セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる3-3

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる3-3

 

 

 

ピーター・ペティグリューは魔法省へ引渡し、シリウスが一応は冤罪ということでホグワーツからディメンターは撤退された。

今頃、シリウスはペティグリューを追って魔法省へ向かったことだろう。それ故に、ホグワーツから見れば事態は四方八方丸く収まったように思えたのだが、問題がひとつ残っていた。

ケトルバーン教授の私室で、教授とマクゴナガル教授そして吾輩、三人が頭を抱えている。つまり、ロンのネズミ・スキャバーズが実はピーター・ペティグリューだったと明かすか否かである。

 

「いつまでも儂がネズミを預かっているとは言い張れぬし」

「とはいえ、可愛がっていたネズミが犯罪者とは、とてもミスターウィーズリーには言えませんし」

「ペットの正体が薄汚いおっさんとか、とんでもない心の傷になりますな」

「セブルス・・・薄汚いおっさんって・・・」

 

マクゴナガル教授は呆れ切っているが否定は出来ないようだ。また、ケトルバーン教授は必死で笑いをこらえているがこらえきれていない。

 

「しかし、本当のことを全く言わないわけにもいきませんし」

 

マクゴナガル教授が困ったように呟く。

全て本当のことを言わないにせよ、少しは本当のことを明かさねば歪みがうまれ、結局は真相が明かされてしまう。それは、どこからも望まれない結果を生み出すかもしれない。

 

「そうですな。ペットのネズミがピーター・ペティグリューとすり替わっていた。故にミスグレンジャーの猫が執拗に狙っていた―――ということでは如何でしょうか?」

「そうですね。シリウスも多分、ピーター・ペティグリューを狙っていたでしょうから、猫とシリウスに同時に狙われていた、今年度頭が怪しいということでミスターウィーズリーを納得させましょう」とマクゴナガル教授。

「確か、あの一家はガリオンくじでエジプトへ行っていたな。そこで、すり替わっていたことにすればよかろう。エジプトの気候が合わずネズミが亡くなったと儂が説明する」

「どちらにせよ、ウィーズリー一家にも協力を願うべきでしょうな」

「魔法省経由でパーシー・ウィーズリーを呼んで説明します。今は魔法省との協力が必要です」

 

校長と違ってマクゴナガル教授はホグワーツの独立方針に拘っていない。いや、拘るには近年のホグワーツは事件続きなのだ。いい加減、手に余っているのだろう。

 

「それでは、パーシー・ウィーズリーに事情説明し、ロン・ウィーズリーへの説得に協力願いましょう。説明時には仲の良いミスターポッターとミスグレンジャーも一緒に。ロン・ウィーズリー自身から二人に話させるのは酷ですし、あの二人は知っていた方がロン・ウィーズリーを支えてくれるでしょう」

 

後日、ケトルバーン教授が魔法生物の専門家として、マクゴナガル教授は寮監として、そしてパーシー・ウィーズリーは色々と魔法省で知った上で、ロン、ハリー、ハーマイオニー三人組に説得し納得させたらしい。

ロンはやはり落ち込んでいるそうだ。

落ち込んでいると言えば、リーマス・ルーピンもだ。親友シリウスがアズカバン脱獄からの冤罪か?疑いである。もう一人の親友ピーター・ペティグリューは死亡からの魔法省の逮捕だ。

その心中は吾輩にはうかがい知れない。吾輩が気にする義理はない。義理はないがモチベーションが低下し教授職に差し障りがあっては吾輩にも迷惑がかかる。

少しは優しくしてやろう、そんな風に思っていた。

 

連日、日刊預言者新聞はピーター・ペティグリューとシリウス・グレイの件を一面に載せている。死んだと思われていたペティグリューが実は生きていたと発覚しても、シリウスが冤罪と思われていないらしい。ペティグリュー殺人罪が殺人未遂に変わっただけである。巻き込まれたマグルは気の毒でならない。二人の諍いは単なる仲間割れと考えられているようだ。

それより大きな問題はペティグリューが動物もどき、しかも未登録ということである。そこから、シリウスも未登録動物もどきでは?という疑いはペティグリューの自供で確定された。ペティグリューにしてみれば、魔法省に拘束されている以上、黒犬版シリウスを警戒されないと自身の安全に関わるからだ。保身の為にシリウスの秘密を売った訳だが無理もない。自身を殺しに来るシリウスの秘密を守る義理等、ペティグリューにはなかろう。

しかし、この件は吾輩にとって少なからず影響があった。

 

 

まず、マクゴナガル教授がペティグリューならびにシリウスへ動物もどきを習得させたのか、また、未登録であったのを知っていたのか―――の事情聴取を取られた。これに関してマクゴナガル教授は全く関与していなかったので何の罪にも問われることはなかった。

問題はルーピンの方だ。シリウス脱獄の際に動物もどきで黒犬に変身出来ることを秘匿していたことは犯罪ほう助に該当したのだ。親友の為にしても当時は凶悪犯と思われていたシリウスを庇う行動は少なくともホグワーツ教員としてはあり得ないと理事会が即日、解雇したのだ。校長は擁護したらしいが中立のマクゴナガル教授が非難したことは大きく(ディメンターの件で怒り心頭だった)、またもや学期中に闇に対する防衛術の教授が不在となった。

結局、吾輩は今年も闇に対する防衛術の座学を受け持つことを指示された。去年のロックハートに引き続いて、今年もかよ!?

しかし、そのような事はたいした愚痴にもならない。それ以上に面倒なことになったのだ。

 

 

つまり、ルーピンが人狼であることがバレた。

 

 

原作ではセブルスがそれとなく?ホグワーツ生にばらした筈だが、もちろん吾輩は何もしていない。ルーピンがいなくなったら確実に防衛術の座学を押し付けられると分かっているのでバラす訳がない。一体、誰が?と思っていたらペティグリューの取り調べの結果だった。なぜ動物もどきを習得したのかを聴取されたらしい、真実薬と共に。魔法界の取り調べに倫理観はないようだ。マグル界ならば自白剤と共に取り調べしているのと同じである。原作でもちょいちょい倫理観が迷子になっていたことを思い出す。

これにより、再度、マクゴナガル教授と校長が魔法省へ呼び出された。人狼と知っていて雇用したのか、から芋づる的に人狼と知っていてホグワーツにルーピンを入学させていたのかへと・・・・・・。原作より魔法省の役人がきちんと取り調べている。わざわざ役人がホグワーツへ来て、吾輩たちまで一人一人聴取を取りに来たのだから。このところのやらかし(一年目はドラゴン騒ぎ、二年目はアクロマンチュラ討伐、三年目の今年はシリウス襲来)が酷すぎて、魔法省の介入を突っぱねられなかったようだ。

 

これにより、ルーピンが人狼と知っていたのは校長、マクゴナガル教授、校医マダム・ポンフリーそして魔法薬学教授であった。なお、吾輩は知ってはいても教えられていた訳ではないので聴取には否定しておいた。さて、魔法薬学教授は校長から脱狼薬作成の為にこのルーピンが人狼という秘密を知らされていた。しかし、彼はそのことを決して快くは思っていなかったらしい。故に聴取では雇用主故に校長の依頼を断れなかったとぶっちゃけた。そもそも、ルーピンも自身の秘密を守りたければ、脱狼薬を自作すべきだったのだ。ルーピンはグリフィンドールの監督生だったので能力的に不可能とは思えないので、吾輩には不可解でならない。結局、これらもろもろが魔法省経由で日刊預言者新聞にすっぱ抜かれた。

 

 

結果、生徒と生徒の親に激震が走った。無理もない。問い合わせのフクロウ、校長への吠えメール、抗議などで英国中のフクロウがホグワーツへ殺到し、上へ下への大騒ぎになった。吾輩も一度にこれだけのフクロウを見るのは初めてである。少し怖い位だ。そこで、ふと思い出す。原作においてルーピンの人狼はバレているのだから、これも原作補正のひとつなのかもしれない。

しかし、この後のことは原作にもなかった気がする。

まず、またもやゴシップ記者リータ・スキーターがやらかした。リータは『堕ちた友情』というタイトルで悪意でコーティングされた記事を発表した。読み物としての出来は良かった。学生の頃に愚連隊から被害を受けた者ならば十分に楽しめただろう。ルーナの父が編集している『ザ・クィブラー』はわりに公正で公平な評論と考察であったが、だからこそ関係者に刺さる内容であった。愚連隊四人組の友情が相当にいびつで歪んでいたのは確かなのだから。

在学中はホグワーツに守られていたが、今、その守りはないため世論は彼らに牙をむいた。魔法界にはろくなメディアがないと思っていたが、そのメディア全てがこの件を扱っていた。確かに一般大衆が興味を持ちそうな話題である。

シリウスがブラックから勘当されていなければ、ブラックの意向と忖度で記事など出来なかったが、今やシリウスはブラックを名乗れない。このあたり、原作と乖離している。

これは吾輩も多少なりと関係していなくもない。吾輩のところにレギュラスが降嫁し(家格から嫁入りと言うよりは降嫁が近い)まあ、その吾輩の子供をブラックの後継にするという手段を取ってしまったのだ。ヴァルブルガ様が結婚の折、レギュラスに「子供は二人産みなさい」とプレッシャーをかけていた。

ブラック分家からレギュラスの婿を取ってブラック家を継がせようとしなかっただけ、オリオン様もヴァルブルガ様も娘の意向を無下にはしない優しい方である。結果として、シリウスは後継者になれなかったが、当時、無茶苦茶嫌がっていたのだから本人の希望が叶ったわけだ。今更、文句は言わせん。

 

 

 

2022/6/4

ケルトバーンをケトルバーンへ変更

 

2022/6/6

マダムピンズをマダムポンフリーへ変更

ご指摘ありがとうございます。

映画の時も思ったのですが、リーマスは脱狼薬を飲み忘れたり、わざわざ作ってもらった薬に文句言ったり何様なのだ、と。そして危機感薄いな、とは思っていました。なお、映画の折は狼化リーマスに体張ってハリー達を守るセブルスに感心しました。あんだけ嫌われているのに、それとこれとは関係ないと体張って守るセブルスはリーマスより遥に教師やってますよね。

 

 


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