「葵兄さん....!」
「一歌....奇遇だな」
学校が終わり、俺は宮益坂女子学園に来ていた。そして、門の近くで雫を待っていると
雫の妹の幼馴染で、俺のことを兄と慕ってくれている星乃 一歌と会った。
「....雫先輩を待ってるんですか?」
「あぁ。あの天然方向音痴、一人にすると心配だからな」
「....葵兄さん、意外と容赦ないですね」
一歌は呆れた様子でそう言ってきた。
「事実だからな。頼むから雫に言うなよ? 聞かれて泣かれたらどうしたら良いかわからん」
「....どうしましょう?」
一歌は顎に手を当てながら何か考えるような表情をしていた。
「そこは考えないで欲しいんだが....」
「冗談です。雫先輩には言いませんよ。でもその代わり....今度相談に乗ってくれませんか?」
「相談?」
「はい。作詞と....穂波達のことで」
一歌はどこか寂しそうな表情でそう言ってきた。
「....わかった。また都合のいい時に連絡しろ」
「ありがとう、葵兄さん」
「気にすんな。可愛い妹分の頼みだ。できる限りのことはしてやる」
そう言って、俺は左手で一歌の頭を撫でた。
「....ありがとう、葵兄さん。やっぱり、葵兄さんは優しいね」
「普通だ普通。それよりも、早く帰んな。さっきからお前の後ろに般若がいるからな....」
「般若....?」
そう言いながら一歌が後ろ振り向くと、木の陰からこちらを笑顔で見ている雫がいた。だが、
その笑顔は普段のような笑顔ではなく、明らかに怒っている時の笑顔だった。
「....な」
「....仕方ないですね。今日はこの後バイトがあるので先に行きます。じゃあ葵兄さん、また」
一歌はそう言うと、バイト先の方に走っていった。そして一歌がいなくなると雫がこっちに
歩いてきた。
「....あおちゃん、一歌ちゃんと随分楽しそうだったけど何話してたの?」
雫は笑顔でそう聞いてきたのだが、声のトーンからして明らかに怒っているようだった。
「別に....世間話してただけだ。てか何でそんなに怒ってんだよ....」
「別に怒ってないわ」
「(嘘つけ....)」
俺は心の中でそう思っていたが、言えばさらに怒ると思ったので何も言わなかった。そして、
俺は何も言わず雫にヘルメットを渡した。すると雫はバイクの後ろに乗り腰に手をまわして
きたのだが、雫は手にかなりの力を込めていた。
「....雫、痛いんだが」
「別に....普通の力よ」
「....はぁ。取り敢えずレッスン場に向かうぞ」
そう言って、俺は雫が所属するグループ、Cheerful*Daysのレッスン場に向かってバイクを
走らせた。