セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる2-4
フクロウ便を使うより早く確実なのでハウスエルフのメリーアンにあちこち使いを頼んだ、その返信を抱えて吾輩がマクゴナガル教授に報告へ向かった。マクゴナガル教授はグリフィンドール寮前にてハリーに捕まっていた。ハリーが一生懸命に家へ戻りたくない旨を言っているが、今のマクゴナガル教授にそれに対応できる余裕はないだろう。
「失礼」
吾輩が声をかけるとハリーとマクゴナガル教授はパッとこちらを向いた。
「セブルス、どうしました?」疑問形でマクゴナガル教授はくちにしつつ、こちらの両手いっぱいの書簡に大体を察したようだ。
「魔法省が即、闇祓いを派遣してくれるそうです。それと、理事会が―――」
「理事会・・・・・・」
小さくマクゴナガル教授が呻いた。
吾輩もその一報を聞いた時は同じ反応がした。ちらりとハリーへ目を向け、聞かれても良いのかと判断する。
「安全の為、理事会の一部が生徒の帰宅に付き添いを申し出ています。その為、理事会メンバーが今からホグワーツに入りたい、と。吾輩は許可を出し、生徒の安全確保に協力願うべきと思います」
「分かりました。即、許可します。ちなみにメンバーは?」
「筆頭はレストレンジ夫婦です。名門ですが、あの夫婦は武闘派なので心配ないでしょう」
「ベラトリックスとロドルファス・・・・・・確かに武闘派夫婦ですね」
ゆるりと吾輩はハリーへ視線を向ける。そろそろハリーには退場して貰いたい。
「ところで、ミスターポッターはなぜここにいるのかね?」
「あの、僕は学校に残りたいと」
「危険なので閉校処置にするのです。学校は生徒の安全の為、保護者へ送り届け、それを確認する義務があります」
取り付く島もなくマクゴナガル教授が言い切る。正論だ。こちらが脱帽する程の義務感である。
「マクゴナガル教授。その件で提案です。急なことで保護者側の都合がつかない者もいるでしょう。そこで、そのような生徒は漏れ鍋で非戦闘職員と共に待機ということにしては?どちらにせよ、教職員皆、ホグワーツから退避する必要があります故」
「そうですね」とマクゴナガル教授。
例えば、校務のフィルチや占い学トレローニーなど戦闘力皆無の職員はいるのだ。フィルチの場合、契約精霊が暴れるとフィルチ以外が危険なのだけれど。なぜなら、契約精霊は契約者を守ることにしか注力しないので周囲の被害などきにもしないのだ。故に戦闘慣れしていない精霊使いに戦闘を割り振らないことは常識なのである。
「ミスターポッターは教職員と共に漏れ鍋で待機で良いかね?さあ、寮へ戻りたまえ」
ハリーが寮へ戻るのを確認してから、吾輩とマクゴナガル教授は教授室へ場所を移した。他人に、特にハリーやグリフィンドール生に知られると厄介なことになることを報告したいのだ。
「たった今、闇祓いがハグリッドを逮捕、魔法省へ移送しました。明日にはハグリッドの逮捕ならびにアクロマンチュラのコロニーの件が日刊預言者新聞に載るでしょう。ホグワーツの隠蔽体質を疑われない為にも必要です。また、周辺への注意喚起の為にも」
「ハグリッドのアズカバン行は確実ですね」
苦々しくマクゴナガル教授は言った。
「ホグワーツを閉校に追い込んだのですからその責任は大きいでしょう。また、あのコロニーは違法生物の飼育にしても規模が大きすぎます。生徒を人質にしたテロリストと疑われても致し方ありますまい」
「そんな、ハグリッドがそんなことを考える筈ありません!!」
あの単純思考のハグリッドがそこまで考えているとは吾輩も思っていない。考え無しだから、ここまでやらかすことが出来るのだろう。ゆるりと吾輩は首を振った。
「その考えがなくても、そうできることが問題なのです。どちらにせよ、理事会がハグリッドをホグワーツ敷地内から永久追放しても吾輩は驚きませんな」
ハグリッドの方は闇祓いと魔法省へ任せるとして直近の問題は。
「まもなく、理事会の有志が来るので打ち合わせをお願いします」
「それは、そのセブルスに一任したい、と」
「いや、吾輩もちょっと」
互いにルシウスやレストレンジ夫婦に会いたくなくて、互いに譲りあう、もとい押し付けあう。
「マクゴナガル教授は彼らの恩師でしょう」
「セブルスは名門当主として、付き合いがあるじゃないですか」
ホグワーツ教職員同士とは思えない低レベルな言い合いである。結局、吾輩とマクゴナガル教授二人で対応することになったのだが、ルシウスもレストレンジ夫婦もこの未曾有の事態への対処を優先してくれたので面倒がなくて良かった。校長不在が良い方に回ったのだと思う。なにせ、この三人は校長とは相性がとかく悪いのだ。スリザリンOBだからだけではないと思われる。問題の根は深そうだ。
翌朝。生徒たちと教職員(主に非戦闘職員)と理事会有志がホグワーツ特急で帰宅する。朝食はホグワーツ城内のハウスエルフにランチボックス(朝食だけど)を用意してもらい、起き抜け早々に出発という―――何とも慌ただしい感じである。
日刊預言者新聞は良い仕事をしており、ハグリッド逮捕とアクロマンチュラのコロニー、そしてホグワーツ閉校を報じていた。流石に校長も飛んで帰ってくるかと思ったら、魔法省に呼び出されてホグワーツに来れない、と。校長は裁判所の役職も持っていたので、ハグリッドの裁判に圧力をかけられると困るーーーと吾輩が零していたら、ルシウスが校長とハグリッドは関わりが強いので裁判には加われないと法律上、言い立てるそうだ。どちらにせよ、理事会はハグリッドをホグワーツ、禁断の森、近く行き来可能なホグズミードへの立ち入り禁止させると言い切っていた。アクロマンチュラのコロニーはその処分を受けて余りある所業であろうとも。
なお、吾輩はアクロマンチュラ退治に回されるかと思っていたが、魔法省から闇祓いを派遣したこと、吾輩が名門当主かつ精霊使いであることを考慮され、生徒たち、すなわちホグワーツ特急護衛を任された。これは少々意外なことではあった。てっきり、アクロマンチュラ退治に駆り出されると思っていたのだ。
アクロマンチュラ退治といえば、ロックハートは予想通り夜逃げしていた。教職員一同、そうだろうと思っていたので皆の反応も薄い薄い。一年どころか三ヶ月ももたず、教職期間最短記録を樹立させてしまった。後任の予定は今のところない。もっとも、アクロマンチュラ退治が完了しない限り学校の再開も危ぶまれる。ホグワーツ特急内では、あまりに急な休校処置ならびに寮監の説明も足りなかったのか、日刊預言者新聞と生徒各自の考察で盛り上がっている。流石にハグリッドを擁護する声はないようだ。あれだけやらかしていれば下手な擁護も出来ないだろう。擁護派と思われるグリフィンドール生も沈黙を保つのがせいぜいか。
吾輩の知ったことではないが。
アクロマンチュラ退治は思っていたより苦戦を強いられているようだ。三日を過ぎても日刊預言者新聞上での進捗がない。また、教職員の話からも、そのようである。長期戦になりそうだ。漏れ鍋待機組の吾輩たちは、居残り組の生徒たちに規則正しい生活と一応は彼らの安全を見回っている。間違ってノクターン横丁へ行かない限り、この辺りの治安はそう悪くない。
遅れ気味の、というより全く進んでいない闇に対する防衛術の座学をハリー他居残り組に行う。彼らにとって有難迷惑だろうが近い将来に感謝することだろう。遅くとも、期末試験の前とか。
そして、すっかり漏れ鍋居残り組の生活パターンが出来上がった。朝食の後、午前中に吾輩が担当して座学を。主に遅れまくっている闇に対する防衛術の科目だ。昼食後は各自、夕食まで自由。夕食後は基本、外出禁止である。三食皆で食事することで出欠と安全の管理を行うことにしている。
朝食後、教材(テキスト)を取りに行ってから漏れ鍋のテーブルへ行ったら―――居残り組ハリーの両隣にロンとハーマイオニーが当然の様に座っていた。
「増えている」
思わず吾輩は言葉を零した。あまり適当な表現ではない。慌てて吾輩は尋ねた。
「なぜここに、ミスターウィーズリーとミスグレンジャーがいるのかね?」
理由は大体、分かっているのでハリーに向けて。ハリーは心当たりがある様子で居心地悪そうだ。代わりにハーマイオニーが答えた。
「ハリーからの手紙で、プリンス教授から直接授業を受けていると。とても羨ましくて、是非、私も参加させて下さい」
勉強好きのハーマイオニーは嬉しそうに言う。多分、ハリーは愚痴のつもりで手紙を書いたと思われる。そして、ロンは無理に付き合わされたとみた。とはいえ、ロンもハリーも自習で好成績を出せるタイプではないし、そもそも学生の本分は勉学である。
「まあ、よい。一人二人増えたところで変わるまい。では、今日の授業を始めよう」