セブルスに成り代わって平穏に生きてみる 作:dahlia_y2001
セブルスに成り代わって平穏に生きてみる6-3
第一報を聞いて吾輩とニンファドーラはスラグホーンの部屋に駆け付けたら、既にマダム・ポンフリーとマクゴナガル教授がいた。とはいえ、被害者がロン・ウィーズリーなので寮監であるマクゴナガル教授が呼ばれるのは当然か。マダム・ポンフリーはソファーに寝かされているロンにせっせと手当をしていた。
ところで、第一報とはロン毒殺未遂事件である。スラグホーンはセイウチひげを震わせて事情を説明した。ハリー、ロン、そしてスラグホーンで景気づけに蜂蜜酒で乾杯をしようとした。(なぜ景気づけが必要だったのか気にはなったけれど事件に直接関係なさそうなので聞くことは控えた)そこで、なぜかロン一人が一気飲みして、結果、ロンのみが被害に遭ってしまったとか。(乾杯なのに何でロンだけが被害者となった理由は判明したが、なぜ一人早く一気飲みしたのかは疑問だ)毒に中てられたロンにハリーが応急処置としてベゾアール石を飲ませた。(素晴らしい対応だ。ところでスラグホーンは何をしていた?)それから、校医マダム・ポンフリーの手当をロンが受けている。←今、ここ。
「つまり、この蜂蜜酒に毒が仕込まれていた、と。ニンファドーラ、この証拠物件を魔法省へ提出。毒の種類判別と捜査依頼しろ」
「はい」
てきぱきとニンファドーラは蜂蜜酒のボトル、グラスらに保存魔法をかける。
「魔法省の捜査ですって!?」
マクゴナガル教授が非難めいた声を上げた。
「生徒の毒殺未遂事件が起きたのです。我々ホグワーツ教職員に再発防止し、犯人を捕まえる能力があるとでも?何より生徒の安全を守ることこそ教師の勤めでしょう」
きっぱりと吾輩は言い切った。
理事会が防衛術の教授に闇祓いを入れたのは、何かホグワーツで事件発生した場合の連絡係とする為だろう。保険のつもりでの防衛術人事がいきなり活用されるとは。また、時期も良かった。絶対に反対しそうな校長がシリウス主体神秘部侵入の件で魔法省や裁判所に呼び出されて、あの一件以降ずっと不在なのだ。魔法省も裁判所も結託して延々と校長を引き留めてホグワーツからの引き離しを図っているのではなかろうか。吾輩はスラグホーンへ心持ち優しく尋ねる。彼はすっかりこの事態に困惑していたからだ。
「ところで、その蜂蜜酒の入手方法と保管状況についてお聞きしたいのですが」
「そ、それはダイアゴン横丁の酒屋で買ったものだ。保管はずっとそこの棚に、もともとダンブルドア校長へプレゼントしようとしていた品でーーー」
「アルバスに!?ということは本来のターゲットはアルバス!?」
絶句するマクゴナガル教授。
たかだか一生徒であるロン・ウィーズリーを狙ったというより、大戦の英雄でおそらくあっちこっちから恨まれている校長がターゲットだったという方が余程、理解出来る。
「悪運強すぎないか、校長」
「セブルスおじ様、悪運って褒め言葉じゃないですから」
「もとより悪口のつもりだ」
「セブルス!!」
流石にマクゴナガル教授がたしなめた。
「私が思うよりギスギスしているのですね、ホグワーツ教授陣」
「そんなことはありませんよ、ニンファドーラ。セブルスも誤解を招かないようになさい」
やんわりとマダム・ポンフリーが吾輩に言葉をかけるので、吾輩も軽く肩をすくめた。
「そうだ。ワシの供述には真実薬を飲んでも構わん!!」
スラグホーンが校長毒殺犯人にされてはかなわないと、とんでもないことを言い出した。関係者自身が自白剤片手に供述すると言い出すとは。魔法界ってどうなっているのだ!?捨て身すぎやしないか?
「いやいや、魔法省も闇祓いもそんなことを強いたりはしません。事情聴取はあくまで関係者としてで、別に容疑者ではないのですから」
慌ててニンファドーラがスラグホーンを宥めた。
「吾輩は貴公が犯人とは思っていません。逆にこの事件をはっきりさせることで、貴公の疑いを晴らし、何より共に生徒を守りたいだけです」
「セブルス。ありがとう、セブルス」
庇ってもらった形のスラグホーンが吾輩の手を取って感謝を述べた。妙に感動しているスラグホーンに苦笑するしかない。
仮にスラグホーンが犯人ならば、いくらでもこの事件を回避できたのだ。まず、ハリー達との景気づけに例の蜂蜜酒を避けることは出来たし、そもそも乾杯したら自分が飲む羽目に陥ってしまう。スラグホーン犯人説は無理筋なのだ。
そうして魔法省から役人がホグワーツに入り調査が始まった。防犯の為、闇祓いも派遣され防衛術授業の助っ人にも入ることになり、例年にない実践的授業となったのでホグワーツ生には好評だった。(闇祓い側からは青田買いの意味合いもあったのだろう)
但し、ようやくホグワーツに戻れた校長にとっては、気に入らない事態だったのだろう、あからさまに不機嫌でそれを隠しもしなかった。しかし、校長が戻ってくる間に魔法省が介入を既成事実にしてしまっており、今更校長権限でどうにもできない事態となっている。
多分、これも見込んで魔法省と裁判所が校長を引き留めていたのかと、遅まきながら吾輩は気付かされたのだった。
蜂蜜酒に毒を入れた者は結局、分からなかった。動機からの調査では、校長に恨みを持つ者、危害を加える者の対象が多すぎて絞り込めない。手段からの調査ではホグワーツのみならず店、酒造所から調査が必要で手の付けようがない。また、ホグワーツ内では、生徒が犯人の可能性があり、毒殺が未遂だったこともあって、魔法省の役人も犯人逮捕というより自身たちがホグワーツにいることで犯行抑止力を狙っている。結果、毒殺未遂事件は迷宮入りとされた訳だ。
―――ということをニンファドーラから教えられた。
しかし、流石にスラグ・クラブ開催は許されなかった。スラグホーン自身もクラブメンバーも毒殺未遂事件があっては開催する気にも参加する気にもなれなかったのだ。スラグ・クラブは魔法省の役人、闇祓い派遣によってホグワーツが安定してから再度、開催されることになる。まさか、それに吾輩が招かれることになるとは思いもしなかったのだが。
魔法省でシリウスのやらかしやら、不死鳥の騎士団やらについて問いただされた校長がようやくホグワーツに戻った。しかし、校長が長期不在でも特に問題がないのだ、と吾輩は変な点で感心していたりする。
戻ってきた校長は早速、職員会議を開いた。そして、こっちの予想斜め上の提案をしてきたのだ。校長シンパのマクゴナガル教授も思わず聞き返した位である。
「ミスターポッターに個人授業を受けさせる為、ホグワーツから連れ出す、と?」
「そうじゃ、ミネルバ。これはハリーにとって大切なこと。来るべき日に備えるために」
個人授業は校外で実施するのか?来るべき日とは何?そもそも校長が一生徒を特別扱いすることに疑問しか感じないのだが。
「校長、吾輩が思うにポッターの出席日数はどうなりますかな?足りなければ単位取得が出来ず、留年ということになりますよね、当然」
そもそもホグワーツに留年制度があったのだろうか?全く記憶にないのだけれど。
「ホグワーツに留年制度はありませんから、この場合、休学という形でしょう」
ゴーストのビンズ教授が言った。彼がそう断言するのならば間違いない。ホグワーツには休学と退学しかないということか。なかなかに厳しいものがある。
「それはいくら何でも・・・・・・というか、特別に個人授業を行う必要性って何ですか?」
マグル学のバーベッジが聞く。それ、確かに気になる。校長は元変身学教授だったか?うろ覚えだけれど、わざわざ校外でやる必要あるのか分からん。
「それは言えぬ。だが必要なことじゃ」
あまりに説得力のない言葉に、一同に白けた空気が漂う。
スプラウト教授はきっぱり言う。
「生徒はホグワーツで学び、学友と競い協力し、友情を育む権利があります。勉強さえ出来れば良いというものではありません」
フリットウイック教授が顔をしかめた。
「学ぶ楽しさを教えるのは我々の喜びではありませんか?ポッターをそれから弾くのはいかがなものでしょうか?」
「夏季休暇に行うのはどうかな、アルバス?学業を犠牲にするのは問題じゃないか?」とスラグホーン。
マクゴナガル教授以外の寮監からの反対に校長はうろうろと視線を泳がせた。援護を頼むようにマクゴナガル教授を見るが、流石の校長シンパも出せる助け船はなさそうだ。
「あの子にはなさねばならぬことがある」
「ホグワーツでの学業ですな」
絶対に校長の意向とは違うと分かっていつつ吾輩は言い切っておく。
苦虫潰した顔の校長に―――いや、本当にこの人は何がしたいのだろう、と内心で首を傾げたのだった。
三日後。
校長はハリーを連れて失踪もとい個人授業を強行しやがった。教職員の同意なんぞ必要ない、と言わんばかりに。流石、スタンドプレー上等のグリフィンドールOBである。結果、マクゴナガル教授は各教授から非難を受け、針の筵状態だ。なぜなら、会議中に反対意見を述べなかったからではなく、校長の強行を止めず、あまつさえ事態発覚を隠そうとしたからだ。
「アルバスがどうしてもハリーには必要だと」
マクゴナガル教授の言い訳に理解を示す者は教授陣には一人もいなかった。それよりも、吾輩提案でハリーポッター休学回避の為の補講計画を皆で立て、一刻も早くハリーが戻ることを待ち望むことになる。
校長?知ったことか。