転生したらあべこべアニメ主人公だった件について   作:カンさん

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第三話『あさひと転生者と原作介入』

 

 魔法少年あさひEXTREME。

 アニメ放送十周年企画にてリリースされた魔法少年あさひのソーシャルアプリゲーム。原作ストーリーや外伝ストーリーはもちろん、ソシャゲオリジナルストーリーから他作品コラボまで幅広く取り扱って来たゲームで、ファンの間ではあさひEXと呼ばれていた。

 キャラクターも過去作の魔法少年や魔法少女。さらには敵キャラまで数多くのキャラが実装されており、十和子は重課金して全てのキャラクターをコンプリートしていた。刹那は無料ガチャと福袋ガチャしか回してない。

 

 そんなあさひEXのストーリーの中にはある一つのストーリーがあった。

 それはアナザーストーリー。原作ストーリーの世界、正史世界を基に存在するもしかしたらあり得たかもしれない世界。その世界は原作といくつかの相違点があり、中でも一際目立つのが作中で重要アイテムであるアーティファクトの存在だ。

 

 古代魔法文明が作り出した数あるアーティファクトの中でも、原作アニメ一期で出て来たカードは謎が多い。10年間ファンの中でも考察に考察が重ねられ、新情報が出たのはそのアナザーストーリーだった。

 

 願いを叶えられると言われたその魔法カードは原作アニメの時点では未覚醒の状態であり、本来はそれぞれが意志と力を持っている事が明かされた。

 しかしそのカードを見つけた赤毛の子猫ことユナはその事を知らず、ただの魔力結晶体と認識していた。

 そしてそのアナザーストーリーでは何かの原因でカードが覚醒し、あさひがカードを使って魔法を使う原作とは違った路線の魔法少年になっていた。

 

「へー。知らなかった」

「このアナザーストーリーも実装されたは良いものの、次のストーリーがなかなか配信されなくてさ……それを見る前にアタシは死んだ。栄養失調で」

 

 課金のやり過ぎ、ダメ、絶対。

 

「それじゃあ……」

「ああ。原作知識は当てにならない。だから」

 

 次の事件から本格的に介入するぞ。

 十和子の言葉に刹那は驚くも、次の瞬間には笑みを浮かべていた。

 

 

 第三話『あさひと転生者と原作介入』

 

 

「なるほどね……」

 

 おれは子猫──ユナから事の顛末を聞いた。

 古代魔法文明で作られた遺物アーティファクト。それを発掘したユナは護送中に何者かの襲撃を受けてこの街に降り注ぎ、ユナはそれを回収しに来た。

 しかし力及ばず倒れ伏し、さらに追撃を受けておれに助けを求めた、と。

 

「お互い無事で良かったね」

「はい。本当にありがとうございます。その、お礼は後日改めて──」

「いや、そっちはいいよ。それよりも今後はどうするの?」

「……傷を癒やして、また一人で探しに行こうかと」

「ダメだよ。危ないよ。だからおれも手伝う」

「そんな! 無関係の君をこれ以上──」

 

 最初から思っていたけど、この子真面目で頑固な性格をしているな。

 ちょんっと口元に指をつけて静かにさせる。

 キョトンとした子猫が顔が可愛いと思いつつも、おれは己の思いを伝えた。

 

「無関係じゃないよ。もう十分に巻き込まれている。それに、おれの力でそのカードを集めてこの街を守れるのなら頑張るよ」

「……あさひさん」

「あさひで良いよ。同じくらいだし、敬語もなし」

「……うん。あさひ。これからよろしく」

 

 こうして、おれは魔法少年として不思議な子猫のお手伝いをすることになった。

 残りのカードは19枚。

 旋風(ゲール)跳躍(ジャンプ)の力を考えるとこのまま放置する事はできないから──頑張ろう。

 

 

「こ、これは一体!?」

旋風(ゲール)を使ったらこんな事に……じゃなくて、早く片付けないと叔父さんが帰って来ちゃう!」

 

 なお、家に帰ったおれは大急ぎでリビングの片付けをする羽目になった。

 幸い叔父さんにバレる事はなかった。

 

 

 

「へぇ。それじゃああの子今はあさひの家に居るんだ」

 

 次の日学校にて、おれは二人にユナを既に家で保護している事を伝えた。

 叔父さんも驚いていたけど、快くユナを迎えてくれた。

 ちなみに魔法の事は内緒にしている。何でもユナ曰く魔法は秘匿するべきもので、もしバラしたら魔法教会なるものに罰せられるらしい。

 だからこの二人にも魔法の事を教えることはできない。申し訳ない気持ちが湧いてくるけど仕方ないね……。

 

「名前は決めたの?」

「うん。ユナって言うんだ」

「可愛いね!」

 

 ラタが顔を輝かせてそう言い、真琴もにっこりと笑顔を浮かべて「今度遊びに行く」と言った。

 おれはそれに頷いて答える。

 そんな風にユナの事で盛り上がっていると、いつもの様に着いて来ていた刹那が少し怖い顔でおれに聞いてきた。

 

「その子猫と風呂に入った?」

「はい?」

 

 何聞いてんだこの女。

 目を点にさせて驚いていると、刹那の頭を殴って黙らせた十和子が問いかけて来た。

 

「そのユナって猫はメスなのか?」

「え? うーん……」

 

 そう言えばと思い返してみると、確かあの子猫にはオスにあるべきものが付いていなかった。そうなるとユナくんじゃなくてユナちゃんって呼ぶべきなんだろうか。

 

「メスだと思うよ」

「へー、そうなんだ」

「まぁ、猫はメスでもオスでも可愛いよ!」

 

 真琴とラタは特に気にした様子も見せていないけど、刹那と十和子の表情は険しい。何を考えているんだこの二人は。

 

「まだ怪我が治っていないからお風呂には入れていないよ」

「ホッ……」

「なんだ……」

「でもタオルで綺麗にしてあげたよ」

「!?」

「!?」

 

 突然顔を真っ赤にさせて固まる二人。

 本当に何を考えているんだ二人は……。

 気になったおれは心を読む事にした。

 

(──センシティブな内容──)

(──センシティブな内容──)

 

 ……本当に何を考えていんだこの二人!? 

 官能小説の朗読を聞かされたおれは自分の頬が赤くなるのを自覚しながら、心を読む力を解いた。

 このオープンスケベとムッツリスケベめ。

 しかし、ユナって女の子なんだ。それも猫じゃなくておれと同じ人間の。

 二人の声を聞いて得た情報から二人が気にしている事を理解する。原作だと、その辺の勘違いからラッキースケベ的なのが起きたのかな? 

 

「えっち」

「!?」

「!?」

 

 おれはこっそりと二人に聞こえるか聞こえないかの声量でそう言いつけた。

 

 

 

「あさひ」

「あ、ユナちゃん」 

 

 学校が終わり、帰宅する途中。ユナが迎えに来てくれた。

 傷はもう大丈夫なんだろうか。そう心配して尋ねると、寝て回復に集中したから傷跡は無くなったらしい。

 包帯を解いて見せてくれた。ホッと息を吐いて安心する。

 おれの肩に乗った彼女の首元を何となく撫でると、目を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。……本当に人間なんだよな? 

 

「そういえば、気になる事があるんだけど」

「気になること?」

「うん。あさひの学校で──」

 

 しかし、ユナの言葉はそれ以上続く事はなかった。

 

「これって……」

「魔法の気配!」

 

 おれとユナの視線は同じ方向を向いていた。

 旋風(ゲール)跳躍(ジャンプ)の時と同じ気配がする。

 ユナと頷き合っておれは気配のする方向へと向かった。

 この感覚から察するに、魔法の気配が居るのは──友鳴神社だ。

 

 この街、友鳴にある神社。昔から不思議な出来事が起きている時はこの神社が関係してるとかしてないとか。叔父さんも何度かお祓いしに行って時々精力尽きかけてで帰ってくる。ナニを祓って来たのやら……。

 

 長い階段を昇り切って神社に辿り着いたおれ達。近づくと気配が良く分かる。……気配とか、昨日まで全く感じ取れ無かったけど魔法と出会った事で分かる様になったんだな。

 ボンヤリとそんな事を考えていると、肩に乗ったユナが叫んだ。

 

「あさひ、来るよ!」

 

 その言葉と共に地面が盛り上がり、龍の形へと変わる。そして大きな口を開けて「ゴオオオオ!」と雄叫びを上げた。

 ……って、ドラゴン!? 昨日の毛むくじゃら状態の跳躍(ジャンプ)が可愛く見えるんだけど!? 

 

「あさひ、呪文を唱えて杖を!」

「分かっ──」

 

 ペンダントを取り出し宝石になっている魔法の杖を掲げたところで、ドラゴンが口を開いて突っ込んで来た! おれは咄嗟に前に跳んで避ける。瓦礫が散り、衝撃が走り、膝を擦りむいて痛い……って、そうじゃなくて! 

 

「ユナちゃん! これじゃあ呪文を唱えられない!」

「くっ……! でも!」

 

 困った表情を浮かべるユナ。しかし、こうして話している間にも地面で出来たドラゴンは口を開いて襲い続ける。

 昨日の毛むくじゃら状態の跳躍(ジャンプ)時は、跳躍(ジャンプ)がアホの子だったから隠れて杖の力を解放することが出来た。

 でも今はそんな暇が全くない。どうすれば良いんだ……! 

 

「あっ……!」

 

 痺れを切らしたのか、おれが逃げた先の地面が盛り上がり先回りされてしまう。

 振り返るとドラゴンが雄叫びを上げて、おれを飲み込もうと大口を上げて襲い掛かり、おれはギュッと宝石を握り締める事しかできず──。

 

「あさひ!」

 

 ユナの叫び声と同時に、大きな衝撃が全身に走った。

 

「……っ」

 

 思わず目を閉じてしまったが、痛みはなかった。目を閉じる前に見た最後の光景はドラゴンの口の中。あのままなら大怪我を負うと思っていたんだけど……。

 恐る恐る目を開けてみると──そこには、銀色があった。

 

「大丈夫、あさひ?」

「刹那ちゃん!?」

 

 そこには手を翳してドラゴンの突撃を受け止めている刹那がいた。長い髪を靡かせて、銀色の魔法陣を展開しているその姿は、彼女の容姿も相まって幻想的だった。

 

「あなたは一体……」

「話は後! 今は──」

 

 ユナの問いかけに刹那はそう言うと、剣のペンダントを取り出して口を開いた。

 

「契約に従い、我が手に宿れ剣の精。来れ万物を斬り裂く刃。薙ぎ払え我に仇す敵を。我が名は神城刹那。汝の名は──ブラック・ソウル!」

 

 すると、刹那の手にキラキラした綺麗な剣が出現した。

 彼女はその剣を掲げて一気に振り下ろすと、刹那が受け止めていたドラゴンを真っ二つに斬り裂いた。

 ドラゴンはそのまま地面に崩れ落ち、ただの地面へと戻った。

 

「あ、ありがとう刹那ちゃん」

「いや、まだだ!」

 

 お礼を言おうとした瞬間、刹那が叫ぶと同時に周りの地面が隆起しいくつものドラゴンが出現した。

 こ、これは……! 

 おれは思わず後ずさるも、しかしそれではダメだと思い直し宝石を掲げる。

 

「刹那ちゃん、しばらくお願い」

「任せろ!」

 

 心を読んでいないから詳しい事は分からないけど、状況証拠と前世の記憶から刹那はおれの手助けをしてくれている事は理解した。

 だから今は細かい事をごちゃごちゃ言わずに、できる事をやるだけだ。

 

「月の力よ。太陽の力よ。我が呼び掛けに応え給え」

 

 宝石を掲げると胸の中に自然と言葉が浮かび上がる。

 

「天光満ちとし時我はあり。星の導きの元汝あり」

 

 全身に駆け巡る魔力がおれに力を与える。

 

「真の姿を我の前に示せ、魔法の杖。──メタモルフォーゼ・マジカルアップ!」

 

 その力を形に、杖にして顕現させた。

 月と太陽が合わさったおれの杖。これを持つと自然と勇気が湧き上がってくる。

 

「……杖は一緒か」

「え?」

「いや、何でもない──来るよ!」

 

 刹那の警告と同時に四方八方からドラゴンが襲い掛かってくる。

 刹那は前から来る複数のドラゴンに向けて剣を構えて、一気に振り抜いた。すると、全てのドラゴンが首から切断されてただの地面に戻った。

 だったらおれは後ろのドラゴンだ。

 

旋風(ゲール)!」

 

 カードを掲げて杖で力を解放する。

 すると鎌鼬が起き、ドラゴンの首を切断しただの地面に戻す。

 よし、効いている! 

 しかし喜んだのも束の間、すぐに新しいドラゴンが作り出された。

 

「やっぱり……!?」

 

 先程と同じ光景に眉を顰める。

 薄々分かっていたけどこれじゃあダメだ。多分このドラゴンを操っている本体がいる筈……! 

 

「何処に……?」

「あさひ、こういう時は──」

「──こういう時は、魔力の一番強い所を探るんだ」

 

 ユナが口を開くと同時に、言葉を遮って現れたのは……。

 

「十和子ちゃん!?」

 

 トンっと重力を感じさせない様におれの前に降り立つ十和子。

 その手には黒く染まった日本刀が握り締められており、いつもの仏頂面でこちらを見ている。

 

「また、魔法使い!? 何でこっちの世界にこんなにも!?」

「……あのドラゴンは手足に過ぎない。倒しても倒しても疲れるだけだ。だから、あさひ。お前が見つけるしかない」

 

 その為の時間は稼ぐ。

 そう言葉を残すと、ドンっと地面を凹ませる程の力で跳躍すると、ドラゴンの首を落とし、さらに次、また次、とドンドン斬り落としていく。

 

「あいつ……!」

 

 そして、それを見た刹那が競う様に剣を振るって飛ぶ斬撃でいくつものドラゴンの首を落としていく。

 ドラゴンたちは、彼女たちに任せて良いな。

 おれは杖を握り締めて目を閉じて魔力を探った。刹那たちの戦闘音が響く中、おれの感覚はだんだん研ぎ澄まされていき──。

 

「──見つけた!」

 

 おれは目を開いて、気配のいる場所を見た。

 走ったら間に合わない。だったら、この子の力を使えば! 

 

跳躍(ジャンプ)!」

 

 足に魔力が纏わり付く感覚が走り、おれは地面を踏み締めて──解き放った。

 すると視界の景色がグンっと後ろへと跳んでいき、おれは神社の前にある賽銭箱へと突っ込んでいく。

 そしてそのまま杖を上に掲げて、胸の中に浮かんだ言葉を魔力を込めて叫んだ。

 

「姿迷いしカードよ! 我と契約し生まれ変われ! 我が名はあさひ! 汝の名は──大地(アース)!」

 

 杖先にカード状の光が集まり、周囲のドラゴンが崩れていく。

 そして目の前のカードに力が収束していき──封印が完了した。

 手元に降り立ったカードの絵柄を見ると、旋風(ゲール)と同じ様な少年が描かれていた。

 

「ふぅ……」

 

 さて、無事にカードは封印することが出来た。

 後は──。

 

「説明してくれる? 二人とも?」

 

 おれの視線に刹那と十和子は何処かソワソワしていた。

 

 

 

「なるほどね……」

 

 刹那たちのサクセスストーリでは、ある日突然魔法と出会った。魔法世界で修行した。別に魔法教会に所属している訳ではない。だから魔法の事を知っているだけの地球の人間──との事。

 何というか、二人が考えたにしては言い慣れてそうな理由だな……。前世の記憶で見慣れてそう。

 そして今日おれが魔法のゴタゴタに巻き込まれている事に気づいて助けてくれたらしい。これからも助けてくれるとも言ってくれた。それに異議を唱えたのはユナだった。

 

「そんな! これ以上人に迷惑をかける訳には──」

「いや、あさひには迷惑かけて良いの?」

 

 ユナの反論に対して、刹那は冷たい声で切り捨てた。

 

「迷惑をかけたくないなら、あさひを巻き込むな。魔法教会の到着を待っていろよ」

「それは、そうなんですが……でもこのままだとこの街で被害が」

「矛盾してる」

 

 十和子の声もまた冷たかった。

 

「お前は力及ばず、あさひに助けを求めた──その時点でこの街を守る事なんて不可能だ」

「……」

「そもそも、この状況に陥ったのはお前が先走って──」

「──やめて」

 

 おれは十和子の言葉を……いや、二人の追及を止めた。

 助けてくれた二人には感謝している。ユナに言っている事も正しい。

 何よりおれの事を想って言ってくれている事を理解している。

 でも、言い過ぎだ。正論を武器に責めているだけだ。そんなのは悲しいから──やめて欲しい。

 

「……分かった。でも」

(あさひが泣くところは見たくない)

 

「アタシ達の考えは変わらないから」

(もうあさひには泣いてほしくない)

 

「それでも、今ユナちゃんを責めても意味がないよ」

「あさひ……」

 

 お互いに譲れない気持ちがある。

 悲しいけど、仕方ない……か。

 心を読む限り、本当におれの事を心配しているし。

 

「そもそも! 本当は人間の女なのに、ね、猫の姿を良いことにあさひに洗って貰うのはけしからん!」

「ああ、全くもってその通りだ」

 

 ……いや、おれの事を心配しているのは確かなんだ。

 でも、何だ。この二人は欲望に忠実というか、嫉妬深いというか……相変わらずだなぁ。

 

「……? 何を言っているの?」

 

 しかし、ユナの様子がおかしい。

 正確には刹那の言葉を聞いてから、何やら怒気が溢れ出しているというか。

 今までは申し訳なさとか罪悪感とかで強く出れなかったのに、それが全て吹き飛んでいる様に思える。

 

「ボクは、男だ!!」

 

 そして感情を乗せて大声で叫び、

 

「「──ええええええええ!?!?」」

 

 それに負けないくらいに刹那と十和子は驚きの声を上げた。

 

 

 

 ……どういう事なの?

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