セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる1-2
魔法薬学は一学年から毎週授業があり、ハリー・ポッターとの接点もあっただろうが精霊学教授の吾輩とは全く接点がない。別にトラブルメーカーのハリー・ポッターに会いたい訳じゃないけれど。故に吾輩は今日も今日とて本年度入学唯一の精霊使いネビル・ロングボトムとのマンツーマン指導中だ。
ネビルがゆっくりと手のひらを大地に向ける。
「大地よ、壁となれ」
ボコッ
一気に土が隆起し、30センチほどの高さの壁?一面一メートル四方が成形された。
吾輩はぱちぱちと手を叩く。
「上手、上手」
ネビルは吾輩と同じで褒めて伸びるタイプなのだ。
ネビルはてへっと照れて―――ぐしゃと土壁は崩れた。
「気を抜くな。固定が足りんから崩れるんだ」
「はい、セブルスおじさん」
慌ててネビルは再び両手を向ける。土壁が再構成された。
「いや、教授と呼びたまえ」
吾輩はぽつりと呟いたが、もはやネビルは聞いておらず集中している。案外、集中力はあるのだよな、こいつ。
ネビルが吾輩を”セブルスおじさん”と呼んでしまうのは仕方のない話だ。吾輩は、ネビルが幼児のころから知っているからだ。例の予言の対象者はハリーとネビルだった。その為、両方に護衛の打診をしたのだ。
ハリーの方はシリウスがきっぱりはっきり秒で断りやがった。今思い出してもムカつく物言いで、愚連隊もとい親友たちがハリーをまもるからてめぇらなんぞいらねぇよ、という感じであった。結果は、原作通りでペティグリュー(身内)の裏切りでジェームズ・リリー夫婦は死亡、シリウスはアズカバン行きだ。これが原作修正力なのか、シリウスの傲慢さ故なのか。吾輩はシリウスの阿呆のせいだと思う。なぜなら、ロングボトム夫婦の方は守り切ったのだからだ。但し、その結果?ネビルが土の精霊に目を付けられてしまい精霊使いになってしまったのはどうしたものか。
しかし、これでネビルは英雄ルートから完全に外れたことだろう。変に校長に目を付けられなくなったのは―――吾輩の見解としては幸いなことであると思われる。
校長が精霊使いをどう思っているのか、はっきり明言はしていないが心中、面白くないのではなかろうか。しかし、表立って批判は出来まい。精霊使いは名門のスクイブが元光・闇派関係なく多く存在し、敵に回すには今の光陣営は弱小になり過ぎた。
賢者の石防衛に吾輩を組み込ませないあたり、シリウスと一緒で、けっ、てめぇの力は借りないぜ、なのだろう。本当にもう好きにしろよ、である。但し、生徒は巻き込まない方向で、だ。
そもそも吾輩がホグワーツ教授になったのはホグワーツ理事会からの打診である。故に校長はしぶしぶだったようだ。理事会の思惑は、ホグワーツの防衛であり、精霊の力で守ってくれとのことだろう。今後、ホグワーツは毎年厄介ごとが起こるので、順当な配置と思われる。原作を読んでいて、毎年綱渡りっぽい感じだった。そういう思いもあって、ホグワーツ教職員を引き受けたのだ。吾輩も大概、お人よしである。
確か、本年度は賢者の石攻防戦でクィレル黒幕編なのだ。とりあえず、クィレルがやらかさない様に見張りつつ、賢者の石を守れば良い。賢者の石が狙われるのは学期末、校長不在時である。今にして思うと校長不在って罠だったのでは?やっぱり食えない爺さんである。
吾輩関係なく、ハリーはクィディッチメンバーになり活躍したらしい。クィディッチを観戦に行かなかったのでよく知らん。寒そうだし、マクゴナガル教授のように熱狂できないので部屋でゴロゴロしていたのだ。部屋にはこたつを設置している。
そして、原作通りハロウィーンパーティーである。お菓子は大量に用意した。いたずらOKなこんなイベント、生徒が見逃すはずがない。特にウィーズリーの双子とか、ウィーズリーの双子とか、ウィーズリーの双子とか。いたずら仕掛け人を自称しているウィーズリーの双子、吾輩は特に嫌ってはいない。そもそも、初代の愚連隊とは根本的なところが違うからである。一度、校務のフィルチに迷惑かけないように片付けだけはしっかりしろ!!と言い渡したら、変に懐かれた。減点しなかったからだろうか?
そのウィーズリーの双子は城の廊下にオレンジと黒の飾りつけを施していた。ハロウィーン仕様のいたずらだそうだ。自主的に飾りつけするとはボランティア精神に富んでいる双子である。
「「あ、プリンス教授。トリックオアトリート!」」
パタパタ駆け寄る双子は、背は高い方であろうとも子供だ。
ちなみに吾輩は色々あってプリンス家を継いでいたりする。原作セブルスが何を考えていたのか分からんが使えるもの(母の実家)は使った方が良い。
「ふむ、お菓子をやろう」
用意していたお菓子を渡す。双子は目を丸くした。
「え?用意していた」
「意外だ、プリンス教授がお菓子持参とは」
「貴公らがいるのにお菓子を持たぬなど、無策で敵陣に突っ込むようなものだろう」
「教授にそこまで評価いただけたとは」
「いたみいります」
双子は楽しそうに笑い、次のターゲットへ向かう。
できたら、校長に派手ないたずらを仕掛けて欲しいものである。
大広間でのハロウィーンパーティー。
吾輩はハイテーブルでにぎにぎしいパーティーを眺め、ハローウィン用の料理を口にする。やっぱり、クィレルは不在だ。今頃、賢者の石に探りを入れるための工作中か。クィレルは城内にトロールを入れて、混乱に乗じて例の部屋に侵入しようとするのだ。それが分かっていながら、吾輩は手を出しかねていた。実はハロウィーンの前にクィレルを素巻きにしてしまおうかとも考えたのだが、何もしていない時点でクィレルに危害を加えては、吾輩が校長に攻撃される隙を作ってしまう。校長は理事会推薦の、そして精霊使いの吾輩を煙ったく思っている。きっかけがあれば、嬉々として吾輩を首にするだろう。故に、クィレルがやらかした後しか、吾輩は動けないのだ。
バターン!!
「ホ、ホグワーツの地下にト、トロールが・・・お知らせ・・・」
派手に扉が開け放たれ、クィレルがよろよろと入り、ぐしゃりと倒れる。
一気に静まり返った一同が、クィレルが倒れたことで大騒ぎとなる。吾輩は床に倒れ込んだクィレルを見据える。混乱に紛れて動くつもりだろうが、そうはさせん。
「クィレル、無事か?」
「え・・・ええ、大丈夫です」
吾輩はスッとクィレルの傍へ寄った。別に欠片も心配はしていない。大体、これはクィレルの自作自演だ。そういう目で見るとクィレルの演技は大根役者レベル。しかも、ここで吾輩に気遣われて、もとい監視されるのはさぞや困ることだろう。
校長が生徒たちを落ち着かせ各寮へ移動させる―――いや、これは拙い。
「待ってください。地下にあるスリザリンとハッフルパフ寮生が危険です。生徒が皆ここに居るならば、生徒は大広間で保護。トロール退治の精鋭部隊と大広間防衛隊に分けることを提案します」
自身の指示に反論され、校長はぎろりと吾輩を見る。しかし、吾輩の意見はかなり真面である。故に教授陣はそれで動き出した。こうなっては仕方ないと校長は好々爺へ戻った。トロール退治には行かないらしい、行けよ。
「私は精鋭部隊に」とマクゴナガル教授。
フリットウィック教授も精鋭部隊へ。このあたり、武闘派の教授たちが決まり大広間を出た後、即、吾輩は右手を振った。途端、大広間の扉が分厚い氷で閉ざされる。水の精霊使いとしてはこの程度、容易なのだ。但し、精霊使いの力は魔法使いの力とは全く理屈が異なる。吾輩が思うに、精霊使いの力は物理寄りの力なのだ。故に汎用性に欠けるのだよな。
ちなみにこの分厚い氷を通り抜けてこっそり動くことは当然、クィレルも出来ず呆然としている。足止めは完全に出来たが、止めとばかりに吾輩はマダム・ポンフリーにクィレルを預けた。
クィレルの足止め、武闘派教授陣ならばトロールも瞬殺できるだろう。自画自賛したくなるほどの立ち回り―――と思っていたのは一瞬。
「ハーマイオニーが三階女子トイレに」
ハリーとロンの申し出に、吾輩は、忘れていた、それ!?と心中で絶叫したのだった。