セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる4-3
精霊使いの生徒ネビルとトム、そして精霊学教授である吾輩でお茶会をしている。これも面談のような授業のようなものである。この二人はホグワーツ入学前から知っているので気安い間柄なのだ。今日のネビルは鬱々としていた。珍しいことだ。ネビルは良いところの坊ちゃんらしく呑気なところがあるので、こんな風に鬱々しているのは少し不思議でもある。何か困ったことでもあるのか。吾輩のハウスエルフ・メリーアンの用意したお茶と茶菓子で落ち着いてくれると助かるのだが。
「ネビル、どうしたのかね?」
「あの、その、セブルスおじさん」
自室なのでセブルスおじさん呼びでも大目に見ることにする。身内しかいないようなものでもあるし。
「クリスマスパーティーがあるじゃないですか」
「ああ、あるな。クリスマスは毎年あるではないかね」
「でも、今年はダンスパーティーもありますよ!!」
「四年以上はダンスパーティーに参加できるんですよね」
三年生のトムは全く他人事のように言った。実際に、トムにとっては他人事なのだけれど。
「ダンスとか無理です」
名門ロングボトムの直系が何を言っているのだろうか。それはともかく、ダンスパーティーの心配だったか。いやはや、いかにも若者らしい悩みではないか。初々しい話である。本人にとっては大問題であろうとも、すっかり世慣れた大人からすれば可愛らしい問題である。
「実家で少しは練習しているであろう?それに各寮内で練習があるだろうからそれに参加したまえ。こう言ってはなんだが、貴公より一般家庭の子の方が困惑していよう。手伝ってあげなさい」
初めてそれに気づいてネビルが「はい」と頷いた。
「ダンスも心配でしょうけれど、パートナーは?」
トムの指摘にぴたりとネビルは止まった。全く思い至らなかったらしい。どうしよう、と吾輩を見る。吾輩を見られても、正直、困るのだが。
「男性から誘うのが王道だろう。貴公から誘いたまえ」
「早く誘った方が良いと思いますよ、ネビル先輩」
「そんな・・・・・・」
ネビルが本当に困った声を上げた。
ネビルは内気だから、ちゃんと誘えるのか心配である。そんな心配をしている自分に内心笑ってしまった。なんとも平和な心配じゃないか。
マッドアイ偽から防衛術の生徒を一部奪ってしまったので、クリスマスパーティー前の浮ついた空気はよく分かる。それ以上に、ダンスパーティーで恥をかかないように各寮でダンスの練習が始まっている。そして、吾輩もそれに駆り出された。原作ならばスリザリン寮一択だろうに今回、吾輩は寮監ではないこと、プリンス家当主で貴族であること(貴族としてダンスは必須項目)、防衛術の実技で他教授陣(特にフリットウィック教授とマクゴナガル教授)に借りを作っていることから全ての寮のダンス練習に付き合わされている。ネビルのいるハッフルパフやドラコのいるスリザリンは元から手伝うつもりだったが、フリットウィック教授のレイブンクローとマクゴナガル教授のグリフィンドールは正直なところしぶしぶである。借りは作るものじゃない。
そこでダンス練習だ。
スリザリンは貴族が多いので出来る生徒が多いことと、身内びいきで面倒見が良い寮なので、慣れない生徒のフォローは上級生がきっちり行っていた。全寮の練習を見ている吾輩から見て最もレベルが高いし、指導もあまり必要ない。スリザリンは心配なさそうだ。
レイブンクローはダンスを理論で考えているところがある。なお、三大魔法学校対抗試合の代表者セドリックのパートナーであるチョウ・チャンはファーストダンスを踊らねばならない旨は連絡済みらしい。セドリックとチョウは寮が異なるが一緒に練習しているとか。
はいはい、青春だ、ケッ。ネビルのようにまごまごしているのは微笑ましいのに、リア充には腹立つな、本当。
ところで、レイブンクローの寮内に入ったのは初めてだが、何かこうぞわぞわするというか何というか。いや、どこの寮も初めて入るのだった。落ち着かないのだよな、レイブンクロー寮。なぜだろうか。
次はネビルのいるハッフルパフ寮だ。この寮は一般家庭の生徒が多いようだが、逆に劣等感を抱かせない雰囲気の寮だけあって最もアットホームな感じだ。スリザリンとはまた違って。ダンスの下地はないが素直で正直、教えがいがある。愛敬があり楽しく踊るのも好印象だ。しかし、基礎ステップから教えるので時間は取られそうである。
最後はグリフィンドール。マクゴナガル教授の指導からか、いきなりダンスというスパルタ方式である。習うより慣れよ、なのだろうか。
各寮で全く雰囲気が異なっていて、面白いといえば面白い。
吾輩は個人的な手紙用の印璽で封をした後、ハウスエルフのメリーアンに手渡した。
「レギュに手渡して、返事をもらってきてくれたまえ」
「はい、かしこまりました。セブルス様」
「それと」吾輩は少し口ごもってから続ける。
「ホグワーツの厨房にいる元クラウチ氏のハウスエルフを呼んで欲しい」
メリーアンは眉をひそめる。
「御用でしたらメリーアンが承りますが?」
その声音には、自身こそが吾輩専属のハウスエルフであるという自負があった。
吾輩は軽く手を振る。
「誤解だ。用事を頼みたい訳ではない。あの者、ウィンキーに聞きたいことがあるのだ」
「お言葉でございますが、セブルス様。元クラウチ氏のハウスエルフであっても、クラウチ氏の情報は得られません。そういう契約でございます」
クラウチ氏もそれくらいの処置はしているだろう。ウィンキーが喋るとも期待はしていない。ただ、ウィンキーがこれからどうしたいのか聞きたいのだ。少なくともホグワーツで上手くやれる未来が全く見えてこないから。吾輩は同朋からウィンキーがどう見えるか聞いてみたくなった。
「メリーアンから見て、ウィンキーはどのように見えるかね?」
「ハウスエルフの面汚しでございます」
メリーアンのきつい言いざまに少し驚かされた。主家を首にされたことがハウスエルフとして許せないのか。なかなかに厳しいものだ。
「なるほど、首になったことが不名誉と?」
「いいえ、いいえ。そうではありません。確かに主家から解雇されることはとても残念なことではありますが」
メリーアンは顔をしかめた。
「そういうことが全くないわけではございません。そうではなく、泣いてばかりで、あげく酔っぱらって仕事もしないなどハウスエルフとして存在意義に反します」
「ほぉ」
存在意義ときたか。悲しみで打ちのめされダメ人間になることに対して、ハウスエルフは人間より手厳しいらしい。つくづく吾輩は人間で良かった。そして、厨房でウィンキーが他のハウスエルフから白い目で見られていた理由がようやく分かった気がした。
「それはそれとしてウィンキーを呼んできてくれ」
すっごく嫌そうにメリーアンが尋ねる。
「どうしてもですか?」
「どうしても、だ」
バチン、とメリーアンは姿くらましで消えた。
クラウチ・ジュニアとウィンキーの関係がレギュとクリーチャーのように良好であれば、クラウチ・ジュニアの説得に使えるだろうが、この辺りがさっぱり分からん。それにウィンキーが慕っているのがクラウチ氏かクラウチ・ジュニアなのかも分からん。個人的にクラウチ氏がそんなにウィンキーに慕われているとは思えないので、ここはクラウチ・ジュニアを慕っていると思いたい。
ウィンキーはホグワーツに再就職するよりはクラウチ・ジュニアの傍に仕えさせた方が良いだろうと思ったのだが。
メリーアンに呼び出されたウィンキーは吾輩の前でおいおい泣くばかりでどうにも話にならない。そして、メリーアンがウィンキーを見る目の冷たいことといったら。とても同朋に向ける眼ではないだろう。
これは先にクラウチ・ジュニアをどうにかするべきか。