

「次は!?」

 目視とMFDをチェックするが出てこない、どこかに隠れてる可能性もあった。

 

 

 森の中でジャベリン・フィッシャーはガンタイガーのキャリーから降りるとパワードスーツの統合型ヘルメットを被ってチェック。大丈夫、呼吸できる確認してスイッチをいれると、予め体内に投与したナノマシンが網膜投影して各種情報が表示される。

「さてそれじゃあキャリー、あなたはお留守番だからいい子にしてるのよ」

 Ziコンガントレットを操作するとキャリーを南側に待避させ、光学迷彩のスイッチをONにしてたちまちパワードスーツ姿が消える。

 バッテリー問題なし、それじゃあ作戦開始よ! ここから数百メートル先にある遺跡の入り口を目指す状況を知るため、無線機は受信できるようにしてあってカミルの声がヘルメットイヤホンに響く。

『フジワラさん! また出てきました! 今度は八機!』

『数で抑える気だな、だが俺たちは気を引くだけでいい! 殺られるなよ!』

 フジワラの声が聞こえる、恐らく連中もまだ自分のことを見つけてないだろう。

 パワードスーツのアシスト機能でジャンプとダッシュを併用した高速移動で遺跡の南側入り口に到着、侵入する。

『ジャベリン! 聞こえてるならなるべく早く済ませてくれ! こいつら練度が高い!』

 フジワラの声が響く、急いだ方が良さそうだと思いながら音を立てないように腰をくねらせながら早歩きで通路を進むと、警報が鳴り響く化学兵器製造プラントに到着する。

 この遺跡は古代ゾイド人の一種であるカンカー人が山を堀抜いて作った遺跡の一つで内部は鏡面石、蓄電石、発光石を利用してドーム球場のように広くて明るく、ゾイドの格納庫に使えるほどだ。

 

「今すぐ全機出撃だとよ!」「全機出撃!? 相手はたった二機だぞ!」「二機じゃねぇ! 三機だ! 外でライガーゼロとライトニングサイクス、それから遠くから撃ってくる狙撃ゾイドがいるらしい!」「たった三機相手に手こずってるのか?」「ライガーゼロに加えてあの黒い稲妻(シュヴァルツェ・ブリッツ)のフジワラがいるんだ!」

 

 フジワラの名はゾイド乗りたちの間は勿論、裏社会にも名前が知れ渡ってる。

 彼はガイロス帝国陸軍屈指の名門第一装甲師団カール・リヒテン・シュバルツの第四高速斥候中隊出身で退役後はライトニングサイクスを乗り回し、多対一でも有利に立ち回ることから、黒い稲妻として恐れられてる。

 ジャベリンは遺跡が内部見渡せるキャットウォークに続く階段を上がる。

「さて……いつもの道が使えるといいけど」

 キャットウォークを上がると格納庫内にあったゾイドたちは殆ど出払い、残ったのはスペースの半分を使った化学兵器工場だ。

「あいつは……いるかしらね」

 ジャベリンはキャットウォークを渡って階段を降りながら、ヘルメットの側面にあるコントローラーを操作する、ヘルメットのバイザーの一部分が画面となって拡大したり縮小したりする。

 パイプやタンク、機械が並ぶ工場区画の中央に位置して全体が見渡せる工場事務所兼中央制御室を注視するとガラス越しに作業員の中に、異物と言えるほど目立つ男が一人。

「見つけたわよ――」 

 ジャベリンの目が捉えた視線の先には小柄で褐色に銀髪のオールバックに派手なシャツにジャケット、高そうな革靴に悪趣味なアクセサリーに身を包んでいてコーデだけでムダルラ国民の一般的な年収以上になりそうだ。

「――首を洗って待ってなさい……ホアキン・シガンダ!」

 ジャベリンは数年追いかけていた組織の首謀者であるボスの名前を口にする。

 シガンダは組織のナンバー2であるアンダーボスの報告を受けながら目標の工場区画に入る。それを囲むように突撃銃や短機関銃を装備した護衛は勿論、私兵の警備は厳重だ。

 ジャベリンは音を立てないように足早にコンテナに偽装した化学プラントに接近すると、シガンダは悪態を吐く。

「たった二機になに手こずってるんだ!?」

「二機ではなく、三機のようです! 一機が遠くから狙撃支援、もう一機はライトニングサイクス、黒い稲妻(シュヴァルツェ・ブリッツ)がいます!」

「よりにもよってフジワラか……あいつが指揮すると化ける」

 大柄なスーツ姿のアンダーボスの報告を受けると、シガンダは苦虫を噛む潰した表情になる。

 工場区画内内部にも何人かいるのは間違いない、もし見つかったら袋叩きや蜂の巣では済まされないだろう。歩哨も軍隊経験者で占められてるが、やるしかない!

「今日が、あたしの命日かもね」

 ジャベリンは覚悟に満ちた笑みを浮かべた。

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