京都(ケイト)らしき美少女の運転でどんぶらこされた俺たちは、ついに婆ちゃんが経営している旅館に足を踏み入れた。
古いながらも整備が行き届いており、快適な和の空間といった建物だ。
何もわからんという思考のまま旅館の扉をゆっくりと開けると、目の前にたくさんの和服女性が現れた。
「おかえりなさいませ、京一様! ご友人の方々も、ご足労ありがとうございます」
仲居さんたちが、声を揃えて盛大にお迎えしてくれた。美女、美女、美少女、美魔女、たくさんの美に圧倒される。
「お邪魔しまーっす! わぁ〜結構綺麗な宿じゃないっすか! オレわくわくしてきちゃった〜! あ、写真撮っていっすか?」
「どうぞ、こんなところでよければいくらでもお写真にお収めくださいな」
陽らしきギャルが仲居さんにチャラチャラ話しかけている。このチャラチャラさ加減は、本当にこいつは陽なのかもしれない。パシャパシャと建物を撮りつつ、自撮りもしまくっている。SNS……トゥイッタ? かなんかに上げるつもりだろう。
「本当に素敵なところですね。あ、砂田さん、車酔いは大丈夫ですか? 憂さんも元気がなさそうですが」
「いや、車は平気だ。ケイトの運転が意外と丁寧だったのもあるだろうが」
「ボクも、大丈夫。ちょっと、眠くなっちゃっただけ……」
こういう細やかな気遣いをするところは、たしかに樹らしい。ぶっきら棒だけど人当たりが悪いわけではない大河らしき女性も、ちゃんと大河っぽい。ウトウトする憂らしき女子も、このマイペースっぽさはとても憂だ。
さすがにそろそろ飲み込めてきた。まじでよくわからんのはよくわからんけど、この島に来た時から、なんか知らんがこいつら女体化している。
「それでは皆さん長旅でお疲れでしょうし、お部屋にご案内しますね」
色々考えを巡らせていると、仲居さんのひとりが話を進めてくれた。和服美人……色っぽくて良い……。
「あ〜兄貴たち、荷物とか置いたら婆ちゃんから話があるから、大広間に集まってよね。夕飯食べながらになると思うよ」
「夕飯!! 待ってました楽しみ〜!! 先輩の田舎最高っすね!!」
「へへん、今日の夕食はケイトちゃんが釣ってきたお魚がいっぱい出るから期待してていいよ〜!」
「ケイちゃん、そういえばお魚やカニなどを色々器用にとっていましたね。昔ザリガニをたくさん投げつけられたのを覚えていますよ」
「み、宮ちゃんそれはゴメンて……!」
樹は俺と幼なじみなので、当然京都とも面識があり、よく一緒に遊んでいた。なんか知らんが女になった今も、その関係は変わらないようだ。
俺たちは仲居さんたちの案内に従い、それぞれの宿泊する部屋に荷物を置きに向かう。
さて、婆ちゃんの話とやらで、今起きている謎のTS現象について、知ることができるのだろうか。
態度や口調、性格。俺への接し方などは皆以前と変わらないように思う。だからこそ俺は混乱するわけだが。
気にする素振りが全く見えないが、あいつらは自分がTSしていることに対して何の疑問も持っていないのだろうか。
自分だけが謎の混乱に陥っていることになんとなく納得がいかないまま、荷物を置いた俺は大広間へと向かった。
なんとなく居心地が悪いのと覚悟が必要な気がしたので、外していたポロシャツの第一ボタンをしっかりと留めて、シャキッとした気分で挑むことにする。