セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる5-4
アンブリッジがホグワーツを依願退職したが、あきらかに夜逃げなので理事会とホグワーツ側が魔法省へ抗議、これによりアンブリッジの任命責任を魔法省は取る羽目に陥った。魔法省も当然、一枚岩ではなく、ここぞとばかりにアンブリッジ落としの派閥が動いているらしい。魔法省においてアンブリッジの失脚は確定しているようだ。そもそも、アンブリッジは魔法省内でも敵は多かったと思われる。さもありなん。
去年はクラウチ氏、今年はアンブリッジ。ことごとく魔法省から派遣された者が失脚していくのだから―――防衛術の教授以外の呪いはない筈なのだが。
そして、例年通り防衛術の座学を吾輩が、実技を他教師の持ち回りとなった。その実技メンバーにビルも組み込まれたので、本件も悪いことばかりではなかったと思う。ビルはかなり優秀な魔法使いなので。また、今年からルーナが風の精霊使いとなって初心者ゆえに吾輩もかなり時間が取られると思っていた。しかし、ルーナ自身のポテンシャルが高かったのか、はたまた契約した風の精霊使いの気質のためか全く手がかからない感じで、これも予想外の幸運であった。そういう訳で、この一年は気楽に過ごせるかな、と思っていたらビルから驚くべき知らせをもたらされた。
吾輩の部屋で茶を飲みながら話をしていた時である。
「不死鳥の騎士団が再結成された・・・だと」
不死鳥の騎士団といったら、例のあの人団体の対抗組織だよな、確か。原作だと光派閥の武力団体だったか。この辺り、本当に原作知識がスカスカなのでよく分からん。大体、この世界では闇派閥も光派閥も弱小派閥なので何ともかんとも。そもそも、原作と違ってあの人復活していないのに、騎士団だけ再結成して何がしたいのだろうか?闇派閥の団体がいないのでは?
「あの人、復活したのか?」
吾輩が知らないだけで実はヴォルデモート卿、復活していたとか?原作修正力がはたらいていたりとか。
ビルが首を振った。
「いえ、そういう訳ではないのです」
「じゃあ、どういうことだ?」
まさか最大派閥・精霊派を仮想敵にする気か?流石に自殺行為だろうよ。
「そもそも、どこから情報を得たのだ?」
「いや~、僕も入団を誘われたんですけどねー。もちろん、断りましたけど」
「もちろん、断ったのか・・・」
あまりに軽い口調のビルに吾輩はいささか呆れを隠せない。原作だったら、もっとこう使命感とかあっただろうに何だろう、大学のサークルを断るようなこのノリは。
「目的がはっきりしないし、僕はやりがいのある仕事で忙しいですしね。チャーリーもパーシーも断っています。双子にも話がいっているのかな?断るようにアドバイスしているけれど。もっとも自分たちの店で忙しいから、ああいう集団に関わっている暇はないんじゃないかな」
目的がはっきりしない、か。ヴォルデモート復活が明らかでないのに再結成しても、な。何をするつもりなのだろう。
「面倒なのが、父がすっかりはまって入団しちゃっているところなのですよね。結局、魔法省で自身の承認欲求が満たされないからじゃないですか?自分はもっと評価されるべきだ、と」
「評価ね・・・」
吾輩はアーサー・ウィーズリーを直接は知らないが、二年度の空飛ぶ車事件はよく覚えている。あの空飛ぶ車はアーサーが改造して作った車とか。ああいうのを取り締まる側の魔法省勤務者が作った挙句に管理がザル、加えて多数のマグルに見られるという失態。よく首にならなかったものである。倫理観がガバガバの魔法界だからな。マグル界の公務員なら即刻、懲戒免職だと思うのだが。とはいえ、アーサーはおそらく似たようなことを何度もやらかしている気がするので、魔法省で出世できないのも無理はない。加えて、アーサーとモリーはウィーズリーとプルフェットから勘当されている筈だ。確か駆け落ち夫婦なのだよな。元から、名門2家から睨まれている為、魔法省の出世にケチがついているのだ、余程の実力を見せないと居場所を作るのも難しかろう。なるほど、なまじアーサーはグリフィンドールの元監督生故に現状に不満を持っていたから―――いまいち訳の分からん団体でも『君が必要だ』と言われると乗っかってしまうのか。胡散臭い宗教団体みたいだな、不死鳥の騎士団。前途ある若者(吾輩の教え子たち)がそんなふんわりした団体に入団しないように注意せねばなるまい。必要ならば説得して脱団させねば。
「他のメンバーを知っているかね?」
「えっと、シリウスとルーピンだったかと」
はい、説得不可の愚連隊きました。あの二人はなー、仕事紹介して脱団させる道筋が作れなさそうなのだよね。あの二人を就職させるのは吾輩の手に余る。なまじ、能力高い魔法使いというのが、また、頭が痛い。
「他には?」
「勧誘は一生懸命みたいですけれど、なかなか苦戦しているみたいです。ボランティアですしね」
「ボランティアか・・・」
それは厳しいだろうとも。社会人はまず生活ありき、だ。資産家でないと時間を取られるボランティアは難しい。そうなると、ホグワーツ生が危険かもしれん。学生の大半は親の扶養に入っているだろうし、なまじ一度入団すると抜けにくいだろうし。問題なのは不死鳥の騎士団のトップが校長ということだ。スリザリン生は親もアンチ・ダンブルドアが多いから放っておいても大丈夫か。ハッフルパフは穏やかな気質が多いから冒険は望まないだろう。レイブンクローは個人主義だから団体行動自体が苦手。一番問題はグリフィンドールか。さてはて、どうしたものか。
「グリフィンドールのOBとして、注意します」
「是非よろしく頼む」
吾輩は全力でビルに頼んだ。
朝、吾輩がハイテーブルに向かったら、校長とマクゴナガル教授がいない。何かと多忙な校長はさておいて、マクゴナガル教授がいないのは珍しいと思う。席に着いたら、即、新聞片手にビルが駆け寄ってきた。大慌てである。新聞をブンブン振っている。
「大変です、プリンス教授!!」
「落ち着きたまえ、ミスター・ビル・ウィーズリー」
とは言いつつも新聞を広げられるように吾輩はテーブルから料理をのけた。ビルによって広げられた日刊預言者新聞一面記事に吾輩は呻いた。一面記事はシリウスが予言を保管している魔法省神秘部で大立ち回りをやらかした、とのことだ。顔が引きつるのが自分でも分かる。
「何をやっとるんだ、馬鹿犬」
「まだ何も分かっていないようです。つまり目的が何かとか不明らしいです。しかし、これが不死鳥の騎士団の活動となると・・・」
ビルは声を潜める。不死鳥の騎士団のトップは校長、これがシリウスの単独暴走でなくば校長の指示ということになる。シリウスの勝手な暴走の気もするが、よしんば真実がそうでも魔法省のアンチ・ダンブルドア派閥が校長指示として責任を追及するだろう。不死鳥の騎士団としてシリウスを制御しろ!!なのだろうが、シリウスを制御できる者がいるのか甚だ疑問だ。
吾輩思うに、校長も手を焼いているとみた。
「セブルス、ちょっと良いですか?」とフリットウィック教授。
ビルと吾輩は一瞬、目を合わせてからフリットウィック教授の傍へ寄る。ビルが一緒でも構わないらしい。ちなみに生徒たちもこのビックニュースで朝食どころではなく、大騒ぎでこちらに注意を向けていない。マイペースに朝食に夢中なのもいるが育ち盛りなのだ、仕方あるまい。
「ミネルバは魔法省へ向かっています」
「はぁ」
シリウスがグリフィンドールOBだからか。気の毒に、と思っていたが、マクゴナガル教授は現役グリフィンドール生を迎えに行っているらしい。
「ハリーとロンとハーマイオニーを迎えに」
「ロン・・・」
思わずといった風にビルが呻いた。
「何でまた彼らが学校を抜け出して魔法省へ?」
「それは分かりませんが」
ちらりとフリットウィック教授は日刊預言者新聞に視線を向けた。憎々し気に。それは新聞に対してか、シリウスに対してか。
「この件と関係はあるでしょう」
そうでしょうとも、と心中のみで同意する。
結局、この事件の真相は明かされることなく、ホグワーツ内ではハリー達が怒りまくったマクゴナガル教授に減点と罰則を喰らっていた。無理もない。
この件で少しでも良かったのは、不死鳥の騎士団のイメージが下落しまくっておそらくは入団者が減ったことだろう。シリウスが入団していることも周知されて、やばい団体という認識が広まったのだ。もっとも、シリウスや騎士団の連中は妙にポジティブに考え、逆境の中でもとか、周囲は理解がないとか言い出しそうだけれど。
魔法省が不死鳥の騎士団をテロ団体と認定するのもそう遠くはないのではなかろうか。
そんなこんなで5年目が終わった。わりに大人しい年だったかもしれない。
2022/7/22
一部打ち間違いを修正。(シリウスや騎士団んお連中→シリウスや騎士団の連中)
フリントウイック教授をフリットウイック教授に変更。
ご指摘ありがとうございます。名前は間違って覚えていると、間違っている認識が薄くてなかなか気づきませんようで。