セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる5-2
今年に入ってからウィーズリーの双子は学内で悪戯グッズの販売をしている。小遣い稼ぎなのか、アンブリッジに対する嫌がらせなのか。廊下で双子を見かけたので声をかける。
「ウィーズリーの双子」
「「これはこれはプリンス教授」」
「話がある。ついて来たまえ」
双子は顔を見合わせた。どっちがどっちか未だに分からん。この双子は強いて互いに見分けがつかないようにしているようだ。
「呼びつけられる理由は色々あり過ぎてな、ジョージ」
「全く、アレなのかコレなのかさっぱりだ、フレッド」
「「どの件で呼ばれているのか、それによって対応が変わってきます、プリンス教授」」
ややっこしいことを言いだす双子である。というか、呼び出しをいらう際、思い至る事案が色々あるというのは流石だ。褒めてはいない。
「貴公らの進路指導だ。ごちゃごちゃ言わずに来い」
自室に双子を招いて、ハウスエルフ・メリーアンに茶と菓子をサーブさせた。子供にはお菓子を与えてリラックスさせるという手段はホグワーツ職員になって覚えた技だ。
「それで、将来のことを考えているのかね?」
兄パーシー・ウィーズリーのように魔法省勤務は向いていなさそうだ。確か長兄ビルはグリンゴッツ勤務、次兄チャーリーはドラゴン飼育だったか。各自、自分の特性に合わせた職業に就いているように思う。
「プリンス教授、よくぞ聞いてくれました」とフレッドだかジョージだか。
「俺たち、悪戯グッズの店を開こうと思っているんです」
「悪戯グッズ?」
吾輩は思わず聞き返した。最近、双子は自身が悪戯するというよりは悪戯グッズをばらまいている印象が強かった。アンブリッジ他教師に対する嫌がらせではなく、商品サンプルと現地モニターだったのか。
「なるほど、あれは市場テストも含めたサービスと宣伝でもあったわけか。評価はどうだ?」
「ばっちりです」
「これなら直にガッチリ稼げるな、相棒」
「もちろんさ、ジョージ」
「店の名前ももう決まっているんです」
「「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」」
「教授も先行投資しませんか?」
「吾輩以外にも既に投資先は決まっているのか?」
「「いや~それがなかなか」」
親兄弟は出店資金を出せるほど裕福ではない。それはともかく、双子の商売は上手くいくだろう。原作でも上手くいっていたような・・・気がする。記憶は怪しいが。ところで、確か原作ではハリーが三大魔法学校対抗試合の賞金で出資するのだった。ここはゆがめてしまった原作の代わりに吾輩が手助けしてやるか。プリンス家当主として、それ位はポケットマネーでどうにでもなる。
「よかろう。吾輩が出店資金を出そう」
「「本当ですか!?」」
先行投資を持ちかけはしたものの双子は出資してもらえるとは思っていなかったらしい。目を丸くして吾輩を見る。
「ああ、貴公らならばきっと成功するだろう」
多分、出資者集めに苦労しそうだし。成功するのは分かっている?から一種の有望株だ。また、双子を就職させる方が出資するより手間かかりそうだものな。こいつらのようなある点で特出した優秀な魔法使いを無職でぶらぶらさせておくと―――訳わからん思想グループ(あの人主催の闇の魔法使いとか校長のボランティア団体とか)に入って反社会的活動とかしかねない。社会人として仕事に励んで納税の義務を果たすことでイギリス魔法界を支えてくれ。
「それはそれとしてイモリ試験は努力しろ」
「「えー」」
「学生の本分は勉学だろうが」
「でもプリンス教授、今年の防衛術教授はハズレです」とジョージかフレッド。
「そうです。筆記だけでイモリ試験は厳しいです」とフレッドかジョージ。
「補講しているだろうが。そして、成績を教師のせいにするな」
「「・・・・・・ハズレなのは否定しないのですね」」
勘の良い双子だ。
「ノーコメント」
他に返す言葉がなく、吾輩は突っぱねた。
イギリス魔法界が安定して平和な為か、シリウスの冤罪が確定した。個人財産(ブラックから勘当された折の手切れ金)とペティグリューの自供により裁判にてグレー寄りの白を勝ち取ったそうだ。それでも、グレー寄りの白。人望の無さがよく現れている。よっぽど優秀な弁護士を雇ったのかな?但し、ホグワーツでのやらかしの為、三年間ホグワーツと禁断の森ならびに近く行き来可能なホグズミードに立ち入り禁止となった。冷却期間と言っていたが、絶対にハリー目的でホグワーツ周辺に突撃することを警戒している。三年後、ハリーはホグワーツを卒業しているのでシリウスが来ることはないだろう、という判断である。弁護士にきつく言い渡されているのか、いや、魔法契約を結んでいるのだろう。あの駄犬はホグワーツへ突撃してはいない。突撃はしていないのだが。
「あの、プリンス教授。シリウスから度々手紙や高価なプレゼントが届いてしまって。どうして良いのか分からないのです」
とハリーが相談に来た。ちなみにシリウスが吾輩の義理の兄というのも手紙やら新聞やら噂やらで気付いたらしい。名家では知られている事実ではあるが、その為、ハリーは吾輩を相談相手に選んだようだ。迷惑だ、心の底から迷惑だ。
ハリーの相談に乗ることではなく、その内容がシリウスがらみということが。そして、シリウスはハリーにプレゼント攻撃か。財力にものを言わせたダメ男みたいなやり方である。まさに駄目な甘やかし方だ。しみじみ、心の底からシリウスがハリーを育てなくて良かった、と思った。ポッター2世かシリウス2世の爆誕である。何て恐ろしい未来であろうか。
「返事でやんわりとプレゼントを断ってはどうかね?」
シリウスに大人の対応は無理だ。ここはハリーに大人の対応をしてもらうしかない。
「手紙も・・・・・・」
ハリーが差し出した手紙に吾輩の顔は引きつった。封筒、きちきちの厚さ、呪いの手紙か?これは読むだけでも大変そうだ。
「これが週一ペースで届きます」
嫌がらせかよ。
これは学業の邪魔になる、確実に。シリウスに自重は無理か。そうだ、ルーピン。今、あやつはシリウスと一緒だろうか。一緒の可能性は高い。シリウスのストッパーになってもらおう。
「ミスターポッター、ルーピンはどうしている?シリウスと一緒か?」
「え!?ええ。シリウスの裁判に尽力していたみたいです」
「ルーピンに手紙を書いてシリウスを制御させろ。他人の意見を聞かない暴走機関車だが親友の言うことは聞くだろう」
「暴走機関車・・・そうですね」
この時は名付け親シリウスの過剰な愛情に振り回され困りながらもハリーは喜んでいた。両親を早くに失い、愛情に飢えているハリーにはシリウスの愛情がかけがえのないものなのだろう。しかし、数日後にハリーは酷く落ち込んでいる様子だった。何かあったのだろうか。またシリウスがやらかしたのだろうか。ハリー本人には聞きづらかったのでロンとハーマイオニーを捕まえて聞いてみた。聞いてみたのだが。
ハーマイオニーから聞いた話に吾輩は頭を抱えた。シリウスの阿呆は学生の頃の暴行と愚行を―――手紙で武勇伝として書き連ねたらしい。新聞で父親四人組マローダーズの件を知って大概、いたたまれない思いをさせられたのに。よりにもよってその本人が愚行を愚行と思わず、暴行を暴行と思わず、あまつさえ誇るという反省の色なしの勘違い野郎とは。これは酷い。慰めの言葉も出ない。
仕方ないので吾輩の方からルーピンへ手紙を出した。本当のところ、ルーピンとは距離を取りたいのだがそうも言っていられない。シリウスに出しても吾輩の手紙なぞ握りつぶされるだろうから羊皮紙の無駄にしかならないのだ。
ルーピンからの返事は早かった。シリウス宛のハリーの手紙が届かなくなったらしい。というか、ハリーが手紙を出していないようだ。それでシリウスが落ち込んでいるとか。自業自得だ、同情の余地もない。しかし、変な曲解されても困るので正確なところをルーピンに手紙で知らせてやった。
反省しろ、というかシリウスに反省させろ。