セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる6-1
とうとう吾輩がホグワーツ教職員になって6年目。
時が経つのは本当に早いものである。そして、とうとう、原作知識のない年に突入してしまった・・・が、原作破壊しまくったので原作知識あっても役に立つかどうか分からない感じになっていると思う。
去年のシリウス神秘部乱入の件、連日のように日刊預言者新聞が続報を出していて何となく背景というか目的が見えてきた。神秘部の予言(しかもハリーとあの人がらみの予言)を奪うだか破壊だかするつもりだったらしい。それ、意味のある行為なのだろうか?ともかくシリウスは魔法省に捕まって、これから延々と裁判が続くらしい。いい加減にシリウスの暴走に手を焼いていた連中が、裁判を引き延ばしてシリウスの行動に制限をかけようとしている、とか。裏で動いているのはポッター分家という噂である。シリウスを野放しにするとハリーにちょっかいをかけられる、ハリーはポッター本家の血筋なのでせめてポッター本家もしくは分家の当主を継ぐまでは、と思っているようだ。
あそこもジェームズ・ポッターの教育に失敗しているので表立ってハリーの保護に回れないが、裏ではダーズリー家に養育費を支払ったり(その代理人を吾輩に押し付けてきたが)、名前だけの名付け親シリウスより余程、保護者をやっているのだ。ポッター分家の皆さんの複雑な心境は分からないでもないが、そろそろハリー本人に会ってやれば、と思う。今更だけど、シリウスが冤罪でアズカバンにぶち込まれたのを最も喜んでいたのはポッター分家だったりして。色々と思い至ると名門のやり方がえげつないと思ったり思わなかったり。
ところで、今年度からホラス・スラグホーンがホグワーツ教職員に復帰した。高学年の魔法薬学を教えるとか。教授職の負担を減らしてでもホグワーツに必要とされているらしい。らしいのだが、推薦者が理事会と魔法省、スラグホーンはコネと人脈が他の追随を許さないので、ダンブルドア校長の近年のやらかしまくりからして、次期校長候補なのだな、と吾輩でも悟る。
副校長マクゴナガル教授はダンブルドアの影響力が大きすぎるので理事会は懸念を示している。また、グリフィンドール出身が続けて校長になることも問題視されているらしい。吾輩もバランスという意味でマクゴナガル教授はない、と思う。
それ以上に、問題の件。闇に対する防衛術の教授が決まらないのだ。名簿の呪いはビル・ウィーズリーがきっちり解いた。呪いをかけた本人の分身であるトムの手助けなしにビルは解呪に成功したのだから、大したものである。ビル本人も手ごたえのある解呪でこの仕事を成功させたと自信が付きました、と言っていた。そういう意味でとても良い結果に落ち着いたと思う。しかし、名簿の呪いが周知されてしまって教授を公募しても応募者ゼロなのだ。
「解呪済みなのに、どいつもこいつも根性なしが!!」
とはいえ、理事会は理事会で校長推薦者は絶対拒絶の姿勢である。毎年のトラブルの原因遠因が防衛術の教授なので無理もあるまい。去年の魔法省推薦アンブリッジは問題を起こす前に夜逃げしたので、迷惑はそんなにかけられていない為、校長推薦より遥にマシと思われている。結局、理事会は闇祓いを派遣して欲しいと魔法省に掛け合って―――闇祓い見習いニンファドーラが派遣された。
吾輩の私室で、吾輩とニンファドーラは年間計画書を作成する。実技はニンファドーラ、座学は吾輩。ここ毎年のことで嫌なのに慣れてしまっている。吾輩は年間計画書を指し示す。
「という形で今年は進めていこうと思う。名簿の呪いもないし、頼むから今年度いっぱい、勤め上げてくれ」
「余程苦労しているのですね。私も頑張らせて頂きます。また、ここまできっちり年間計画書を作ってもらって有難いです。セブルスおじ様」
「・・・・・・いつから吾輩は貴女のおじになったのかね?」
「私の母アンドロメダはブラックの分家で、ナルシッサおば様の実姉ですよ。ドラコがおじ上呼びならば、私もおじ様呼びで当然でしょう」
「つまり一応は親戚ということか」
「一応って、随分素っ気ないじゃないですか。ドラコは可愛がっているのに~」
「言っておくが、世間をお騒がせしている馬鹿犬も親戚だぞ。血筋で言ったら、より近いおじだ」
「血って厄介ですね」
「全くだ。メリーアン、茶と菓子を頼む」
「承りました、セブルス様」
傍に控えていたハウスエルフのメリーアンがてきぱきとお茶の用意をすませる。吾輩は広げていた年間計画書を片づけた。それから、茶を淹れる。ニンファドーラが紅茶を一口。
「あら、良い香り」
「気に入ってもらえて何よりだ。ところで、あの馬鹿犬の件、魔法省はどう見ているのだ?」
「日刊預言者新聞は読まれていますよね?」
「吾輩に言わせると日刊預言者新聞はゴシップ紙だ。全てを信じるのは難しい」
「なるほど、納得です。とはいえ、今回は日刊預言者新聞は真実を報道しています。シリウスが目的はともかく、神秘部に侵入し予言を盗もうとしたことは間違いありません。そのわりに罪科が低いのはシリウスが元ブラックだからではなく、冤罪でアズカバンに放り込んだという弱みからです」
「強硬姿勢を魔法省が取れないのは、高度な政治的判断という訳か」
「凄い言い訳っぽいですけれどね。裁判の方が遅々として進まないのは皆の関心が薄れるのを狙っているのかと、それと―――」
ちらりとニンファドーラはこちらを見る。なんだか言いにくそうだ。視線で促せば、ニンファドーラは言い辛そうに続ける。
「あの事件の前にシリウスがブラック本家に出向いたこと、知っていますか?」
「は!?あ奴はブラック家から絶縁されているだろ!?」
ホグワーツ卒業と共にシリウスはブラックから絶縁されてシリウス・グレイとなった筈だ。ホグワーツ在学中からブラック本宅に寄り付かなかったのに、今になって何でまた。
「ええ、ですからブラックの結界に阻まれたのですよ。それで、私の母に接触したのです。私は母経由でその話を聞いたのですけれど」
ニンファドーラの母アンドロメダはトンクスと結婚する際に少し揉めた。ブラック分家の娘が政略結婚をせず、血統に拘らぬ結婚をするのは本来ならば難しかっただろう。とはいえ、ブラック本家のレギュラスが精霊使いとはいえ半純血の吾輩の許嫁という前例があったので、アンドロメダとトンクスも駆け落ちまではいかなかった。ブラック家系にしては珍しい、新しい風を吹き込むと言った評価に落ち着いている。また、名家の出生率の低さから優秀な新しい血を積極的に取り入れるべきという風潮も一部にはある。どちらかというと、こちらの理由の方が受け入れやすかったようだ。どの名家も血を繋ぐことは最優先事項なのだから。
それはともかく、ブラック家に反発しがちなシリウスが相談相手に選んだのがアンドロメダという訳だ。勝手に一方的なシンパシーを感じたのかもしれない。アンドロメダにしてみれば、シリウスにいっしょくたにされるのは全力拒否ではないだろうか?それはともかく、シリウスがわざわざブラック家を訪ねるとは。
「つまりブラック家に復帰したいと?手切れ金を貰ったのに?」
「呆れますよねー。シリウス本人にしたら、アズカバンの件は冤罪で大手を振って表を歩ける。ブラック家に次期当主はいないし、自分は直系だ、と」
「身勝手すぎやしないか?ホグワーツ卒業同時の絶縁だぞ。冤罪の件とは全く関係ないだろうが。大体、ブラック分家が黙っていないだろう」
「ええ、母様も呆れかえって、正論でぶん殴ったそうです。でも、ほら、あの人、基本、人の話を聞かないでしょ?」
確かに。人の話を聞くスキルがあったら、あそこまで暴走しない。しかし、学生の頃はあれほどブラック家を毛嫌いしていた癖に今更、家を継ぎたいとは?
「どうもシリウスの行動に一貫性がない。あいつの考えじゃない気がするな」
「というと、不死鳥の騎士団ですか?」
「あそこの評価は地に落ちているから、ここでイギリス魔法界の王ブラックが後ろ盾につけば話も変わるだろう。そこまでいかなくても、資金源は得られる」
「流石にオリオン様が撥ねつけますよね?」
「結界に拒まれた時点でオリオン様の意志は示されている。フン、アンドロメダ様にとりなしをしてもらおうとして失敗したというところか」
「本当に碌でもないですね」
やれやれとニンファドーラが頭を振った。吾輩は紅茶に口を付ける。
「駄犬は無視でよかろう。関わるとこちらが馬鹿を見る。そうではないかね?」
「そうですね」
「それに奴は向こう3年いや2年か。ホグワーツに立ち入り禁止だ。つくづく有難いことにな」
「ホグワーツに?」
「ハリー・ポッターに近づけぬように、だろう」
「ああ、なるほど」
心の底からニンファドーラは納得した。
「あ奴はジェームズ・ポッターを魂の兄弟とほざいていたそうだから。その感情が横滑りしてハリー・ポッターに執着しているのだ。全くハリー・ポッターにとっては気の毒にな」
「それはそれは同情を禁じ得ませんね」
せめてホグワーツに在学中くらいはハリーがシリウスに振り回されないように願うしかない。去年、神秘部の件でハリー達が学校を抜け出したことを思い出し―――願うだけ無駄かもしれない、と吾輩は溜息を零したのだった。