セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる4-2
マッドアイ・ムーディ(中身クラウチ・ジュニア)以下、面倒なのでマッドアイ偽と明記する、がやってくれた。グリフィンドールの初回授業で禁じられた術を使って見せたことだ。幸運なことに、今のネビルはグリフィンドールではないのでこの授業を未だ受けていないが、それも時間の問題。吾輩は即、マッドアイ偽に話し合い(物理有り)を行った。なぜか、マクゴナガル教授とフリントウイック教授が付き添ってくれたが、吾輩の助力にしては立ち位置が変だったけれど。話し合い(物理有り)の結果、下級生ならびに精霊使い、そして希望者の防衛術教授の座を勝ち取った。今年ばかりは自ら望むとは、我ながら変な気分である。なお、話し合いの折にマッドアイ偽の部屋が凍り付いて使用不可となったが、たいした問題ではない。ホグワーツ城は、掃いて捨てる程に部屋が存在するのだから。凍り付いた部屋は夏が来る頃には解けるだろう。
そういう訳で強引に生徒を奪ってしまったのでマッドアイ偽から吾輩は嫌悪されている、故に親戚筋のドラコも何をされるか分からないので吾輩の授業の方を選択するように説得していた。ドラコは少々、顔を引きつらせている。
「セブルスおじさん、いや、プリンス教授は何をしたのですか?」
「精霊使いの暴走を止める手段はないということを、実地で示しただけだ」
思い知らせたとも言う。
「ああ、あの氷漬け部屋事件はそういう経緯で」
氷漬け部屋事件とは何だ?吾輩は知らん。
それはともかく、マッドアイ偽はマルフォイ家への恨みからドラコに辛く当たるのだ。ドラコは吾輩の大切な親戚筋の子、分かっていて理不尽なことに巻き込めるはずがない。本当のことは隠し、吾輩経由でドラコに危害が加えられる懸念を伝えた。あまりに心配しているのが伝わったのか、スリザリンの生徒ほとんどが吾輩の授業を選択してしまった。少々、やり過ぎてしまったのかもしれない。授業妨害と非難されかねないか?
防衛術の生徒をぶんどってしまったが、後は大人しくしておこうと本当に本当に思っていた。大体、三大魔法学校対抗試合のある今年は、マッドアイ偽事件とあの人復活事件くらいしか大きな事件に記憶がない。マッドアイ偽はさておいて、あの人復活はなさそうなので、適当なところでマッドアイ偽を退場させれば良いだろう。さて、どのように退場させようか。
三大魔法学校対抗試合が始まった。
今回はハリーが選手にならなかったので、ホグワーツは一致団結してセドリック応援団と化していた。マグル生まれの子たちによるアイドルグッズ情報から、ホグワーツ側応援団はなかなかに目立っている。ハリーもその他大勢の一人として楽しそうだ。よきかな、よきかな。
キラキラうちわ、ペンライト、サイリウム(ペンライトとサイリウムの違いって何だ?)、ハチマキとか。絶対、日本人情報だろ、それ。
第一の課題はドラゴンから卵を奪うことである。クラムとフラー、そしてセドリックは課題をクリアして、皆々大いに盛り上がった。まさにお祭り気分である。
原作通りではないが、吾輩もこのお祭り騒ぎにはいささか疲れたので自室へ戻ろうとしたところ、廊下でハリー達三人組を見かけた。一瞬、目が合ったので口を開く。
「貴公らは宴会に加わらぬのか?」
「えっと、その。厨房へお菓子の調達に」
わざわざ厨房へ直に、か。まるで子供だ。いや、子供か。
「ふむ、吾輩も一緒で構わぬかね?」
「ええ、まあ」
「はい、どうぞ」
「プリンス教授もお菓子が欲しいのですか?」
「いや、厨房に興味があるのだ」
ホグワーツの厨房は、想像以上に広く、多くのハウスエルフが働いていた。その中の一人がぴょんと飛び跳ねるようにハリー達三人組へ近寄った。
「ポッター様とそのご友人方。お会いできて嬉しいです」
「こんにちは、ドビー。今はホグワーツで働いているんだ」とハリー。
このハウスエルフはドビーというらしい。
「はい、ドビーめはダンブルドア校長に雇われてホグワーツで働いております」
「労働条件は?」とハーマイオニー。
「労働条件?何だ、それは?」と吾輩。
「はい、ダンブルドア校長は週給1ガリオン、一ヶ月に一日の休暇を貰っております」
ドビーが胸を張って言う。これはまた変わったハウスエルフだ。周囲の働いているハウスエルフ達が冷ややかな視線を向けているがドビー自身は気付いていないようだ。なんというか、ドビーは空気が読めない性質かもしれない。ハウスエルフとしては、いささか問題のある欠点と思われる。
「あら、随分と低い条件だわ」
「いえいえ、ドビーめはこれで充分であります」
「ミスグレンジャー、根本的に行き違いがあるように思うのだが。ハウスエルフはそもそも報酬を望まないのだよ」
「え、でも、そんなの可笑しいです。労働に対して正当な報酬を得るのは当然の権利です」
「望まないのに押し付けられる権利とは如何なものかね」
哲学っぽいな、これ。
「で、でも、ドビーは」
ちらりとハーマイオニーはドビーを見やる。
「率直に言って、そちらのハウスエルフは相当の変わり者であるな。彼の主張がすべてのハウスエルフの主張と言われるのは誤解もいいところだ」
「なるほど納得です」
しみじみとハリーが言った。この変わり者ハウスエルフ・ドビーとの付き合いが長いのかもしれない。
「無報酬ってあんまりじゃないですか」
ハーマイオニーは未だ納得できないらしい。
「無報酬というより、我々が考える報酬を下手に渡すべきでないということだ。例えば、ハウスエルフに服を与えると雇用契約が切れてしまうだろう?彼らハウスエルフの価値観と我々のそれとは異なるのだよ」
「プリンス教授、ハウスエルフがいるのは旧家とかですよね。うちにもいてくれたら良いのに」とロン。
「ハウスエルフについてはよく分かっておらん。彼らの魔法は我々のそれとは全く異なっている。とはいえ、研究もさほど進んでおらぬ。吾輩が思うにハウスエルフは旧家にとって隣人なのだろう。隣人という身近なものを調べようとは心理的にブレーキがかかるのではないか?旧家ではハウスエルフがベビーシッターでもあるのでな」
もっとも、これは勝手な考察に過ぎない。正解かどうかは知らん。
「ああ、それと旧家に勤めるのは魔力的な問題だと思う。旧家はやはり魔力に満ちているからな。魔法生物は基本的に魔力に満ちた場所に住み着く。多分、そういうことだろう。故にその家と魔力が合わなくて、というのはあると思われる」
原作知識からドビーはマルフォイ家のハウスエルフだった筈。魔力でなく性格が合わなかったのだろうな。これだけ変わり者ならば、マルフォイ家も持て余していたのかもしれん。ドビーの方を見る。彼の傍に仕事もせずオイオイと泣いているハウスエルフがいる。ドビーもだが、そのハウスエルフに対しても、他のハウスエルフは疎まし気な目を向けていた。
「あのハウスエルフはどうしたのかね?」
身も世もなく泣いているハウスエルフはちょいちょい「クラウチさま」と言っているようだ。
クラウチとはあのクラウチ氏のことだろうか?
「もしかして、ウィンキー?」とハリー。
ウィンキー本人はしくしく泣いていて、とても返事が出来る状態ではなさそうだが、代わりにドビーが返した。
「元クラウチ家のハウスエルフであるウィンキーです」
「クィディッチ・ワールドカップの時にあの闇の印騒ぎでハウスエルフが逮捕されたじゃないですか」とロンが追加説明した。
「馬鹿げているわ。ハウスエルフは杖を使えないでしょ」とハーマイオニー。
「そう言われているな」
あの件は日刊預言者新聞で読んだ。色々と不可解な事件だった。いくらハウスエルフの生態が分からないとはいえ、杖を使って闇の印を打ち上げたとは無理があるだろう。適当な犯人を魔法省は捕まえられず、クラウチ氏のハウスエルフがスケープゴートにされたのだろうと大半の読者は思ったことだろう。あまりに都合の悪い場所に居た哀れなハウスエルフ。しかし、はたしてそうだろうか。あのハウスエルフが犯人とは思わないが、あのハウスエルフが全く関係ないとは言い難いのかもしれない。なにせ、元クラウチ家のハウスエルフなのだから。
それにしても、首になって生き生きとしているドビーとまるで対象的に嘆き悲しんでいるウィンキー。色々と考えさせられる。ぼんやりと吾輩はウィンキーを見つめていた。
ところで、吾輩たちはホグワーツで働いているハウスエルフ達にとっては邪魔だったようで、ハウスエルフ達に大量のお菓子をもたされて追い出された。部外者が職場に居座ったら迷惑だったのだろう。
元クラウチ氏のハウスエルフはホグワーツの厨房に居る。この事実を吾輩は覚えておくことにした。