セブルスに成り代わって平穏に生きてみる   作:dahlia_y2001

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セブルスに成り代わって平穏に生きてみる7-2

 

 

 

セブルスに成り代わって平穏に生きてみる7-2

 

 

 

深い深い眠りに落ちている為か、ひどく遠方から吾輩を呼ぶ声が聞こえる。それが徐々に大きくなっている。起きたくないなー、無視したいな―と思いつつ、しぶしぶ吾輩はのそりと身体を起こした。自室のベットで眠っていた吾輩を叩き起こしたのは。

 

「セブルス様」

 

いかにもホッとした様子でハウスエルフのメリーアンがベッドの傍にいた。先ほどから声をかけ続けていたのはメリーアンだったのだろう。半ば習慣で目覚まし時計を見る。その時刻は夜中の一時。何でこんな時間に起こす?わざわざ聞くのも馬鹿馬鹿しくて視線だけで吾輩はメリーアンに問う。

恭しくメリーアンは頭を下げた。

 

「セブルス様にホグワーツ生のお客様です。どうしても今すぐにお会いしたいとのことです」

 

こんな時刻に訪ねてくる非常識人に着替えをする程の気遣いは持ち合わせず、吾輩はガウンを引っ掛ける。髪の方はメリーアンが魔法で手早くとかして漆黒の組紐で一つに結んだ。

寝起きのせいかいまいち頭が回らないと思いつつ、続きの間である客間に入ったらパッとソファーに座っていた生徒が立ち上がった。出合い頭に皮肉の一つでも言ってやろうと思っていたが、吾輩は口を閉ざした。

直立不動で立つその生徒―――ハリー・ポッターがは半泣きで吾輩を見上げる。2,3度口を開き、ようようにハリーは言葉を紡いだ。

 

「スネイプ先生・・・死んでいませんよね?生きていますよね?」

 

これは面倒な事態になったのかもしれない。

 

 

 

 

 

再度、ハリーをソファーに座らせ、メリーアンに用意させたホットミルクを勧めておく。ひとまず、身体が温まるからと説得してハリーにホットミルクを飲ませて―――時間を稼いでいるところだ。なぜなら、今、メリーアンを使い走らせて急ぎ校医マダム・ポンフリーを呼んでいるからだ。吾輩はこっそりとハリーを観察してみた。

ハリーは憔悴しきっている。

吾輩が死んだと思い込んだから?それだけではないだろう。つい先日、聖マンゴに入院していた校長が亡くなったのも多少なりと影響しているかもしれない。但し、校長死亡と吾輩の不幸がなぜ連動するのかは不明だが。連動、連動か。校長死亡が原作に沿っているならば、吾輩が殺されるのも原作に従っている。だから、ハリーは今のホグワーツで知る者がいないと思われる吾輩の旧姓・スネイプで吾輩を呼んだというのか?

部屋をノックする音に、吾輩は物思いから意識を現実に戻した。

 

「どうぞ」

 

マダム・ポンフリーが入室し、ハリーを見て目を丸くした。ハリーがどういう経緯でここに居るのかはメリーアンからマダム・ポンフリーに説明済ではあったのだけれど、ハリーの打ちひしがれた様子までは伝えきれなかったらしい。

吾輩は手でマダム・ポンフリーにソファーを勧めた。マダム・ポンフリーはハリーの隣に座った。

さて、どうしたものか。吾輩、子供の心により添ったり、心を癒したり労わったりとか出来る性質ではないのだ。マダム・ポンフリーに『頼む』という視線を向けると、マダム・ポンフリーは心強く頷いた。適材適所というものだ。

 

「ミスター・ポッター、どうしましたか?」

 

マダム・ポンフリーが優しく尋ねた。少しばかり、医者が患者に聞いている風でもあった。吾輩は半ば部外者といった感じでメリーアンに用意させたホットレモネードを飲む。アルコールの入ったものが呑みたいな、と頭の隅で思った。

ちらちらとハリーは吾輩を見ている。その視線は気にしないでおく。この場はマダム・ポンフリーに任せるつもりだから。

 

「実は、その。夢を見まして」

「夢ですか?」

 

マダム・ポンフリーが穏やかに促す。決して、ハリーの発言を否定したりはしなかった。しかし、ハリー自身は自信がないらしい。

 

「つまらないことを言いだしてすみません。僕、僕は」

 

マダム・ポンフリーはスッと杖を動かした。何か心を穏やかにさせる魔法でも使ったのだろう。

ハリーは深呼吸し、少し落ち着いたようだ。

 

「ミスター・ポッター、心配せずに話して下さい。私たちがあなたを助けてあげられると思います」

 

ハリーは不安げに吾輩を見る。仕方ないので吾輩は、ハリーの背を押すことにした。

 

「吾輩の安否を確かめずにいられなかったのであろう?不吉な夢であるのは想像がつく。ミスター・ポッターの情報で吾輩が警告を得られれば、夢を否定することが出来るのではないかね?」

 

夢を否定しなかったことがハリーを納得させたのだろう、ぽつりぽつりとハリーは口を開いた。その内容は、吾輩が大蛇に口を噛まれて殺されるというものであった。これだけの内容を説明するのにハリーはたっぷり30分も費やしたが、結局のところ、それ以上の情報は得られなかった。

その後、マダム・ポンフリーに付き添われてハリーは保健室へ行き、ようやく吾輩は真夜中の訪問者を追い返せた。

安堵の溜息を吐き、吾輩は乱雑にガウンを脱いだ。ハウスエルフのメリーアンが丁寧にガウンを手に取り、綺麗に畳んだ。そして不安そうにメリーアンは吾輩を見上げる。

 

「セブルス様」

「何かね?」

「魔法使いの夢は全く根拠がないわけではございません」

 

メリーアンの心配は分からないでもない。悪夢を見たからといって、わざわざ夜中に相手を叩き起こし、生死を確認する等―――普通ではない。つまり、その夢がただの夢ではないと、ハリー本人が確信を持っているということだ。

吾輩も原作知識から、ハリーが見た夢がただの夢とは考えていない。なぜなら、その夢は原作セブルスの死にざまそのものだからだ。とはいえ。

 

「夢の内容はメリーアンも聞いていただろう。寒冷地のイギリスに大蛇は生息できん」

 

原作では、あの人の分霊箱のひとつナギニに殺されたのだったか。ただ、原作が壊れまくったこの世界において、ナギニが存在しているのか、分霊箱であるのかも分からない。ちなみにトムが統合した分霊箱にナギニは含まれていないそうだ。(分霊箱の回収は吾輩の管轄外なのでよく知らない。分霊箱は回収するより、元の場所に戻す方が大変だったとか)

大蛇がナギニでないとしたら、あとはバジリスクくらいしか思い至らない。しかし、バジリスクは秘密の部屋事件未遂で知り合いになったが、大変温厚な性格なので、吾輩がバジリスクに殺されるイメージは湧かなかった。やはり、吾輩を殺す大蛇は存在しないように思う。

吾輩はメリーアンを安心させるように言った。

 

「吾輩を殺せる存在など、そうそうに居ない。安心したまえ」

 

 

 

あれから三日ほど、ハリーはマダム・ポンフリーの下で入院していたとか。不眠を訴えていたそうだ。原作セブルスの最後を夢で見たのならば、ハリーが不眠に陥るのも当然のように思う。どちらにせよ、ハリーのことはマダム・ポンフリーに任せるしかない。

世間では、校長の葬儀が国葬で行われるか、校葬で行われるかで揉めている。大戦の英雄なので国葬にすべきではという意見がある。ホグワーツ理事会もその意見を支持していたが、実はアンチダンブルドア派閥が校葬にしたくなくて国葬にし、魔法省へ押しつけたがっているのだ。魔法省のアンチダンブルドア派閥は国葬にしたくないばっかりに、国葬より影響力の低い校葬とし、理事会に押し付けたがっている。

校長は大戦の英雄ではあるが、ホグワーツで何の実績を上げたのか?と聞かれると、これが目立った実績がない。それどころか、近年はホグワーツにて問題が多発し、その解決に校長が尽力したとはとても言えない状況である。

そういう訳で日刊預言者新聞は、そして魔法界は喧喧囂囂と校長の葬儀をどうするかで揉めている。今のところ決着がつきそうにない。もちろん、ホグワーツ内でも教職員内でも互いに意見を出し合っていた。吾輩は校長に対する思い入れがないので、国葬でも校葬でもどちらでも構わない。ただ、葬式にすら政治色が入るとは有名人も大変なものだ、と思うだけである。

ちなみにグリフィンドール中心の校長シンパも校葬と国葬に分かれている。英雄なので箔のつく国葬を推す人間も多いようだ。そういう訳で意見はまとまりそうもないのだった。

 

 

 

 

そして、結局。

校長は校葬となった。これも原作通りなのである。

 

 

 

 

 

 

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