セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる4-5
ポリジュースの効果が切れて簀巻き男はマッドアイ偽から吾輩の見知らぬ男へと変化した。本当に魔法薬は凄い。
「バーティ、生きていたのね。嬉しい」
レギュラスが瞳を潤ませてそう言ったが、片方が簀巻き男なので感動も半減、ひたすら残念な感じである。とはいえ、相手は何をしでかすか分からないので簀巻き続行だ。こちらの安全には変えられない。
「この状況でそう言えるレギュラスがこっちは驚きだよ。プリンスに毒されたか?」
「この状況で毒舌を叩ける根性だけは吾輩も感心しておる。とはいえ、真実薬を飲ませるような非道なことはしたくないし、どうしたものか」
「簀巻きにして転がすのと、真実薬を盛るのとどちらがよりマシなのかしら?バーティ、親友として忠告しておくけれど痛い目をみたくなかったら素直に話した方がよろしいですわよ」
レギュラスがしれっと怖いことを言いだした。クラウチ・ジュニアが顔をこわばらせる。これはつまり、怖い刑事と優しい刑事という役柄で容疑者から自供を引き出そうということか。吾輩が怖い刑事役?
「ここで吾輩がクラウチ・ジュニアを脅せば良いのかね?」
「これ以上、何もしなくて結構です。ね、バーティ。加減の出来ない不器用な人なのよ、セブは。本当のことを打ち明けてくれない?私が良いように手を回してあげるから」
吾輩、目の前で自分の嫁に酷いこと言われていないか?
「言っておくが、俺はプリンスでなくレギュラスを信用するのだからな」
どこのツンデレか、という言い訳でクラウチ・ジュニアの事情が明かされた。アズカバン脱獄はクラウチ氏の魔法省勤務コネで面会を強行、身代わりにクラウチ夫人がアズカバンに残り、息子クラウチ・ジュニアを脱獄させたとか。ポリジュースが大活躍だ。ここまでなら、肉親の情とはいえ無茶するものだ、くらいの感想だった。それ以降が酷い。クラウチ氏は息子のクラウチ・ジュニアに服従の呪文で館に監禁(軟禁)し、ハウスエルフのウィンキーに世話をさせていたとか。そして、クラウチ・ジュニアは徐々に服従の呪文に抗いワールドカップ時に逃走した、と。待って、待って、館に監禁していた期間10年は軽く超えていないか?しかも、服従の呪文は禁じられた呪文の筈だ。クラウチ氏の方がアズカバンにぶち込まれるべき犯罪者だろう。やっていることが親とは思えぬ所業だ。
「それでは、貴公の目的は・・・・・・」
「無論、あの腐れ親父への復讐だ。ただ、殺すだけで終わらせるものか。魔法省の信頼と評判を徹底的に落とし、三大魔法学校対抗試合を失敗させる。あの仕事人間が閑職に追われれば、さぞやショックだろうよ。そして、俺の手で殺してやる」
ワールドカップ時の闇の印はクラウチ氏の復讐のメッセージだったらしい。そして、炎のゴブレットにはガチでクラウチ氏の名前を入れたとか。深読みし過ぎた。最初から最後までクラウチ氏の復讐と殺害の為にワールドカップと三大魔法学校対抗試合に妨害工作していた、と。ついでにクラウチ氏への殺害メッセージだった、と。
単に殺すだけでは気が済まなかったらしい。当然か。
『巌窟王』を連想してしまう。長期間、監禁され復讐鬼と化すところなんて。クラウチ氏は復讐されても仕方ない位にやらかしているし、とても擁護する気にはなれない。しかし、若い時に監禁され、自由を得て復讐を果たした後、父親殺しとしてアズカバンに収容とは、あまりに気の毒過ぎる。
「バーティ、復讐を否定はしないけれど。あんな屑を殺してあなたがアズカバン行なんて。あの屑にあなたが手を汚す価値などないでしょう?」
レギュラスの中でクラウチ氏は屑表記になった。同意しかない。
「そうだな。実質殺すよりも仕事人間のクラウチ氏は社会的に殺す方が効果的だ。殺しなど、一瞬の苦しみだ。ああいうタイプは心折られる方が効果的だろう。貴公が苦しんだ期間、苦しめてやればよかろう」
「復讐を止めないところがあんたららしいよ。ついでにえげつないところも似た者夫婦だ」
呆れたようにクラウチ・ジュニアが呟く。
「あら、そんな」
レギュラスが頬を染めて照れている。いや、褒められている訳じゃないし、照れるところでもない。照れるレギュラスは可愛いけれど。
「クラウチ氏を社会的に抹殺すること、吾輩に任されてはくれないか?奴の所業を大々的に公表してくれよう」
「それで、殺すな、と?」
「高みの見物を決め込めば良い。貴公を案ずるものは―――」
ちらりと吾輩は簀巻き姿のクラウチ・ジュニアの服の裾にしがみついているウィンキーを見る。ウィンキーは泣き止んではいたが、しっかとクラウチ・ジュニアの服の裾を握っている。余程心配なのだろう。
「貴公が思うよりいるのだ。この提案に乗ってくれるならば、逃亡に手を貸そう」
「俺はデスイーターだ。なぜ俺に協力する?レギュラスと親しいからか?」
「デスイーターだった、だ。闇陣営は死んだも同然。今更、闇陣営に優秀な魔法使いである貴公が加わるのは避けたい。そして何より闇陣営が動くと、それを名目に光陣営が大手を振ってくる。正直、光陣営の方が吾輩にとって迷惑だ。ついでにレギュと親しいのはマイナス要素にしかならん。吾輩、異性の友情は成立しない派なのでな」
ぐるり、とクラウチ・ジュニアはレギュラスを見据える。
「面倒くさいな、お前の旦那。本当に面倒くさいな」
面倒くさいを2回も言いやがった。失礼な奴だ。
「可愛い人でしょ」
「レギュラスも面倒くさくなってる!!」
話し合いの結果、クラウチ・ジュニアとハウスエルフのウィンキーはアメリカへ逃亡した。今年のミッションはこれにて完了。やれやれ、だ。
翌朝。クリスマスダンスパーティー明けということで、皆々、朝寝坊っぽい雰囲気の中、その衝撃的ニュースが走った。朝食の大食堂に姿を見せないマッドアイを心配した教師の一人が私室へ行ったところ、部屋の真ん中に転がっているマッドアイ。
しかも、なぜかやたら衰弱している。マダム・ポンフリーが駆け付け、聖マンゴに即入院となったらしい。
この一件で学校は一日休校となり、上へ下への大騒ぎとなった。なお、部屋が氷漬け水浸しにされなかったことで、吾輩の関与は疑われなかった。というか、何で吾輩が疑われねばならないのだ?本当に疑問しかない。
それよりも、今期、最大の問題がフィルチによって知らされた。
「大変です!!プリンス教授!!レイブンクロー寮のルーナ・ラブグッドに風の精霊が契約したいと!!」
「嘘だろ!?」