「ふむ....」
「どうした、そんな難しい顔して」
昼休み、司の教室に行くと司は難しい表情で求人誌を見ていた。
「葵か! 実はだな、アルバイトを探してるんだがピンとくるようなものがなくてな」
「バイトって....お前バイトやってただろ」
「確かにそうだが、それは全部やめてな。咲希も元気になったことだしオレも
将来に役に立つバイトをしようと思ってな!」
「って言うと、ショーキャストか?」
「そうだ! 何だが....」
「見つからねぇって感じか」
そう言いながら、俺は机に置かれていた求人誌を手に取ってページをめくった。
「いや、見つかりはするんだが場所がな....」
「....確かに、ここからだと結構時間かかる場所だな」
「そういうわけだ。葵は何か知らないか?」
「何かって言われてもな....」
俺は携帯を開いて適当に検索をかけてみた。
「あ....」
すると、一件だけちょうどいいものを見つけた。
「司、フェニランならいいんじゃないか?」
「フェニランだと!」
「あぁ。キャスト募集だとよ」
そう言って携帯の画面を見せた。
「おぉ....! ここなら場所も遠くなく通いやすい! それにフェニランはよく行っていたから
雰囲気が掴みやすい! 感謝するぞ葵!」
「へいへい。ま、取り敢えずは面接受かってからの話だけどな」
そう言って、俺は財布を取り出して司の机に1000円札を二枚置いた。
「あぁそれと、これ返すわ。おかげで昨日助かった」
「随分早いな!」
「返せる金はさっさと返した方がいいだろ。つか、俺がこっちに来たのもこれ渡すためだしな。
んじゃ、俺も教室戻るわ」
そう言って、俺は自分の教室に戻った。
~~~~
放課後になり、俺は門の前で雫を待っていた。だが、珍しくいつもの時間になっても雫は
出てこなかった。
「あ....」
「ん?」
すると、突然そんな声が聞こえてきた。声の方を見るとそこには....
「あんたは....朝比奈さんだったか?」
「あなたは、月夜さんでしたか。こんな所でどうしたんですか?」
雫と同じ弓道部の朝比奈さんがいた。
「雫を待ってるんだ。朝比奈さん、雫の事見てないか?」
「日野森さん? えっと、今日会ってないからわからないかな。部活も今日は休みだったし」
「そうか....悪いな、急に聞いて」
「いえ、気にしないでください。....じゃあ、私はお先に」
そう言って朝比奈さんが歩き出そうとした時、学校の中から誰かが走って出て行った。俺が
その人物を見ると、その人物は雫の髪色にそっくりで長さも同じだった。
「(いや、そっくりじゃなくて雫じゃねぇか!)」
俺がもう一度よく見てみると、走って出て行った人物は雫だった。
「悪い朝比奈さん! ちょっとバイク見ててくれ!」
「えっ!? ちょっ....」
俺は朝比奈さんにそう言ってバイクを置いて雫を追いかけた。
~~~~
雫を追いかけて着いたのは、子供の時よく遊びに来ていた公園だった。そして、雫は屋根の
ある遊具の下で膝を抱えて座り込んでいた。
「....雫」
俺は目線を合わせて雫に声をかけると、雫はゆっくりと顔を上げた。顔を上げた雫の目は
真っ赤になっており、その目からは涙がこぼれていた。
「あおちゃん....」
雫は一言そう言うと、俺に抱き着いてきた。
「雫....」
「ごめんね....今だけは、何も言わないで....」
「....あぁ、わかったよ」
俺はそう言って、優しく雫の背中を撫でてやった。
~~~~
「....お姉ちゃんは」
「....何とか寝たぞ」
あれからしばらくしてバイクを取りに戻り、朝比奈さんに謝罪をした俺は雫の家にいた。
そして俺が雫の部屋から出ると、部屋の前には志歩がいた。
「そう....」
「....はぁ、一体何があったんだかな」
「....あおにぃが何かしたんじゃなかったの」
「冗談よせ。....雫を泣かせるようなことはあれで最後だ」
「....そうだったね。ごめん」
志歩がそう言うと、俺達の間ではしばらく沈黙が続いた。
「....取り敢えず、今日の所は帰るわ。何かあったら呼んでくれ」
「....わかったよ」
そう言って、俺は雫の家を出て家に帰り自分の部屋に入った。そして、俺は携帯を開いて
あるアプリを開いた。
~~~~
???
『....久しぶり。今日はどうしたの?』
「....頭を冷やしに来ただけだ」
『....そっか』
そう言うと、ミクは俺の隣に座った。
「....何で何もしてやれないんだろな、俺は」
『....そんな事はないんじゃないかな』
俺の言葉に、ミクはそう返してきた。
『そばにいてくれるだけで、救われるっていう人もいると思うよ』
「....そうだと良いんだが」
「(....どうして、俺は雫を救ってやれねぇんだか)」
「俺は、何のために雫のそばにいるんだ....」