転生したらあべこべアニメ主人公だった件について   作:カンさん

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第五話『転生したら原作通りに進んでいる件について』

 

「……今日も仕事かぁ」

 

 おれが小学生になって三年。友達との学校生活は楽しく、前世よりも充実しているかもしれない。貞操観念が逆転していてその辺で戸惑う事があるけど。

 そして、おれがある程度自分の事は自分でできる年齢になったからか、両親が家を空ける時間がさらに増えた。

 

「全くアイツらは……息子があさひじゃないと破綻してるぞ、今の生活!」

 

 叔父さんはその事に対して酷く怒っていた。お爺ちゃんもあまり良い顔をしていない。

 ……正直、授業参観日や運動会に来て貰えなかった日は悲しかった。

 おそらく肉体に精神が引っ張られているのだろう。大人な精神は仕方の無い事だと諦めが付いているし理解しているが、子どもの肉体は寂しいと思っている。

 ままならないな……。

 朝食を食べ、登校の準備を終えて家を出る。そして父親の作ってくれた弁当を持ち、最寄りのバス停で学校行きのバスに乗る。

 

「あさひ〜。こっちこっち」

 

 乗ると同時に、聞き慣れた声がおれの名前を呼ぶ。

 一番後ろの席には、一年生の時に友達となった極寺真琴とラタ・エーテルライトが居た。

 二人に誘われるまま席に座り、挨拶を交わす。

 

「ふわ〜。眠たい……」

「まったく、だらしないなぁ。涎が垂れてるぞ」

 

 そう言っておれの口元をハンカチで拭ってくれるラタ。

 一見、しっかり者の優等生に見えるが少し心の中を覗くと……。

 

(あ〜〜〜、もう! あさひは相変わらず可愛いなー! それに比べて真琴はカッコいいし、朝から眼福だぁ)

 

 この通り、彼は、その、何というか……。

 ホモだち、じゃ無くて友達想いの良い子である。ちょっと愛が重いけど。

 

(仲良いなー、二人とも)

 

 そして真琴はおれの心の中のオアシスである。

 おれの世界で言うと男勝り、こっちだと女勝りな彼。考えている事に表裏が無く、付き合っていて気持ちの良い人間だ。

 

(そういえば、組の奴らが確か、えっと……薔薇? って言ってたな。意味はよく分からないけど)

 

 そしてそれを汚す存在も居る。真琴は建設会社の社長の息子で、そこで働いているガテン系のお姉様とよく連んでいる。だから女勝りな様で、そして時折いらん事を教えるアホが居る。今度またシバきに行くか……。

 

 この様に、おれ達は三人仲良く学校生活を過ごしている。

 正直とても楽しい。……楽しいのだが。

 

「やぁ、おはよう私のダーリンたち!」

(うげ)

(う、今日も来た……)

 

 二人の心のテンションが一気に降下する。

 正直、この時間がおれは苦手だ。

 視線を前に向けると、そこには朝日を受けてキラキラと輝かせる銀色の長髪を靡かせ、綺麗な赤と青のオッドアイをこちらに向ける超絶美少女──神城刹那だった。

 

「お、おはよう刹那ちゃん」

 

 おれはいつもの調子で挨拶をするが、隣の二人は……。

 

「……」

「……ふんっ」

 

 真琴は目を閉じて沈黙し、ラタなんてあからさまに顔を背けて拒否した。この通り、二人の様子を見れば分かる様に彼らは刹那を苦手に思っている(オブラート)。

 まぁ、それも仕方の無い事である。おれが彼らと友達となった次の日にこちらに輪に半ば無理矢理入り込んで友達宣言。その時はまだ真琴は友好的な姿勢を見せた。ラタは女嫌いなのでダメだった。

 しかしその次の日には何故か「フラグ建設完了!」とスキンシップが増え私の夫宣言。真琴の顔から作り笑いが消え、ラタはやっぱりダメだった。

 刹那の内面を知っているおれも流石にフォローできず、何なら喧嘩を傍観していた事についてまだ不信感を抱いていた為……正直おれ達と彼女の間で溝が出来て──現在に至る。

 

(好きという気持ちは本当なのに──勿体無いな)

 

 悪いと思ったら直ぐに謝る素直さが彼女にはある。逆に言うと自分が悪いと思わなければそのまま暴走するコミュ障でもある。

 顔が良いだけに、時々忘れそうになるけど……顔が良いのやっぱりズルいだろ。

 

 おれの隣に座り、強制的に詰められた二人の心に不満が募るのを(ラタはおれと真琴に挟まれて喜んでいる)感じながら、そんな事を考えていると次の駅に止まり──。

 

「あっ、十和子ちゃんおはよう」

「……」

 

 乗車して来た十和子に挨拶をするも、返される事なくそのままおれ達の一つ前に座った。……相変わらず素っ気無い。

 

「くぉら! 黒崎! あさひが挨拶にしてるのに、無視するなんてどういう了見だ!」

「ちっ」

「相変わらずイケ好かない奴!」

 

 朝からバチバチとやり合う二人に辟易し、そして流れ込んでくる真琴達の心の声が流れ込んでくる。

 

(神城じゃないけど、ホント嫌になる。あさひにあんな態度して)

(うーん。やっぱり黒崎は俺たちの事が嫌いなのか?)

 

 二人に差はあれど、十和子の反応にあまり良い感情を示していない。

 まぁ、それも仕方の無い事である。何故か十和子は彼らとの接触を最低限にして、言葉も態度もぶっきらぼう。それで好印象を抱くなんて無理だ。

 

(……よし、クールキャラは崩れていない)

 

 だからね、十和子さんや。

 その刹那に負けず劣らずな中二病的思考はやめておきなよ。

 君にクールキャラは似合わないよ

 

「この胸無し」

「今なんて言ったゴルァ!?」

 

 いつもの様に刹那の挑発に乗りメッキが剥がれる様を見て、隣の二人がまた始まったと辟易し、運転手からの雷が落ちるまでの間、おれはボーッと外の景色を眺めていた。

 今日も一日、変わらない日常が始まる。

 

 

 第五話『転生したら原作通りに進んでいる件について』

 

 

「つまり、此処での作者の思いは──」

 

 流石に二度目の小学校の授業となると、暇に感じてしまう。

 初めの頃は懐かしい思いがあり楽しめたが、三年目となるとそれも薄れる。

 今では体育の時間が唯一の楽しみとなっている。そんな事を考えながらふと外を見ると、刹那が校庭を走り回っていた。どうやら彼女たちのクラスは体育らしい。種目はサッカーか。

 

「喰らえ! フレイムバスタートルネード!!」

「出たぁぁぁぁあああ! 刹那の必殺シュートだぁ!!」

 

 ……おれの見間違いでなければ、イナズマでイレブンな超次元サッカーみたいな事になっているんだけど? 

 

「おりゃああああ!!」

「うおおおお! 十和子の絶対絶壁だぁ!!」

 

 そしてそれを当然の様に受け止める十和子。

 ……うん。本人達が楽しいなら、良いか。

 おれは考えるのを辞めて視線を外から前の黒板へと向けた。

 それにしても、異性からは遠巻きにされている二人だけど同性からは結構好かれているんだよな。サッカーを一緒に楽しんでいる姿からもそれが分かる。問題行動の多い二人だが、根は良い娘なのは変わりないのである。

 もっとも、女子全員で男子の着替えを覗きにいく行為は普通に犯罪なので辞めようね! 

 

 

 

 

 午前の授業が終わり、おれはラタと真琴と共に中庭で昼食を取っていた。おれ達が友達になってからは、いつも此処で三人仲良く食べている。

 

「はい、真琴」

「サンキュー。いつも悪いな」

「別にー。パパが作り過ぎているからついでに渡しているだけ」

 

 ラタから弁当を受け取った真琴は嬉しそうな表情を浮かべ、ラタは憎まれ口を叩きながらも上がりそうになる口角を必死に抑えていた。

 真琴は以前までコンビニで買っているパンを昼食にしていた。父親が料理が苦手かつ仕事で忙しい為、弁当とは無縁の日々を過ごしていたらしい。

 しかし、ラタがある日弁当を持って来て真琴に差し出し、それ以降彼はラタの父の弁当を食べている。

 

 ……もっとも。

 

「うん。今日も美味しいよ」

(ラタの弁当、日に日に上手になっているなぁ)

 

 真琴のお察しの通り、この弁当実はラタが作っているのである。しかし性格故に素直に言えず父が作ったと嘘を吐き、真琴はその事に気付きながらもしっかりと弁当の感想を述べて感謝の言葉を送っている。相変わらず良い娘だ……! 

 

「そ、そう。それは良かった」

(はぁぁぁぁあああん! 凄く嬉しいぃぃぃいいいい!)

 

 そしてラタは相変わらずのツンデレである。

 ちなみにおれの弁当も用意しようかと打診をされたが断った。父さんが仕事で忙しくておれに構えない分、しっかりと作ってあげたいと言っていたからだ。

 ……本当、おれには勿体無い親だ。

 

 この様に、かつては食事を淡々とこなす時間は友達を得た事により楽しい時間へと変わった。

 

「はぁ……ラタまこ、てぇてぇ」

「それな。ツンデレと素直クールは最強だ……」

 

 ……まぁ、おまけも居るけど。

 

「って、何で今日も居るんだよお前ら!」

「当然! 未来の夫達と楽しい時間を過ごす為!」

「その楽しい時間を壊そうとしている自覚を持ってくれない???」

 

 ガルルル、と威嚇をするラタとツンデレ乙とデュフフとちょっと気持ち悪い笑い方をする刹那。

 

「まぁまぁラタ。そう怒るなって」

「相変わらず痛い奴」

 

 苦笑いしながらラタを宥める真琴に黙々と弁当を食べながら言葉を吐き捨てる十和子。

 なんだかんだと不満を抱いたり、騒いだりしながらもここ最近はこの五人でこの中庭に集まっている。ラタと真琴が諦めたとも言える。というか刹那はともかく、十和子は何で一緒に居るんだろう。心を読まない様にしているから分からないんだよな。

 

「そういえば、あの課題できそう?」

 

 ふとラタがおれと真琴にそう問い掛けた。刹那と十和子には聞いていない様だ。

 えっと、ラタの言う課題って確か……。

 

「お父さんとお母さんに対しての感謝の言葉を作文にするアレ?」

「そ。正直恥ずかしいよな。パパとママは好きだけど、それをみんなの前で発表って」

「ははは。確かにそう考えると恥ずかしいね」

 

 ラタの言葉に真琴が頬をポリポリと掻きながらそう答えた。

 うーん、でもなぁ。

 

「おれはそうでもないかな。むしろ原稿用紙に収まるか心配だ」

「相変わらずのファミコンだな……」

「でも俺、あさひのその家族への愛の深さ好きだよ」

 

 ラタは呆れた様子で、真琴は率直にそう答えた。

 よせやい、照れるだろ。

 しかし事実である為、おれは隠す事も誤魔化す事もせずに胸を張って答える。

 

「実はもうできていたり」

「はやっ!?」

「昨日出されたよね……? そして提出期限は来週……」

「まだ推敲してないし、清書してないから。とりあえず課題の原稿用紙に収める様に頑張るよ」

 

 得意げに言うと、二人は苦笑した。まぁ、二人はおれの両親への愛の深さを知っているからこの反応も当然のかな。

 

(──マジか。もう、その時期だったのか!?)

 

 そんな時だった。強い感情の乗った心の声が聞こえたのは。

 ふいに聞いてしまったせいでビクンっと肩を跳ねらせてしまい、ラタ達に不思議そうな顔をされる。

 何でもないと誤魔化しながらも、おれは原因である刹那の方へと視線を向ける。当然非難の感情を乗せて。

 全く、いきなり大声(心)を出さないで欲しいな。刹那達のクラスでも同じ課題が出てやり忘れたとか、そんな理由か? 

 そう思いながら刹那の顔を見て──息を呑んだ。

 

「ごめん、私腹痛いから帰る!」

「は? 何言ってん──はやっ!?」

 

 突如そう言った刹那はすぐにその場を走り去っていた。転生者特有のハイスペックなフィジカルで、あっという間にその背中を小さくさせる。いや、マジではえーな……。

 

「……っ」

「え、黒崎さんまで?」

 

 さらに十和子も刹那を追いかける様に走り去る。

 しかし、何処となく険しい顔をしていた。今までに見た事がないくらいに……。

 ただ──。

 

(原作通り……)

 

 二人の心から聞こえた声で、その言葉が嫌に力強く聞こえた。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 学校が終わり、家に帰るもいつもの様に誰もいない。まぁ、仕方の無いことだ。父さんも母さんも仕事で忙しいし。

 そんな事を考えながら鞄を部屋に戻そうとした所で、リビングのテーブルの上に置き手紙がある事に気付く。

 手に取り読んでみると書いたのは父さんと母さんみたいで、書いてあるのは……。

 

「今日も遅くなる。でも、来週には絶対に時間を作る」

 

 来週? そう考えてカレンダーを見ると……。

 

「あっ、おれの誕生日か」

 

 赤字で花丸で囲い、『あさひの誕生日!』『絶対に仕事しない』『仕事させるなら全て壊す』と書かれていた。いや、覚悟キマり過ぎだろ。

 二人の文字を見て……思わず笑ってしまう。

 

「こういう時はサプライズでもしてくれたら良いのに」

 

 心読めるからサプライズも何も無いけど。

 ……おれのせいで、サプライズしない様になったのかな? 

 しかしその分、毎年おれの誕生日では盛大に祝ってくれる。その日に仕事の電話が掛けられた時は鬼の形相で電話先に怒鳴っていたなぁ。嬉しいやら恥ずかしいやら。

 でも、まっ。

 

「来週が楽しみだな」

 

 おれは原稿用紙と下書き用紙を取り出し、自分でも分かるほどにニマニマと表情を弛ませていた。

 ……そうだ! 誕生日にこの作文を二人の前で読み上げよう。ちょっと恥ずかしいけど、そういう日くらい日頃の感謝の言葉を送っても良いに違いない。

 

「今年の誕生日は楽しみだな」

 

 そうと決まれば、とおれは鞄を片付けてリビングでペンを片手に作文の推敲作業に取り掛かる。

 元々モチベーションは高かったけど、今はさらに燃え上がっている。

 喜ぶ両親の顔を想像し、またもやおれの頬が弛み──。

 

 ──プルルルルルル。

 

「誰だろ。叔父さんかな」

 

 まるで出鼻を挫く様にして、電話が鳴る。

 家にはおれしか居ないので、仕方なく電話を取り通話ボタンを押す。

 

「はい、もしもし。月ノ本ですが」

『あ、月ノ本さんのお宅ですか?』

 

 ちなみに、おれは電話に出ると大抵大人と勘違いされる。

 声は幼いけど、受け答えが子どものそれじゃ無いから仕方ないね。実害がある訳じゃないから良いけど。

 いつもの様に要件を聞いて、両親にしっかりと伝えようと電話の横に置いてあるメモ用紙とペンを手に取り。

 

『私、〇〇警察の佐藤と申します』

「……警察?」

 

 しかし、紡がれた言葉にペン先を止め。

 

『落ち着いて聞いてください──そちらにお住まいの月ノ本健二さんと月ノ本さくらさんですが──』

 

 胸に湧いた違和感が大きく膨らみ、そしてジクジクと痛みを伴い。

 

『先ほど交通事故に巻き込まれ、病院に搬送後』

 

 頭の中が真っ白になるなか、電話の向こうで放たれた言葉が。

 

『亡くなられました』

 

 深く深く──刻み込まれた。

 

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