セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる3-1
教授職に就いて吾輩も既に三年目、新人とは言えずベテランとも言えない。この年は確か―――シリウス脱獄とピーター・ペティグリューが真犯人と発覚するのだ。ついでにリーマス・ルーピンが闇に対する防衛術の教師になるが、そこは大した問題ではない・・・・・・多分。生徒に危害が加わらなければルーピンが人狼であろうが吾輩は気にしない。但し、シリウスか。あ奴と吾輩は浅からぬ縁があるので何とも、今年のホグワーツは吾輩にとって少々厄介なことになりそうである。
日刊預言者新聞の一面にシリウス脱獄が載っていて、やっぱり脱獄しやがったか、馬鹿犬と思った。脱獄のきっかけとなるウィズリー一家のガリオンくじの記事があったことを思い出す。吾輩としては前世知識からペットのネズミに注目したがよくまあシリウスはあの写真から気付いたものである。いや、あいつはペティグリューがネズミの動物もどきと知っていた訳で、でもルーピンは気付かなかったのだから、シリウスの執念深さはけた違いなのだろう。シリウスに付け狙われるペティグリューには同情・・・・・・しなくもない。
入学の後、有難いことに今年は注目の新入生はいないし、精霊使いもいない。一昨年はネビル・ロングボトムが。去年はトム・レストレンジが入学して吾輩としては気の休まる暇がなかったのだ。せいぜい、お騒がせのシリウスだけに注意を払えば良さそうである。とはいえ、シリウスが遠因の事件が入学前にあった。詳細については入学直後の職員会議にてルーピンから報告がなされた。全教職員が驚くに十分な事件だった。
「シリウスを探して、ディメンターがホグワーツ特急に乗り込んできました」とルーピン。
ディメンターがシリウス捕縛のため、ホグワーツに配置されることが決まっていたので保険でルーピンが特急に同乗していたのだ。
「生徒の心理的ケアが必要ですね」
マダム・ポンフリーが苦々しく言う。マクゴナガル教授が「だからディメンターをホグワーツに入れるのは反対だったんです!!」とヒステリックに喚いた。校長はもごもごと魔法省を非難していたが、いやいや校長が一昨年はホグワーツ近くでドラゴン飼育を見逃し、去年は森番のアクロマンチュラ繁殖騒ぎとロックハートの夜逃げによる任命責任で信頼度がた落ちし、魔法省の要請を突っぱねられなかったからである。つまり、半分は校長のせいじゃないか?
ところで、ディメンターだが対抗できる魔法は守護霊の呪文だけだったと思う。吾輩たち精霊使いには対抗術がないのか?出来ないとは思わない。遭遇したいとは思わないが、存在の格としてディメンターと精霊には大きな差がある。上位存在の精霊がディメンターに劣るとは吾輩には思えないのだ。また、ルーピンの報告からディメンターがハリーを狙っていたことが告げられた。ディメンターがハリーとシリウスの関係を知っているとは考えられないので、ディメンターがハリーを狙う理由がよく分からない。校長はルーピンに、もしハリーがディメンター対策を相談されたら、守護霊の呪文を教えるように指示していた。そもそも守護霊の呪文を教えることの出来る教師は少ないし、ルーピンの担当教科からすれば適任であろう。
ディメンターはあくまでシリウス狙いではあるが、ハリーの一件から生徒を襲わない保証はなく、教師陣はシリウスのみならずディメンターから生徒を守らなければならない。あれ、魔法省のせいで余計に状況が悪くなっていないか?
いや、そもそもシリウスが脱獄したせいで―――やっぱり、全てシリウスが悪いという結論に至った。
ディメンターのホグワーツ特急乱入事件でピリピリした空気も、魔法省に正式抗議したのが効いたのか、ディメンターはホグワーツの敷地内からかなり退いている。また、どんな緊迫した状況であってもそれが日常になれば人はそれなりに慣れるものである。
そして、シリウスは未だ見つからない。あの駄犬は動物もどきで潜伏しているのだろう。ねずみはともかく黒犬ならば見つかりそうな気もするのだが。なお、ディメンターは動物もどきをあっさり脱獄させてしまうーー―そういう訳でディメンターがシリウスを捕縛出来るとはとても思えない。本当にディメンターのホグワーツ派遣は意味がない処置である。
ところで、ハリーはルーピンの初授業でまね妖怪をディメンターに変化させ、もう一歩で教室を狂乱のるつぼに叩き落しかけたらしい。ルーピンが吾輩を捕まえて仔細漏らさず説明してくれる。
「それでハリー自身、危機を感じたらしく僕に対抗魔法を教わりたいと言い出したんだ」
そうか。じゃあ、教えてやればよいだろう。なぜ吾輩にその話をするのだ?前世知識では、吾輩と貴公は同級生だが、今はホグワーツに通っていない吾輩とは全く欠片も関係がないのだぞ。冷めた瞳で吾輩は言った。
「ならば、教えてやればよかろう。貴公は教師であることだし」
「そうだね。僕があの子に教えてあげられるなんて、もう胸がいっぱいだよ」
ルーピンはハリーに対する思い入れが強すぎやしないか?いや、正しくは親友の息子か。あまり一人の生徒に入れ込むのも如何なものかと思うが、吾輩が丁寧に教えてやる義理もない。あまりにも目に余るようであれば、口を出すべきだろうが。
とはいえ、ハリーの特別扱いは校長が筆頭になっているので新人ルーピンに釘を刺してもさして意味はない。それにしても、闇の魔法に対する防衛術の教師にまともな教師はいないのだろうか?一応、ホグワーツはイギリス唯一の魔法学校の筈なのに。もっとも、ルーピンの授業は生徒のウケが良いし、授業レベルも例年に比較してかなり良好な方である。前年はロックハートだったので、あれと比べればまともな授業をやるだけで高評価だろうとも。今年は座学と実技の補講は不要のようだ。座学は吾輩が受け持たされたものだ。他の教授陣に比べれば時間はある方だが、絶対に新人だから押し付けられたのだと思う。そもそも、精霊使いが魔法使いの座学を受け持つなんて訳が分からん。ともかく、今年は解放されそうだ。頼むから、きっちり一年は勤めて欲しいものである。それ以上、ルーピンに期待はせん。なにせシリウス達、愚連隊の一員なので吾輩はルーピンに欠片も信頼がない。
それにしても、ルーピンは吾輩に馴れ馴れしい。ホグワーツ教授という一応、今は同僚で同年代だから?それとも単にこいつが人見知りしない性格だから?
ともかく吾輩がホグワーツ教授になって以降、闇の魔法に対する防衛術の教授は問題ありの人物ばかりだった。一年目はクィレル、あの人を憑依させて暗躍させていた。二年目はロックハート、自己顕示欲の高い詐欺師。生徒と教師陣に授業の面で多大な迷惑をかけた。三年目はルーピン、人狼で教授職はきっちりこなしているが、あのシリウスの親友にして愚連隊の一員である分、身の内に爆弾抱えている気分である。
やっぱり、今年の防衛術教授ははずれだな、と吾輩は断じた。シリウス脱獄のタイミングでのルーピン起用は最悪である。決めたのは、校長だけれど。校長はどこまで把握しているのか、単に運が悪いだけか。はてさて、どちらだろう。
平穏は容易に破壊されるものである。
吾輩たち教師陣は呆然とグリフィンドール寮入口の絵画を見ていた。その絵画はふとったレディがいた筈の絵画で、今は空白。何よりも派手に切り裂かれていたのだ。マクゴナガル教授が青い顔でふとったレディの安否確認を他の絵画メンバーへ依頼し、それにより犯人は判明した。そう、アズカバンから脱獄した駄犬シリウスである。いや、吾輩、知っていたけれど、シリウスに問いたい。絵画を引き裂いて何がしたかったんだ?ふとったレディが脅されたからといってグリフィンドール寮に危険人物を入れる訳がない。パニックと恐怖とヒスでまともな事情聴取も出来ていないが、ふとったレディは生徒を守るために凶悪犯に立ち向かう程の気概を持っているのだ。今は絵画の中を逃げ回っているが、その心意気や良しである。
対して、シリウス。単に癇癪おこして絵画を引き裂いたに違いない。馬鹿だ、馬鹿だと思っていたが、本気で馬鹿だった。シリウスがアズカバン脱獄をやらかしたのはてっきりペティグリューを確保し冤罪を晴らす為かと思っていたが。もしかしたら、単にペティグリューに復讐するためだったりして・・・・・・。本気で笑えない。どれだけ周囲に迷惑をかけたら気が済むんだ、あの駄犬は。
シリウスがホグワーツに潜伏しているのがはっきりした以上、教授陣は生徒を守るために校内巡回が増やされた。しかも、相手は凶悪犯であり魔法使いとしてのレベルが異様に高いシリウスである。いくら教師でも単独行動は危険だ。ペアを組んで巡回ということになったのだが、このペア組み合わせ、とある思惑が透けて見える。
なぜなら、吾輩とルーピンが全くペアを組まされていないからだ。共通項は同年故という訳ではなく、単にシリウスと個人的繋がりがあり、下手をするとシリウスの助力をしかねないと危惧されている為である。
ルーピンはシリウスも加わっている愚連隊の一員であり友人だからだ。教師の立場より友情を取りかねない。そして、吾輩はシリウスの妹レギュラスと結婚している(なぜか、この世界ではレギュラス・ブラックは女性だ。本当に)、つまり、吾輩とシリウスは義兄弟の間柄なのである。正直、泣きたい。
なぜ、吾輩がレギュラス・ブラックと結婚しているかといえば、純粋にこれは政略結婚だ。後ろ盾の欲しかったプリンス家はブラックの力を得る為、ブラック家は精霊使いを保護するという表向きはウィン・ウィンの関係な政略結婚になっている。もっとも、本当は精霊使いを守るのに母の実家・プリンス家だけでは無理だったのだ。そして、ブラック家は光派闇派と距離を置きたいがためだ。結果として、ブラック家は精霊派筆頭になった。やったね、これで吾輩は安泰である。なにせ、ブラック家はイギリス魔法界の王族だから。
但し、もれなくシリウスという駄犬が付いてきたけれど。
2022/5/7:誤字修正
セブルスはプリンス家を継いだので、当然ながら結婚は必須事項です。原作と異なって初恋こじらせていないので、あっさり政略結婚しています。
お相手がレギュラス・ブラックなのは筆者の好み以外のなにものでもありません。レギュラス・ブラックは助けてあげたいキャラでしたので。そう、マルフォイと遠い親戚というのは、レギュラスを嫁にしたので、その関係で(ナルシッサはブラック家系のお嬢さんでレギュラスとは血縁関係があった筈)セブルスにとっても親戚になるということです。
マルフォイ家からしたら、自分のところと比較すれば家格の低い?プリンス家との親戚関係は一応繋がっているなーくらいの認識かもしれません。もっとも、セブルスが精霊使いなので利にさといマルフォイ家は親戚関係!!と言い張るのかもしれません。
2022/5/21
ディメンダーをディメンターに変更。ご指摘ありがとうございます。
黒当主は生きているパパさんです。セブルスの子供が継ぐまで頑張ってもらう予定です。
オリオン様もヴァルブルガ様も孫をただただ甘やかすポジショニングを楽しんでいただきたい、と。ブラック家当主、当主婦人ではそうも出来ないかもしれないけれど。