セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる2-5

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる2-5

 

 

翌日の朝食。授業前ではなく朝食である。

 

「また増えた」

 

朝の挨拶前に吾輩は零した。デ・ジャ・ヴだ。元気に挨拶するハリー達居残り組にロンとハーマイオニー、そして双子がいた。ウィズリーの双子が増えている。

 

「「おはようございます。プリンス教授」」

 

いや、ロンとハーマイオニーが朝食からいるのも不思議じゃないか?理由は授業参加で、ついでに朝ごはんを食べよう位の話だろう。おざなりに吾輩は挨拶を返した。テーブルの椅子が足りないのか、騒々しさにうんざりしたのか、校務のフィルチと占い学トレローニーはカウンターへ移動していた。吾輩も一瞬、カウンターへと考えたが、監督が必要かと諦める。漏れ鍋のマスターが挨拶と共にパタパタと朝食をサーブした。賑やかに朝食が始まる。

ウィズリーの双子(フレッドとジョージ)の目的は授業ではなかった。奴らがハーマイオニーなみに勉強好きとは思えないので他の目的がある方が納得だ。

ウィズリーの双子の目的は―――吾輩に魔法薬学の質問をすることだった。悪戯に使う魔法薬に躓いていたようだ。

いつもの座学が終わってからウィズリーの双子の質問に答える。その間、ハリーとロン他はぽかんとその様を見つめ、ハーマイオニーはキラキラした目でメモを取っていた。

 

「何でプリンス教授がそんなに魔法薬学に詳しいんだ?」

 

ぽつりとロンが呟いた。ウィズリーの双子は笑って左右からロンの肩を抱いた。

 

「いやいやロン坊や」

「プリンス教授は魔法薬学のスペシャリストだ」

「「そもそもプリンス家は薬学で有名な家だし、プリンス教授はオックスフォードでマグルの薬学を修めている」」

 

吾輩は思わず顔をしかめた。

オックスフォード卒はホグズミード教授紹介の折、たった一度だけ校長から皆へ紹介された。そもそも、吾輩はホグワーツ卒ではない。当時のホグワーツは精霊使いを受け入れていなかったからだ。生徒に納得させられる経歴としてマグルのオックスフォード卒という肩書を言ったのだろう。

とはいえ、名門の子女は特にだが、精霊使いであることで充分、ホグワーツの教職員として納得できただろう。つまり、オックスフォード卒は付け加えた肩書のひとつに過ぎない。まして、プリンス家が薬学に特出していることは、知る人ぞ知るといったところである。

よくまあ、名門ならばともかく没落しかけたプリンス家のことをほぼ一般に近いウィズリーの双子が知っているものだ。逆に感心する。

 

 

 

そして翌日。

 

「また増えた」

 

しれっとパーシー・ウィズリーが加わっていた。日々、生徒が増えていないか?

 

「プリンス教授が特別補講をして下さる、と。今年の防衛術の授業がアレだったので、是非、参加させて下さい」

「別に特別補講している訳ではない。しかし、防衛術がアレだったのは認めよう」

 

ロックハートの件は、吾輩も被害者の一人だけれど、生徒の方がよっぽど被害者である。しかも、ホグワーツは一時閉校状態だ。今年、オウル試験・イモリ試験を受ける生徒には本当に補講してやった方が良いかもしれん。

マクゴナガル教授に相談しよう。校長?校長は頼りにならない。今現在、問題となっているアクロマンチュラに対しても魔法省の介入はどうの、ホグワーツの自治がどうのと世迷い事を言っている。しかも、アクロマンチュラ退治に出馬するでもなく、だ。そこで、マクゴナガル教授がホグワーツ側窓口となり、さくさく事態に対処している。校長不在時にマクゴナガル教授が指揮を取っていたのが、そのままアクロマンチュラ対策指揮へシフトしたようだ。今更、校長がホグワーツは不可侵領域と言っても誰も相手にしていなかった。それより危険度マックスのアクロマンチュラの方が問題である。

建前を言っている場合か、現場を見ろ!!というのが現場の総意のようだ。

 

 

 

そして、また翌日。

ネビルとその祖母オーガスタ夫人が来た。午前の授業に参加する生徒は増える一方なのだが、教職員は増えない。戦える職員はアクロマンチュラ討伐にかかりっきりだし、他の職員も魔法省との連絡係や戦闘チームのサポートに付きっきりなのだ。一応、こちらの状況を報告してはいるが、ゴーストのビンズ教授でも居てくれれば・・・あの人はホグワーツ城に固定されているようなものだから無理か。校務のフィルチはともかく―――吾輩の視線はカウンターで酔いつぶれているトレローニーを冷めた瞳で見据える。あいつも首にすべきじゃないのか?

オーガスタも吾輩同様の冷たい目をトレローニーへ向けてから、吾輩に苦笑を見せた。

 

「久方ぶり。苦労しているようだね」

「お久しぶりです。ミセス・オーガスタ。申し訳ありませんが、午前中は授業がありまして」

「ああ、構わないよ」

 

オーガスタは軽く手を振った。生徒たちを見やってから申し出る。

 

「そうだね。私も少し手伝おうかね」

「・・・・・・是非、お願いします」

 

昼食後、子供たちは自由時間ということでダイアゴン横丁へ遊びに行った。最近は午後、個別に質問に来る生徒もいるがオーガスタ夫人が来ていることに皆、気遣ったのかこちらに来ることはなかった。漏れ鍋マスターに頼んで個室を用意して貰い、吾輩はオーガスタを案内した。なお、ネビルはハリー達とお店を冷やかしに行ったようだ。

マスターが紅茶をサーブした後、オーガスタは杖を一振り、声が聞かれぬよう魔法を使った。

 

「アクロマンチュラの退治は完了したよ。一応、打ち漏らしがないかの確認と―――」

 

オーガスタは眉をひそめた。

 

「キメラの痕跡があって、その調査も始まった。故に学校再開は三週間後だろうね。正式発表は魔法省からなされるよ」

「・・・・・・ミセス・オーガスタから連絡ということはホグワーツは未だ混乱していますか」

 

キメラの痕跡とは犯人はハグリットか。というか、他に犯人はいないだろうが。

 

「森番ハグリットが犯人ではホグワーツが叩かれるのは仕方ないね。下手な処分をすれば非難にさらされるから、ここはきっちり片を付けておいた方が良いよ」

「それは校長に言って下さい」

 

未だハグリットを擁護するホグワーツ職員がいるとしたら、校長ぐらいだろう。吾輩は何もするつもりはない。ハグリットは自分のやらかしたことを過不足なく償えばそれで良い。過ぎた制裁も甘い処分も何か違うと思うから。

 

「キメラの件、あまり驚いていないね。知っていたのかい?」

「いいえ。ただ、あいつならやりかねないとは思っていました。ノクターンの常連なのは知っていましたし」

 

オーガスタははっきり眉をしかめた。

 

「ノクターン?あんたは危ないところに近づくんじゃないよ」

「子供扱いですか?」

 

吾輩は笑ったが、オーガスタは笑わなかった。

 

「精霊が暴走したらノクターン横丁が吹き飛ぶよ」

 

ノクターン横丁どころか町一つ吹き飛びますね、という軽口は止めておいた。軽口でなく、実際のところ、吾輩の精霊ならば町一つどころか街一つ消し飛ぶことだろう。洒落にならない。

 

「話を戻すよ。ミネルバとも話したけれどね、セブルスが漏れ鍋で補講しているのは知っているし認めてもいる。好評価だよ」

 

オーガスタは嬉し気に言う。まるで、ネビルが他の人から褒められた時のようだ。

 

「それで」心なし素っ気なく吾輩は促した。

この年でストレートな褒め言葉は少しばかり気恥ずかしい。

 

「学校再開までもう少しかかるし、日々、生徒が増えているんだろ?漏れ鍋では難しいと心配している。そこでロングボトム家が場所、別荘の一つだがね、そこを提供することになったよ」

「ホグワーツ再開までの間、ロングボトムの別荘を間借りすると?」

 

それは、マグル生まれには今までのようにちょくちょく来る訳にはいかないのでは?吾輩の懸念が伝わったのかオーガスタは首を振る。

 

「漏れ鍋も今まで通りに行う。マグル生まれはこっちの方が来やすいし、あくまで休校中の補講というスタンスで行うらしい。セブルスにはロングボトム別荘の方を担当して貰いたいそうだよ、ミネルバは。私もそうして欲しいね」

 

ネビルの指導を考えれば、オーガスタがそう希望するのも納得である。それに問題はない。逆に、日々、授業に参加する生徒が増えており、漏れ鍋では近く対応できなくなるのは目に見えていた。オーガスタの申し出もといミネルバの提案は、吾輩の報告によるものだろう。

それから、いくつかの連絡事項と世間話をしてオーガスタ夫人は帰った。

 

 

 

数日後。吾輩と居残り組はロングボトムの別荘へ移った。校務のフィルチは漏れ鍋オーナーの要望でこのまま店の手伝いとして残留することになった。トレローニーも残留組に入ったが、多分に漏れ鍋のカウンターで酔いつぶれる姿が目に浮かぶようだ。

ロングボトムの別荘に移ってから、生徒は居残り組と生粋の魔法族の割合が増えている。居残り組とはハリーの他、ウィズリーの兄弟とジニー、ハーマイオニーそしてネビルだ。居残り組は別荘で合宿している。気心の知れているメンツと少人数の為か、皆はキャンプのような非日常感を楽しんでいるようだ。

教師としては、ここがロングボトムの管理地の為、保安の方は漏れ鍋よりも気を抜くことが出来る。周囲は牧草地でのんびりした感じだ。ダイアゴン横丁のような面白味はなくとも騒がしくなくて、吾輩はこちらの方が心が休まる。呑気に過ごしていたが、衝撃的なニュースが流れた。

あのゴシップ記者リータ・スキーターの記事~ロックハートの凋落~である。吾輩はリータ・スキーターのことを直接知らないが、ゴシップ記事を書く才能はある。ゴシップ記事は失礼か。リータは読者に伝えたい方向へ結論を導くのが上手いのだ。今までリータのことをあえて事実を言及しなかったり、捻じ曲げたりする記者と思い込んでいたが、今回の記事はほぼ事実しか載っていない。わざわざ捏造する必要がない程にロックハートはやらかしてくれたからな。そして、この時期にこの記事。有名人ロックハートへ直接攻撃する記事に出版社がGOサインを出したのは、魔法省とホグワーツ側が少しでもアクロマンチュラ・ショックを和らげるためではなかろうか。どちらにせよ、ロックハートがホグワーツ城から夜逃げしたことはホグワーツ中に知れ渡ってしまっていた。今更、ロックハートの著作は売れないだろうと思っているのかもしれない。加えて、学期始まりに指定図書として大量の本を売りさばけたので在庫を抱えていないのも大きいか。ロックハートを利用している感じはするが、ホグワーツもロックハートには大概迷惑をかけられたので同情はしない。そもそもホグワーツ生の大半にロックハートの実力は知れている。午後、紅茶片手にガゼボ(西洋風あずまや)で日刊預言者新聞のゴシップ欄を読む吾輩にウィズリーの双子が声をかけた。

 

「「プリンス教授」」

「ああ、ロックハートの記事ですか」とフレッドかジョージか。

「はっきり詐欺師と明記されていますね」

 

少し双子の顔は困った風だ。この双子が記事を気に病むほどロックハートと親しかったとは思えない。この記事は憤慨する程、でっち上げではないと思うが。

 

「どうかしたのかね?」

「うちのママが信じてなくって」

「リータの捏造記事だって。この記事はでっち上げじゃないんだけれど」

「ホグワーツに通っていたら、ね」

 

この記事の信ぴょう性、ホグワーツ生ならば身をもって分かることだろう。

 

「ママはゴシップ記事が好きなわりに、この記事は全否定なんだから」

 

吾輩は新聞を畳んでテーブルに置き、足を組みなおした。

 

「君たちの妹・ジニーは未だロックハートのファンなのか?」

「「いやいや、我が妹はそんなに間抜けじゃありません」」

 

そうか。ジニーはロックハートのファンは止めたのか。学年一の秀才ハーマイオニーはまだ目が覚めておらず、つい朝方もロンと口喧嘩していた。詐欺に引っかかるのと頭の良さに関連はないと思い知らされた。自分が正しいと思っている人程、逆に騙されていたことを認めづらいのだろう。どちらにしろ、ロックハートはほとぼりが冷めるまで表には出てくることはない。そして、ファンとは熱しやすく冷めやすいものだ。

 

「貴公の母親も直に興味を失うであろうよ。気にすることはない」

「「それって精霊使いとしての占いですか?」」

「さあな」

 

精霊使いに占い能力はないので、吾輩はただ笑った。

 

 

 

ここがロングボトムの敷地内だからか、オーガスタ夫人を筆頭にロングボトムの専業主婦方やご老人たちが様子をちょいちょい見に来てくれて、またロングボトムのハウスエルフのおかげで漏れ鍋の時より吾輩の負担はずっと減っていた。例えば、今みたいにガゼボ(西洋風あずまや)でお茶を楽しむ時間がある位には。

他の教職員は忙しそうだが、吾輩は姿現しが出来ないので(精霊の通り道という移動手段はあるがアレは緊急時にしか使わない)、ロングボトム別荘での監督と課外授業を受け持っているんだ。なお、吾輩の移動はハウスエルフ・メリーアンによる付き添い姿現しである。子供か。

ところで、ホグワーツのことだ。昨日の日刊預言者新聞で魔法省ならびにホグワーツ共同で森の安全宣言が出された。怪しいな、とは思うけれどアクロマンチュラ・コロニーは壊滅させたのだろう。この前、わざわざ闇祓いのロングボトム夫婦(ネビルの両親)が教えに来てくれた。ホグワーツの教員からは手紙のみなので正直、助かった。

どうやら学校再開に集中してこちらへの連絡がおろそかにしているのか、闇祓いのロングボトム夫婦の別荘だからか、この二人に連絡を頼んだようだ。おかげでアクロマンチュラ戦の詳細を知れたが、吾輩は特に知りたいとは思わなかった。ケトルバーン教授が無茶して一体、丸々の標本にしたとか。マクゴナガル教授とフリットウィック教授が無双モードで、ホグワーツ教員の実力を知らしめたとか。それは少し見て見たかったかも。

 

 

 

それから一週間後。ホグワーツは再開した。

あれ程の大騒動があったわりに全て元通りに。但し、今年の闇に対する防衛術のロックハート教授が夜逃げした以外は。その代わりとして、吾輩が座学担当、実技は他職員の持ち回りでこの一年を乗り切ることになったのだった。

 

 

 

 

 

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