仮面ライダーを作りたかった転生錬金術師 作:黒幕は忍者だと思ってた
変身の影響か、人を吹き飛ばしコンクリートを砕くほどの爆音を食らっても耳が痛いだけで済んだカイと異なりシンフォギア装者達は耳が聞こえず前後不覚に陥ってるようだ。
『ごめんなさい、反応が消えたわ』
「いえ…………」
二課職員の連絡を聞き、カイはスズドリエコーの飛んでいった方向を睨む。破壊行為なども行われていないらしい。休眠状態に入ったということだろうか?
「人の心の叫びを糧にする以上、行動によっては推測できるかもしれませんね。今の奴は風鳴に「歌うだけのくせに」と言っていたから、歌手に恨みを持っているかもしれません」
となるとまた翼を狙うか、その翼が通っている有名なリディアン音楽院が狙われる可能性がある。
「一応そういった書き込みがネットにないか探してみてください。クマの時は取り込んでたからでしたが、そうでなくても行動に影響が出る可能性もあるので」
『ええ、解ったわ』
二課にサポートを頼んだあと、漸く聴覚が戻ってきたのか耳を済ませる響と立ち上がった翼を見る。
「エコーの反応は消えた。手がかりを探してもらってる………君達は、どうする?」
「はい? えっと……もう一回お願いします!」
「これからどうする? 俺はあのエコーの情報を集めてもらうけど」
「あー………え、解るもんなんですか?」
「なんとも言えない。何せまだ2体目だ………逆に言えば、だからこそ試せる手を何でも試す」
少しでも探す方法を見つけなくてはならない。現実は案外アニメと同じ、戦う力を持った者達は被害が出るまで動けないというのなら、なるべく早くその前兆を掴むしかない。
「………貴方達、どうしてここに?」
と、不意に翼が二人に話しかけてくる。いや、よくよく見ればその視線は響に向いている。睨んでいると言ってもいい。響はたじろぎながらも、ぎこちなく笑みを浮かべる。
「あ、あの。私……今は足手まといかもしれませんけど、一生懸命頑張ります。だから、私と一緒に戦ってください!」
「…………………そうね」
「…………!」
嬉しそうに笑みを浮かべる響。しかし、翼の纏う空気が鋭く研ぎ澄まされたのをカイが感じ取る。
「貴方と私、戦いましょうか」
「え………?」
スッと響に剣を向ける翼。状況が飲み込めない響は困惑し固まっている。
「あ、えっと………そういう意味じゃありません。私は、翼さん達と力を合わせて──」
「解っているわ、そんなこと」
誤解されたと思ったのか、慌てて言い直す響にしかし翼は纏う剣気を衰えさせない。
「だったら、どうして………」
「私が貴方と戦いたいからよ」
「へ?」
「私は貴方を受け入れられない。力を合わせ、ともに戦うことなど風鳴翼が許せるはずがない。貴方もアームドギアを構えなさい。それは常在戦場の意思の体現。貴方が、何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うと言うのなら、胸の覚悟を構えてご覧なさい!」
「か、覚悟とか………そんな、私……アームドギアなんて解りません。わかってないのに構えろなんて、それこそ全然解りません!」
シンフォギアを纏って二日目。そもそもアームドギアなる単語すらしなかった響の叫びに翼は聞く耳も持たない。
「覚悟を持たずに、ノコノコ遊び半分で戰場に立つ貴方が、奏の………奏の何を受け継いでいるというの」
「っ!!」
「笑わせんな、ガキ」
翼の言葉に固まる響を庇うように前に立ったカイ。フルフェイス越しで表情は読めずとも、その声が怒りに満ちているのがわかる。
「死んだ奴から受け継げる者は知識と記憶、それだけだ。死人の想いを代弁したつもりか? 素直に、「私の隣には天羽奏しか立ってほしくない」とそう言え」
「っ!!」
今度は翼が固まる。
「死人を盾に己を正当化し暴力を振るう。俺の大っ嫌いな理屈だ………死人は蘇らない。響に当たるな」
「黙りなさい!」
翼の意識はもはや響には向かず、振り下ろされた刃をサウンドソードで受け止め片手で響に下がるようジェスチャーを送る。
「死ぬ、傷付く、そんな覚悟を美談にするのも嫌いだ。日常に漬かって何が悪い!? 守るべき世界を心にも止めず振るう剣で、何が守れるっていうんだ!」
「っ!」
剣術は幼少期より訓練した翼が上。しかし膂力はシンフォギアよりコンダクターが上。故に互角……
「覚悟なく戰場に立つのは、私や…………奏に対する侮辱だ!」
「誰かを助けれるのに覚悟しなきゃ遊び半分扱いになって、人を守っちゃいけないなら、この世界には誰かを助けちゃいけない人だらけだろうが!」
鍔迫り合いになり、翼を吹き飛ばすカイ。響がアワアワと慌てるも、再び剣を振るい合う二人の間に割って入れない。
「そうだ! 力無き者は、覚悟なき者は誰も助けなければいい。助けるのは、私達防人の努めだ!」
「努めと来たか………助けたいという意思もなく八つ当たりで振るう剣で、一体誰を助けられる。天羽奏は立花響を助けたぞ」
「っ!! だま…………黙れええええええ!!」
翼が剣を振り上げると同時にカイもコンダクターデバイスをサウンドソードに接続する。
〘SOUND SWORD! LAST SONG!!〙
【蒼の一閃】
放たれる超振動の斬撃と蒼き一筋の閃き。まさにぶつかり合う瞬間、斬撃の間に現れる影。
「
弦十郎だ。2つの斬撃を両腕で受け、強く地面を踏みしめた瞬間衝撃がアスファルトをめくりあげながら二人を吹き飛ばす。
「うぁ!!」
「うおおお!?」
アスファルトの欠片や土と一緒に吹き飛ばされた二人は片方は存外可愛らしい悲鳴で尻餅をつき片方はバランスを崩しながら着地する。
水道管まで破壊したのか地面から吹き出した水が雨のように降り注ぐ。
「あ〜あ。こんなにしちまって…………なぁにやってんだお前等。この服も靴も、高かったんだぞ。一体何本の映画が借りられると思ってんだよ」
「え…………は? ええ…………」
生身の人間が行ったとは思えない破壊の跡の中心に立ち、涼し気な弦十郎に困惑するカイ。今の一撃は、どちらも鉄すら切り裂く一撃だった。だというのに弦十郎の腕は僅かな傷のみ。
その身は鉄を超えるというのか。
「らしくないな翼。感情に任せて斬りかかるなんて………っ。お前、泣いて……」
翼に近づき頬を流れる水に気付いた弦十郎が足を止める。その言葉に翼は降り注ぐ水を浴びながら顔を上げた。
「泣いてなんかいません! 涙なんて、流していません。風鳴翼は、その身を剣と鍛えた戦士ですから」
カイは少なくとも敵意が消えたのを確認すると変身を解除する。ベルトが消えバックルだけになったコンダクタードライバーを懐にしまい、ジッと翼を見る。
「翼さん………」
弦十郎に立たされる翼を見ながら響は何か言わなければと言葉を探す。
「あ、あの! 私、自分が駄目駄目なのは解っています。だから、これから一生懸命頑張って、奏さんの代わりになってみせ──あぎゅ!?」
笑みを浮かべそう宣言する響の頭をカイが叩いた。ゴッ! と鈍い音が響き、頬を叩こうと手を振りかぶった翼も思わず固まる。
「それ以上は風鳴翼も八つ当たりじゃなくなる」
「え…………」
その言葉に翼を見ると、頬を伝う二筋の水の流れ。それは決して降り注ぐ水によるものではなかった。
『……………………』
その光景を、街灯の上に佇む一匹の蝶が見つめていた。
翌日。
「言い過ぎた」
カイは自己嫌悪に浸っていた。まだ成人もしていない相手に何をムキになってしまったのか、と。
人の死に、ましてや誰かに責任がない死に対する行き場のない感情を誰かに押し付けるのが気に入らなかったとはいえ、悲しんでいる女の子にあれはないだろう。
「謝って………いや、今は余計こじれるだけだな」
と、そんな考え事をしているとカイの家に荷物が届いた。差出人は不明。
かなり怪しい………。しかし開けぬことには何も始まらない。
「………音楽プレーヤー…………ていうか、これ」
入っていたのは長方形に画面と円を描く操作ボタンのついた様々な色の音楽プレーヤーが複数。メッセージカードには『TO CONDUCTOR HAPPY BIRTHDAY!!』と書かれている。逆では?
カイのコンダクターへの変身を知っている人物からの贈り物。怪しさ倍増、誰からだ?
茶色、青、灰色、紫、白の5色が一つ20個。
多すぎないか? と茶色を取りボタンをなぞるように親指を這わせると、突然ブルブル震えだす。
「うわ!?」
『キィィ!』
思わず放り投げた音楽プレーヤーがカシャカシャと形を変え、ロボットの鳥に変形しカイの周りを飛び回る。残った音楽プレイヤーも勝手に変化を始め青は魚、灰色は狼、紫は蛇、白は蜘蛛へと変形する。全部懐いているかのようにカイに纏わりつく。
「えっと…………」
箱の中をあさると操作方法が書かれた紙が見つかる。
「じゃあちょっと、エコーを探してきてもらえるか?」
その言葉に小型ロボット達は店の外に飛び出した。
『エコーが出現すると察知する』と説明書にあった。これを作ったのは、何者だ?
「後は……〘RIDING DATA〙?」
「………………」
フラフラとした足取りで歩く男子生徒。思い起こすのは昨日の夜。気付いたら道端に倒れていて、家に変えれば怒声。何をしていたか聞いてきたくせに、何かを言おうとしても「言い訳するな」と、「そんなんだから成績が下がるんだ」とギャンギャン喧しく喚き立てる両親。
五月蠅い、五月蝿い五月蝿い!
確かに点数は悪い。だがそれは両親の理想に比べたら、だ。よほどの名門にしない限り医大を合格することはできる。
なのに両親はそれが気に入らない。家の名、ではない。自分達が出来なかったことを子に押し付けているだけだ。
ギャーギャーギャーギャーと、五月蝿い。
「いや〜、今日もビッキーは本当にビッキーだったね」
「事業中に寝るなんて恐れ知らずというか」
「でも、何か疲れているようにも見えました。課題に備えて夜にこっそりナイスな特訓でもしてるのかもしれませんね」
「それで授業の評価下がってたら意味ないっしょ」
あはははは、と笑い声が聞こえる。鬱陶しい。五月蠅い。喧しい!
「うるさいんだよおおおおお!!」
男が倒れ、悲鳴のような不気味な音を立てながらその体から吹き出した黒い瘴気が人と鳥を混ぜ合わせたかのような形を取る。スズドリエコーだ。
「え、なになに? コスプレ」
「なんかの撮影?」
と、周りの人々は興味深そうにその姿を見つめていたが、スズドリエコーがエコーノイズを出現させすぐに叫喚に包まれる。
「静かにしろ! キイィィィィェェェェンッ!!」
通行人が耳を押さえ蹲るほどの騒音。窓ガラスや街灯がパリンとひび割れガラス片が降り注ぐ。人々が蹲る中、スズドリエコーが睨むはリディアン女学院の生徒3人。
「ちょ、なになに………なんなのあれ」
「こっちを、見ていません?」
「な、なんなのよこれ………アニメや特撮じゃないんだから…………」
怯える少女達を前に、何処か喜悦を感じさせるスズドリエコー。咆哮を放とうと胸を膨らませ………
「おおらああああ!!」
突如現れたライダーがバイクの前輪を浮かせながら突っ込み吹き飛ばす。コンダクターに変身したカイだ。
「大丈夫か? 立てるなら走れ!」
「っ! ユ、ユミ、いくよ!」
「邪魔を!」
「おっと」
後を追おうとしたスズドリエコーだったがトリプレーヤーが襲いかかり火花をちらしながらバランスを崩す。透かさずカイが足を掴み地面に叩きつけた。
「ぐぅ!?」
悪いがここで倒させてもらう」
「クケェェェェェェンッ!!」
「とっ!!」
指向性のある音波攻撃。であるなら避けるのは容易い。横に飛び回避し、斬りかかる。飛ぼうとすればトリプレーヤーが羽に攻撃しバランスを崩す。
「ぐ、ぎ…………キエエエエエ!!」
「っ!?」
指向性のない全方位への方向。拡散したからか、耳が聞こえなくなるほどではないが体の軽いトリプレーヤー達が吹き飛ばされ、その隙に飛び上がるスズドリエコー。
「今度は逃がすか」
〘GUN FORM!! SOUND GUN!!!〙
サウンドソードの柄と中心が折れ曲がり銃の形を取り、それを見たスズドリエコーは慌てて逃げ出す。カイはアクセルを回し追い掛ける。
「っ!!」
逃げられないと悟り振り返るスズドリエコー。カイはコンダクターデバイスをサウンドガンに接続した。
〘SOUND GUN! LAST SONG!!〙
「キエエエエエエエエエエエ!!」
「────!!」
放たれる最大音量の咆哮と、音波の砲弾。空中でぶつかり合い共振したかのように大気が震える。
「お前の叫びはただの八つ当たりだろ? 解るんだよ、見てきたからな。そんな奴の叫びなんて、世界に届けてたまるかよ!」
「ぅ!!」
拮抗の末、押し勝ったのはカイの放った一撃。
「ぐああああああ!!」
音の弾丸に貫かれたスズドリエコーは地面に落ち、爆発した。
『ふん。なるほど、少しはやるようだな』
一羽の雀が加えてきたSDRカードを雀ごと握りしめ吸収する鳥人型のスクリームは屋上からカイを見下ろしていた。
『精々成長しろ。俺が『完成』に到れるために……』
感想待ってます