俺の名前は東 京一(あずま きょういち)、どこにでもいる普通の大学生だ。
短い黒髪で、そこそこ鍛えてはいるから健康的な方だと思う。ファッションはあまり興味がないが、清潔感は結構意識している。
名前のせいで東京駅やらスカイツリーやら首都やら都民様とかよくわからんあだ名を付けられたりするが、いつも最終的にキョウやイッチーなど、無難な呼ばれ方で落ち着く。
男友達はそこそこ多いが、女友達はそんなにいない。軽く話すくらいはよくあるけれど、休日に遊びに行ったりなどをできるのは男友達くらいだ。
社交性がないわけではないはずだが、どうも女性相手は落ち着かない。
そんな感じの、どこにでもいる普通の大学生だ。
そんな普通男子の俺の元に、ある日一通の手紙が届いた。封筒の裏を確認すると、婆ちゃんの名前が記載されていた。田舎の離島に住んでいる婆ちゃんからの手紙のようだった。
久しぶりだな、最後に会ったのいつだっけな、なんて思いを馳せながら開封し、手紙を読み進めた。
読み進めていたら手が震えてきた。
内容はこうだ。
久しぶりじゃの京一。
お前さんのことだし元気にしているだろうから、全く心配はしていない。
なかなか顔を見せないのは内心腹が立っておる。イラついてお前さんの写真に落書きをして近所に見せびらかしておるわ。ざまあみろ。
それにしても、大学生にもなって彼女の一人や二人もおらんとはけしからん。甲斐性がないのは男として情けないわい。
仕方がないので女を見繕ってやるから、夏休みはTS島へ来ること。お前さんに拒否権はない。
友人を数人連れて来ても構わないから、必ず来るように。
PS.連れてくる友人は男に限る。四人以上は連れてこなければボッチとからかってやるからそのつもりでおれよ。
あのババア。
ババアなんて汚い言葉を使ってはいけませんという理性が吹っ飛ぶほどムカつく手紙で、すぐさま燃やしたくなった。
ずいぶんと勝手な物言いじゃないか。
別に頻繁に連絡を取り合っているわけでもないのに、彼女がいないとかどこから知ったんだ。決めつけだったらちょっとムカつく。いや、だいぶムカつく。そもそも手紙そのものがムカつく。
無視してやろうかと思いはしたが、婆ちゃんの提案を断るとだいたいいつも災難が降り掛かってくるため、今回も否応なしに行くしかないのだろう。
一応、誘う友人の分まで旅費と滞在費は払ってくれるらしいので、ムカつきつつもまあいいかと安請け合いすることにした。
悔しいが彼女が出来ないのも事実だし。
でも婆ちゃんに彼女を見繕われるって、それはそれで情けなくないか……? そんな思いを抱いてしまったが、そこはあまり考えないこととする。
そうとなれば、早速友人に声をかけてみようと思う。
幼なじみの宮間樹と、同級生の砂田大河。あとは後輩の双子、花座兄弟でも誘ってみるか。
樹は真面目だが案外ノリはいい方だし、誘って断られたことはたぶん今まで一度もない。一番簡単に捕まえられるはず。
大河なんかは硬派だし、こういった誘いに乗ってくれるかは少し疑問だが、恐らく優しいあいつのことだからついてきてくれるんじゃないかと思う。
花座兄の陽はチャラ男だしこういうの好きそう。弟の憂はマイペースすぎてよくわからんが、あまり興味なくても兄が行くならついてくるだろう。
こうして俺たちの夏休みは幕を開けるのだった。
訪れたその島で、何かとてつもないことが起こるだなんて、その時の俺は知る由もなかった……。
夏なので冷やしチーレム始めました。