セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる1-3

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる1-3

 

 

 

ハーマイオニーが三階女子トイレにいる。

原作でロンの暴言に耐えられず、ハーマイオニーは三階女子トイレで一人泣いている折、トロールと遭遇してしまうのである。ハロウィーンパーティーの最中だよ、誰か慰めてやれよ、と吾輩は思う。特に同室の女子。今更、何を言っても仕方ないが。

 

「フィルチ、頼みがある」

「はい」

 

ホグワーツ城の校務員にして風精霊の使い手であるフィルチは吾輩が風精霊との仲介をしたせいか、大分、こちらに好意的である。そんなに恩を感じなくても良いのだが、せいぜい同じくホグワーツを守る同志と思ってもらいたいところだ。

 

「聞いての通り、精鋭部隊に今の情報を伝達。吾輩は三階女子トイレに向かう」

「はい」

 

フィルチは軽く左手を振った。白い風精霊―――子猫の見た目の白い虎がフィルチの左後方に現れて、甘えるようにフィルチの左足にすり寄った。

 

「頼むぞ、わしの風精霊」

 

風精霊は小さく頷き、一瞬でその姿はかき消えた。

吾輩は近場の長テーブルから水差しをひっつかみ、派手に床へとぶちまけた。床に大きな水たまりが出来る。

 

「水の精霊、応えろ」

 

吾輩の呼びかけに反応して水たまりは淡く光り輝く。この術はあまり使いたくない―――しかし、これが最も早く移動できる。一瞬、立ち止り、吾輩は勢いよく水たまりへと身を投じた。水たまりは三階女子トイレに繋がっている筈。

 

 

三階女子トイレ前か。吾輩はクラクラする頭を軽く振った。どうも空間移動は好きになれない。この術は、精霊の通り道と呼ばれるものだ。精霊の、と付くだけあって本来は人が通ることを前提としていない。そこを無理して通る訳で、この術を使うと体にどうしても負担がかかるのだ。今回のように緊急時は仕方なく使っている。

さて、まだ精鋭部隊はここに到着していない。先回りはできたようだ。

 

「ミス・グレンジャー。そこに居るか?」

 

吾輩は声を張り上げた。流石に中に入るのは憚られる。

 

「!?」

 

返答はないが人の気配はする。まず事情を説明しておこう。トロールを退治するまで、そこでじっとしてもらった方が助かるからだ。

「ミス・グレンジャー。今、ホグワーツ城内にトロールが入り込んでいる。生徒は大広間で待機。教授の一部がトロール退治に動いている」

「は・・・はい」

 

蚊の鳴くような声で返事が返ってきた。

 

「ミスタ・ポッターとミスタ・ウィーズリーの申し出により、ミス・グレンジャーが大広間にいないことが判明した。それにより、吾輩が救助に来た、ここまで良いか?」

「はい」

「救助部隊が来るまでミス・グレンジャーはここで待機のこと。吾輩はここで教授陣と合流する」

 

上手くいけば、トロールと遭遇前にマクゴナガル教授と合流できる筈だが、そうはいかないか。これも原作補正だろうか?

ムワッとした異臭が鼻についた。トロールがこちらに向かっているようである。しかし、なぜこちらに向かって来るのだろう?トロールが人の気配を感じてだろうか?

反射的に吾輩は袖を鼻で覆った。トロールの姿を認識して、さて、どうしたものか、と考える。クィレルに利用されているだけのトロールを殺すのはあんまりにも酷い気がする。そうなると、殺さないように行動不能にする必要があるのだが、適当な術が思いつかない。魔法使いならば相手を気絶させる呪文があるが、精霊使いにそんな便利な術はない。氷槍で頭を強打させ気絶させることは可能だが、やり過ぎて相手を殺してしまう可能性もあり、この辺りが精霊使いの使い勝手の悪さだろう。そうなれば、足止めに務めるか。

直にマクゴナガル教授が来るはずだ。吾輩が仕留める必要はない。サッと右手を振る。

 

キインッ!!

 

吾輩とトロールの間に分厚い氷壁を形成した。周囲の空気が冷えた。呼吸に気を付けないと肺が凍ってしまいそうだ。空気がキラキラと輝いている。おそらく大気中の水分が吾輩の力に引きずられて氷化しているのだ。見ている分には綺麗である。

トロールは氷壁に阻まれて、一瞬、考えて棍棒を振るった。

 

ギイィィィィンーーーバキッ

 

派手な音を立てて棍棒が折れた。吾輩がやったのに、その威力に我ながらドン引く。トロールって頭脳はアレだけれど力は凄いというか力に

極振りしている種族なのに、その全力でも歯が立たない氷壁を容易に作れるって。精霊使いは本当に物理ごり押し系で魔法使いとは一線を引いている。

そして、トロールの頭脳がアレなのは本当らしい。なぜか氷壁に再チャレンジしている。負けん気が強いのか、阿呆なのか、多分、阿呆なのだろう。何と戦っているのか吾輩には分からん。

そうこうしている内に、ようやくマクゴナガル教授たちが駆け付けた。

 

「セブルス!!」

「マクゴナガル教授、ミス・グレンジャーは保護済みです。トロールをお願いします」

「片づけます」

 

フリットウィック教授がスッと杖を振るった。即、トロールが失神呪文で倒れた。流石、ホグワーツの教授、見事である。こういうのを見ると、魔法使いが羨ましくなる。決して、精霊使いである今が嫌なのではなく、便利だなという意味で。

これで一件落着だ。とりあえず、氷壁を消した。

マクゴナガル教授にミス・グレンジャーの事情を説明し、迎えに行ってもらう。そのまま、マクゴナガル教授が付き添ってミス・グレンジャーは保健室へ行った。

 

 

 

後日、保健室にハリーとロンが入院していたミス・グレンジャーを見舞いに行き仲良くなったらしい。詳しくは知らんが、友情は良いことだろう。吾輩の立ち位置からハリーとは接触しない方が良いので情報は入手しがたい。そっとしておこう。

 

これにて、ハロウィーン事件は解決。なかなか穏便に済ませられたのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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