刀と獪岳   作:dahlia_y2001

13 / 13
刀と獪岳13【完結】

 

 

 

 

刀と獪岳13【完結】

 

 

 

 

見舞いに来た蝶屋敷の一室、大分にぎやかで入室を問うことに俺こと獪岳は躊躇った。部屋から漏れる声は楽し気で、俺とそして色々といわくのある刀が入れば空気を壊すのは間違いなさそうだ。とはいえ、俺は決して刀を疎ましく思っている訳ではない。他人には理解出来なくても、刀は俺の大切な相棒だ。故に、敢えて俺は強行することにした。気おくれしている自分が許せない気分になる。それに、入院している竃門も気になるし、こちらの状況も知らせなかったので。

 

「竃門兄、邪魔する」

「あ、獪岳さん、お久しぶりです」

 

包帯だらけの竃門は別途に上半身を起こした状態であった。その声には喜色がある。少なくとも竃門は俺たちの見舞いを喜んでくれている様子だ。病室には見舞客か、猪の被り物をした隊士とカスもいた。カスは「兄貴・・・」と小さく呟いていたが俺は無視して、竃門のベット脇のスツールに座った。刀がいるためか、竃門が気を利かせて二人の見舞客を外させたので、俺はすっと右手をかざして刀を出した。刀も竃門は大層、気に入っているのだ。

 

『久方ぶりだ、竃門。大分、手ひどくやられたな』

「獪岳さん、刀さん、わざわざありがとうございます。そちらも大変だったとか?」

「竃門たち前線の話は隠から聞いた。今は・・・・・・身体を養生しろ」

「・・・・・・はい」

 

俺はあまり戦いの話をしたくなかった。どうしても上弦の壱のことを話さない訳にはいかないし、逆に亡くなった隊士や胡蝶妹のことも聞きたくはなかったからだ。ただ、無事な姿を見せ、竃門の様子を見たかった、それで見舞いに来たようなものである。

 

『そうだ、竃門妹は?我はまだあやつに負け越しておるのだ』

「誰を相手にしても刀は負け越しているだろうに」

『どうだ、また双六大会を―――』

「あ、その―――」

 

酷く言いにくそうに竃門は口ごもった。

竃門妹は決戦には加わらず、当然ながら相当厳重に守られた筈だし、人に戻ったという話も聞いている。一体、何があったというか?

「妹は、鬼だった頃の記憶をほとんど失ってしまいまして、多分、獪岳さんや刀さんのことも―――」

『そう・・・か』

「俺が隊士だった頃も、常に一緒でもぼんやりとしか。いや、隊士であったことも理解していなかったようで」

「それでは、俺たちのことは記憶にねぇだろうな」

 

思わぬ寂しげな声音に俺自身が驚いてしまう。

 

『いや逆に良いのかもしれぬ。鬼であった記憶など、ない方が生きやすかろう』

 

それは正しいかもしれないが、刀の声に強がりがにじみ出ていたのは―――指摘してやらないのが優しさというものだろう。会わない方が良いのかと思っていたら、兄の看護で竃門妹が入ってきた。こちらを見る彼女の目は初対面の人を見る目であった。それと共に、竃門妹が以前の彼女でないことはその立ち居振る舞いで直に分かった。以前の無邪気さはなく、年相応の優美さがあった。

 

「兄のお知り合いですか?」

「ああ、隊士の獪岳だ」

『・・・・・・』

 

刀は黙していた。今の竃門妹が喋る刀を受け入れがたいと考えたのだろう。それとも、「初めまして」と応じられることが耐えられないと思ったのかもしれない。それは、少しばかり感じやすすぎる見方か。

覚えていて欲しいと望むのは感傷に過ぎないとそう思うべきだろう。

 

「禰豆子、獪岳と―――、俺たちがとても世話になった人なんだ」

 

思わずといった風に竃門が口にした。きょとん、とこちらに瞳を向ける竃門妹につい俺は言ってしまった。

 

「機会があったら、双六をしないか?」

「双六?」

 

目を丸くする竃門妹。意味を掴みかねて、小首を傾げてふわりと笑った。

 

「ええ、是非。兄もカナエさんも5人で。えっと、5人で」

 

誰を含めて5人と言っているのか分からずに、そう言った竃門妹に俺は微笑した。

 

「ああ、5人で」

 

無意識下で加えられた5人目である刀に、俺は、そして刀も喜色を隠すことは出来なかった。

 

 

 

あまり長居するのも悪いだろうと、竃門の怪我がこちらの想像以上に酷かったので俺は早めに席を立つことにした。

 

「それでは、またな」

「はい、獪岳さん。あ、カナエさんが獪岳さんが顔を見せないと怒っていました」

 

俺はぴたりと動きを止めた。元・花柱が怒る、俺に対して?何でだ?そもそも怒っている元・花柱が想像できない。蟲柱ならば想像出来るけれど。

 

「元・花柱が怒っているのか?」

「はい」

「何で?」全く理由が思い至らない、多分。

「獪岳さんが会いに来ないからです」

「だから、なんで?」

『とりあえず、会いに行ったらどうだ?』と刀。

「ええ、それが良いです」

 

妙に押してくる二人に俺は考え込む。

 

「これ、何かの罠か?」

『そなたは人の機微が分かっておらぬな。つくづく残念な奴め』

「基本、残念な刀にそこまで言われる筋合いはねぇよ」

「この件に関しては俺も刀さんと同意見です」

 

変に含みを持たせる二人に引っかかりつつ、俺はそのまま元・花柱へ挨拶に向かった。元・花柱に会うのはいつだって心が浮きたつのだから。

 

 

 

 

獪岳

本シリーズでは刀と出会ったことで救済ルートに入った。しかし、この刀のせいで産屋敷側の主力メンバーからは外され、結果、ひたすら本編とは関わらない道を歩むことに。当初の予定になかったカナエさんとの恋愛フラグを立ててしまった。

 

 

狂乱、尊大、ポンコツ、ギャンブルに弱いという要素から某漫画・キャラから作られていることが分かる人には分かってしまう。

自身を中心に能力を発揮するので利用者もその攻撃範囲から逃れられず、割に使えない権能だったりする。そもそも、人が使用することを前提とした刀ではない。

 

竃門妹

刀と獪岳の記憶は夢の中くらいの朧気さなので覚えていないに近い。しかし、知人から親しい知人になるのが妙に早かったりする。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。