なんで俺だけTSしないんだよ!   作:yoshida

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6話:ちょっと早すぎたかもしれない温泉回

 樹と話したことで少し落ち着き、結構穏やかな気持ちになっていた。

 

 友人たちが急に女になったことは納得できはしないけれど、ちゃんとあいつらはあいつらなんだということを実感できた気がしたので、警戒心の強い野生動物のような気分は吹っ切れた。

 先程見上げた夜空がとても良かったので、お風呂に入りながらでもまた眺めたいなと思い、俺は浴場へと足を運んだ。

 

 

「おー露天風呂、そういえば昔入ったことがあった気がするな」

 

 

 脱衣場で服を脱ぎ、生まれたままの姿になった俺は、洗い場で体を洗い、湯船にそっと足を入れる。

 温泉は熱いイメージが強いので最初に入る瞬間はよくビビってしまうものだが、屋外にあるからか思っていたより入りやすい温度に保たれている。

 

 

「あっ、あ゛〜〜〜〜お゛ほ〜〜〜」

 

 

 貸し切り状態の露天風呂、最高すぎる。

 日頃の疲れや直近で受けた精神的ストレスがほぐされるようだ。遠慮なくオッサンのような声を出せてしまうので、俺はオッサンになった。

 

 満天の星空を見上げ、夏の大三角形って何だったかなと思いを馳せる。

 確かデネブ、アルタイル、ベガ。どれがどれかはわからない。

 わからないけれど、こうして星を見上げて星座について考える行為は、オシャレな人間になれているような気がするので少し楽しい。

 

 

「あれがデネブアルタイルベガ〜どれだ〜」

 

「先輩の目線からだとたぶん上がベガで、左下がデネブ、右下がアルタイルっすね〜」

 

「あ、そうなんだ」

 

「そんなに星に興味があるわけじゃないっすけど、田舎だとやっぱ綺麗に見えて悪くないかもしれないっす」

 

「興味ねーのによく知ってたな」

 

「こういう雑学は知ってた方がモテるんすよ」

 

「はーん……相変わらずマメだわね…………………陽おまえなんでいるの!?!!!?」

 

 

 当たり前のように会話をしていたが、おかしい。

 あ、陽(男)も風呂入りに来たんだなと思い、普通に受け入れてしまっていた。

 だがこいつは今、陽(女)だ。声で気付けよと思うかもしれないが、油断していたのもあるが、あまりにも普段と同じ調子で話しかけられると案外気付けないものなのだと俺は今はじめて知った。

 

 

「え? そんなにひとり風呂がよかったんすか?」

 

「そういうことじゃない! 俺男! お前女体化! ダメ!」

 

「え〜今更すぎない? 今までだって一緒に入ることあったのに」

 

「男のお前とな!! 今は違うの!!」

 

「ふーん。あ、せ〜んぱい♡」

 

 

 俺が必死に陽(女)を見ないように目線を明後日の方向に持っていき背を向けていると、陽は急に甘ったるい声を出しはじめた。

 嫌な予感がしたが、回避行動をとるにはおそすぎた。その瞬間、柔らかい感触が背中を襲う。

 優しく掴まれた肩がゾクッとしたと思ったら、首筋をツーっと生暖かい何かが這った。

 体がびくぴくんッと反応してしまい、俺は立ち上がることができなくなってしまった。主に下半身への影響で。

 

 

「んふふっ、緊張しちゃってか〜わいい」

 

「ヤめろってェ!?!!」

 

「イヤで〜す。だって今なら先輩、オレのこと女として見てくれるじゃないっすか。オレ、先輩のこと好きですし、やるなら今かな〜って」

 

「やりませェん!!」

 

「ちぇ〜」

 

 

 とんでもないことを言いやがる。

 背中から離れていく柔らかい感触が名残り惜しいなんて、そんなことは思っていない。

 やたら敏感になったせいか、肩から手が離れる時に指を滑らせられただけで変な声が出そうになる。

 

 

「仕方ないな〜。まあ、夏ははじまったばかりだから、今はドキッとさせられただけでオッケーってことにしてあげま〜す」

 

「本当もう勘弁してください……」

 

「わかったっすよ、もうやらないっすから、とりあえずこっち向いてくれません?」

 

「タオルは?」

 

「巻かなきゃダメ?」

 

「ダメ!!」

 

「りょ」

 

 

 やっとギリギリ目を向けても大丈夫な状態になった気配を感じ、恐る恐る陽の方に体を向ける。

 タオルをしっかり胸元まで巻いて、金髪の髪を結い上げて止めている。少しだけこぼれ落ちた毛束が肌に張り付いており、えっち度がヤバい。純粋にエロい。

 少し火照って赤みが指した頬、柔らかそうな唇がやけに目に焼き付く。そして俺を見つめる、物欲しげな目。

 

 大丈夫じゃ、ないカモ〜〜〜〜。

 

 

「……先輩、そんな目で見られたら、せっかく我慢しよ〜って思ったのに、できなくなっちゃうっすよ?」

 

「ごめんなさいごめんなさい目を潰します」

 

「ちょ!? 先輩!?」

 

 

 友人をエロい目で見てしまったことの罪悪感でパニックになった俺は、温泉に勢いよく頭を沈めた。

 

 

 そこから先の記憶は、ない。

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