セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる1-1
自分が某有名児童文学の登場人物と悟った時、俺が真っ先に思ったのはただ一つ。俺にそんな大役は無理だ。陰の主人公にして英雄、セブルス・スネイプだなんて!!
そういう訳で物心つくかつかないかの幼子である俺―――幸か不幸か未だ魔力は発動していない―――は、今後の方針をどうするかなーと考え込む。本編でセブルスは魔法使いの子供の為、父親から暴力、母親から育児放棄されていた。この二人も大概だが、その心境は分からなくもない。異質なものに恐怖してしまう父親は大概の人間の反応であり、受け入れがたいのは理解できる。人の許容範囲はそう大きくない。歴史的に自分の子供でないチェンジリングの子(妖精の子)だとして虐待してしまう話はあるのだ。しかも判断方法が既に暴行というか、人間なら死んでしまうだろ?という手段。これは判断方法なのか?とツッコミ入れたくなる。
母親の方が世間知らずのお嬢様育ち。事態の解決を行える実務能力に欠けている。家出した為、実家を頼れず孤立したため思考停止状態に陥ったのではなかろうか。俺としては、母親が実家に泣きついて俺だけ実家に預け、夫の記憶操作をしてしまえば良くない?わりと腕の良い魔女だったでしょ?と思うのだが、思いつかなかったのか夫に不誠実などと真面で甘っちょろいことを思ったのか。こういうところが、お嬢様育ちなのだろうな。
俺は深い深いため息を吐いた。その時、声がかけられた。
『おやおや、随分、深いため息よのぉ。幼子とは思えぬため息よ。どうしたのだ?妾に話してみよ』
どこか面白がる風に彼女は尋ねた。
そう、彼女との出会いが、俺とセブルス・スネイプの人生が変わった瞬間。ここから、某児童文学と陰の英雄は、とんだ横滑りを始めるのだった。
セブルス・スネイプの人生は、俺からすると救いがなさすぎる。死んだ後に陰の英雄と称えられても・・・。それに、俺にダブルスパイを成功させ、教授のハードスケジュールをこなし、ハリー・ポッターを陰から守りつつ憎まれる、そんな過酷な人生は御免こうむる。そもそも、俺は正当に出来れば評価以上に褒められたい性質なのだ。お調子者と言いたいならば言え。こちとら褒められて伸びるタイプだ、きっと。
そこで話を戻す。セブルス・スネイプは優秀な教授、魔法界なんぞに拘るから人生ハードモードに突っ込むのだ。俺の見るところ魔法界は魔境だ。後ろ盾のない優秀な魔法使いは駒として使い潰されるものだ。セブルスしかり、リリーしかり、ハリーしかり。魔法とは、きっぱり縁を切った方が良い。そんな自論を彼女にぶつけた。彼女以外にそんなぶっちゃけた話出来るものではなかったので。また、本編部外者の彼女ならば話しても問題はあるまいという打算もあった。
彼女は俺の話を大人しく聞いていた。
どこまで理解しているか分からないが、俺としては構いはしない。単に話したかっただけだからだ。
『なるほど。そなたは魔力を不要と断じるのだな。ならば、妾と契約をせぬか?妾ほどの存在ならば、そなたの魔力全てを提供することになろうぞ』
魔力がない=スクイブ。なるほど、これで魔法界とは縁が切れるというものだ。しかし、契約というのは少し気になりはする。というか、そもそも、彼女は何者なのだ?
『妾か?妾は水の精霊だ。契約することで、そなたは精霊使いとなり、妾はそなたの魔力をその代償として受け取るということだ』
魔力を持っていると、絶対にホグワーツ入学のお知らせは届くだろうし、その前に虐待されるだろう。セブルスはホグワーツ行きは嬉しかったのだろうが、俺は知っている。それは不幸特急の乗車券だ。
また、某児童文学に精霊使いは存在しなかったので、俺は深く考えもせず了承した。人生の大きな分岐点ではあったのだが―――特に後悔はしていない。人生の相棒を得たと言い切れるのだから。
結果はおいおいとして、だらだら俺の半生を述べても仕方ない。今日はホグワーツの入学式、しかもハリー・ポッターが入学年、つまり本編が始まったのだ。
ところで、俺が影の英雄から降りても某児童文学の修正能力は凄まじいものがある。ハリー・ポッターの両親は亡くなっており、シリウスはアズカバン。魔力のない精霊使いの俺は本年度からホグワーツ教員として存在しているのだから。反対に違うこともある。まず、俺は魔力がないので魔法薬学教授ではない。精霊学を教授することになる。また、以前と違って精霊使いが増えている。例えば、アーガス・フィルチは風の精霊使いだ。スクイブは魔力がないのではなく上手く使えないだけ。故に、俺の紹介?で名門のスクイブは軒並み精霊使いになっている。結果、魔法界は光派・闇派を大きく上回る精霊派が名門を主として広まっている。今、光と闇の対立は一部地域の縄張り争いレベルに下がってしまった。結果として、魔法界かなり平和になったんじゃね?という感じだ。うんうん、平和なことは良いことだ。一部の戦いたい連中もいることはいるが大多数の名門が存在する精霊派にガチで盾突く程の力はない。また、精霊派は今や弱小派閥である光派・闇派にあえて関わらないという方針なのである。
故に、ハリー・ポッターもそれほどは英雄視されていない。今回は、楽しく穏やかなホグワーツ生活を送ると良い。児童文学を読む限り、セブルスに負けず劣らずハリーも人生ハードモードだものな。学生のうちは教授の義務範囲内で守ってあげよう。もっとも、本編のセブルス並みに守らないので悪しからず。自ら危険に突っ込まないように、と一方的な忠告を心の中でだけ言っておいた。
そのハリーは組み分け儀式中だ。帽子と相談中といったところか。そろそろ決めないと組み分け困難者になってしまいそうだ。ところで、ネビルはハップルパフへ行き、原作と異なっているが、ハーマイオニーとロンはグリフィンドール。あ、今、ハリーの組み分けがグリフィンドールに決まった。それ程、大騒ぎしていない風に見えるのは、こっちの主観によるものか?
原作修正力といえば、クィレルはやっぱりターバン巻いてニンニク臭いし、セブルスの代わりの薬学教授は陰気っぽい。あんまり原作を拒絶するのも逆に拘っているみたいなので俺も服は映画に従って黒一択、しかし、このボタンばっかりなの正直、着替えが面倒くさいんだが。セブルスは何でこんな服を愛用していたのだろうか。趣味?意味が分からん。但し、髪ベトベトなのは元日本人として風呂好きな血が騒いでそこは変えさせてもらった。あと、度々、床屋へ行けず長髪にしている。結んでしまえば邪魔にならない。故に外観は育ち過ぎたコウモリ(改め)といったところか。そして、今後一人称を吾輩で統一しよう。
さて、校長が相変わらずコメントに困る挨拶をしていたが、やっぱり賢者の石をホグワーツに持ち込んだか・・・。グリンゴッツに置いておけば何かあってもグリンゴッツの責任なのに何で厄介ごとを生徒のいるホグワーツに持ってくるかな?と校長の思考に疑問を抱かずにいられない。本当、何を考えているのだろうか?ハリーを見ていたら、額を押さえてクィレルと薬学教授の方を気にしている。同じハイテーブルでも位置の違う吾輩は、ハリーが見当違いの疑惑を抱いているのを(この時点では疑惑までいかないか)―――によによと面白く眺めているのだった。