器用貧乏なシンガーソングライター   作:アイリエッタ・ゼロス

6 / 16
友人の友人

「あ、遅いよ葵!」

「15分前に着いたんだから勘弁しろよ....」

 瑞希からの返信があった数日後の日曜日、俺は瑞希の荷物持ちに呼ばれて渋谷に来ていた。

 

「で、何買いに行くんだ? 服か?」

「それもそうだけど、本命はこれ!」

 そう言いながら、瑞希はスマホの画面を見せてきた。瑞希のスマホの画面には可愛らしい

 巨大なパフェが映っていた。

 

「それ、確か最近できた店のパフェか」

「そ! めっちゃ可愛いよね~!」

「でもそのパフェ、一日限定30とかってリスナーが言ってた気がするんだが....」

「だから急がなきゃダメなの!」

 そう言いながら、瑞希は携帯で誰かにLINEを送っていた。

 

「ホントはもう一人来るはずなんだけど....寝坊してるなこれ」

「もう一人?」

「うん。ボクの知り合いのイラストレーター。その子もパフェ食べたいって言ってたから

 食べに行くついでに葵と会ってもらってサムネの話してもらおうと思ってさ」

「それ、本人には言ってるのか?」

「言ったよ。だから遅れないようにって言ったんだけどね~....」

「....っ! 瑞希!」

 そう話していると、背後から瑞希の名前を呼ぶ声が聞こえた。背後を見ると、そこには肩で

 息をしている茶髪のショートカットの少女がいた。その茶髪の少女には俺は見覚えがあった。

 

「(....どっかで会ったことが)」

「あ! 遅いよ絵名~」

「はぁ、はぁ....ア、アラームが止まってた....」

 そう言いながら、顔を上げた少女を見て俺は思い出した。

 

「あ....」

「どしたの葵?」

「どっかで見覚えあると思ったら....お前、うちの学校の輩に絡まれてた....」

「っ!? アンタはあの時の!」

 茶髪の少女は俺の顔を見て思い出したかのようにそう叫んだ。

 

「あれ? 二人とも知り合いだったの?」

「知り合いっていうかなんというか....」

「まぁ知り合いと言われれば知り合いの様な....」

「ふ~ん。まぁそれは後で聞くとして、急いで店の方に向かうよ!」

 そう言うと、瑞希は店の方に向かって歩き出した。それに続き、俺と茶髪の少女も瑞希の

 後を追った。

 

 ~~~~

 

「やっぱ結構並んでるな....」

「流石は限定パフェね....」

「並んでるのも女の人ばかりだね~。葵、めっちゃ目立つじゃん」

「うるせぇ....」

 そう言いながらしばらく並んでいると、ようやく店に入ることができた。そして、例のパフェを

 注文すると瑞希がこう言ってきた。

 

「そういえば、今のうちに二人とも自己紹介しといたら? お互いの事全然知らないし」

「そういやそうだな....月夜 葵。Blue moonっていう名前で配信者をやってる。一応神高の

 二年だ。月夜でも葵でも呼びやすい方で呼んでくれ」

「一緒の高校だったんだ....私は東雲 絵名。夜間定時の神高の二年よ。あの時はありがと」

「東雲....」

「(どっかで聞いたことがあるような名前だな....)」

「絵名で良いわよ。私も葵って呼ばせてもらうわね」

「あぁ」

 俺は絵名の名前にどこか聞き覚えを感じながらそう返した。すると....

 

「葵、今のうちにあれ渡しといたら?」

 瑞希はそんなことを言ってきた。

 

「あぁ、それもそうだな....絵名、これが依頼したいものだ」

 そう言って俺は絵名の前にUSBメモリを置いた。

 

「曲の動画が入ってる。完成したら、そうだな....」

「データで送る?」

「そうするか。じゃあ俺の連絡先に送ってくれ」

「OK。じゃあ連絡先交換しておいた方がいいわね。はい」

「ありがとな。....じゃあ完成したら送ってくれ」

 俺は絵名の連絡先を登録してそう言った。

 

「了解」

「あと、報酬の方はどうする?」

「報酬?」

「一応サムネ描いてもらうからな。その分の礼はしときたいんだが....」

「別にそんなの気にしないでいいけど....」

「じゃあ今日の代金払ってもらったら?」

 すると瑞希がそう言ってきた。

 

「んー、じゃあそれで」

「....わかった」

「お待たせしました。こちらグランドツリーパフェです」

 そう話していると、注文していたパフェが来た。

 

「お、来た来た!」

「デッケェ....」

「うん、良い感じに映えそう」

 そう言って、二人はパフェの写真を撮り始めた。

 

「アイス溶ける前に食ってくれよ....溶け切ったあまり渡されるのはごめんだぞ」

「わかってるって」

「....」

 そう言いながらも、俺も一枚だけパフェの写真を撮った。そして二人がパフェを食べ始めた時、

 絵名は俺の顔をじっと見てきた。

 

「....何だ絵名。顔に何かついてるか?」

「いや....そのさ、その目のそれって火傷痕?」

「これか? そうだが、それがどうかしたか?」

「いや、痛くないの?」

「まぁ、もう痕できて三年か四年経つからな。痛みとかは無いな。てか、火傷あるの右目

 だけじゃないしな」

「そうなの?」

「あぁ。右脚に横腹、首元と右腕に右の口周りも火傷痕あるぞ」

「葵....話して良かったの?」

 俺がそう言うと、瑞希はそう聞いてきた。

 

「お前の友達だから別に大丈夫だろ。てか別に話しちゃダメってわけじゃねぇぞ。普通に

 聞かれたら答えるぞ」

「よく言うよ....同級生に聞かれた時に答えてなかったじゃん」

「答える必要が無いからな。どう見てもこっちをおちょくってくる気の奴に」

「ま、それは確かに」

「だから首隠してるんだ....」

「ま、そういう事だ。マスクしてるのもそのためだ。あと配信もな」

「何か、ごめん....」

 絵名はそう言って申し訳なさそうに謝って来た。

 

「気にすんな。特に気にしてないからな。それよりも、早く食えよ」

 そう言うと、二人は山のようなパフェを食べ進めた。

 

 ~30分後~

 

「....しばらくパフェはいらないわね」

「ボクも....」

「俺もいらん....」

 二人が食って残ったパフェを食べた俺も二人の同じ意見だった。

 

「....で、こっから買い物か?」

「そうね....こっちとあっちと、考えてる時間がもったいないわね。瑞希、葵、行くわよ」

 絵名はスマホを見ながらそう言って歩き出した。

 

「....いい友達できたな」

「そう、だね....ボクにはもったいないぐらいだよ」

「....瑞希。お前あの事は....」

「二人とも! 早く行くわよ!」

「っ! ごめんごめん! ほら葵行くよ!」

 俺が瑞希にそう聞こうとした時、瑞希は絵名の言葉に反応して走っていった。

 

「....」

 俺はその様子を見て黙ってついて行った。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。